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同じ匂いが靡いて、同じ匂いを纏って。
彼が使っていた柔軟剤の匂い。
その匂いがわたしはずっとずっと忘れられない。
洗濯してくれるたびに、服を貸してくれるたびに
彼の匂いがするのが好きだった。
「同じ匂いになるのっていいよね、幸せ」
同じシャンプーで頭を洗う度に、
2人が同じ匂いを纏う度に彼は言う。
別れてから彼と同じ匂いのする人を
街中で見つける事が多々あった。
一緒にいた頃はなかったのに、別れてから
すれ違う人、お店のお客さん、歯医者さん、
鮮明に覚えているほどに。
その度にふっと思い出して好きだったなと思う。
何度も同じ柔軟剤を買おうと試みたが
実際のところ何を使っていたかよく覚えておらず
「確かこのどっちか、、」と頭を悩ませいた。
近くのドラッグストアに片方はテスターがあったので匂いを嗅いだが違った。
もう片方はテスターがどこにもなく、どこかで見つけてそうだったら買おう、そう決めてきた。
その後、ドンキに買い物に行った時に
その柔軟剤が詰め替えセットで安売りしていた。
(ボトルで1000円近くする高いやつだったので)
わたしは勢いで買って帰って匂いを嗅いだが違った。
もうわからなくなってしまったのだ。
それからはあまり同じ匂いの人を見つける事が
ほとんどなく、そういえば最近見つけてないなと、もはや忘れてすらいた。
買ったら鼻が慣れてわからなくなるから
たまに香るくらいがちょうどいい。
そう思っていた。
こないだ実家に帰ってドラッグストアに買い物に行った時、柔軟剤のテスターがたくさん置いてあって、ずっと探していてモヤモヤしていたこともあり、ここなら見つけられるのでは?と考え、、
(今考えると変な人すぎて笑える)
これかなって思うのを片っ端から嗅いで。
「見つけた」
思わず声が出た。
彼の匂いを見つけた。
3ヶ月、ずっと探していたものを。
でも買うのは、と躊躇って東京に戻り
今の柔軟剤が終わったら買ってもいいかな
なんて考えて。
でもあの楽しかった日々が少しだけ恋しくて
少しだけ彼に会いたくなって、
2人で居酒屋一緒に行って
「お姉さん今日は何飲みますか?」
またそう言って欲しいなんて思ったりして。
でも、会いたいよりも「楽しかったな」
そう思うだけで今は十分なの。
たまに思い出すくらいいいでしょう?
仕事終わりに柔軟剤、買って帰ったよ。
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