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LPIXELの過去・現在・未来:現在編

こんにちは、LPIXELファウンダーの島原です。
前回に引き続き、LPIXELの「過去・現在・未来」の「現在」についてお話させていただきます。


LPIXELの今

医療AIへの挑戦

2015年、AI研究の第一人者である東京大学の松尾豊先生が執筆した書籍「人工知能は人間を超えるのか」がベストセラーになるなど、日本でもいわゆる第三次AIブームが訪れました。これまで、我々も画像解析技術と総称して活用してきた機械学習技術も、代わりに「AI」という言葉が使われるようになり、LPIXELが「AIの会社」として、タグづけされるようになりました。それ以前は、機械学習といっても一般の方や研究者に理解されなかったことが多かったですが、社会全体のAIに対するリテラシーが上がり、我々の事業がより理解され、評価されるようになりました。それは医療領域も例外ではありませんでした。

母体となった研究室は2007年からJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の事業における「創造的な生物・情報知識融合型の研究開発」の開発課題において、汎用性と精度を兼ね備えた半教師付き学習アルゴリズムを考案し、国際特許を含む複数の特許を出願してきました。その後もJSTの事業は形式を変えながら継続し、2010年から「生物画像のオーダーメイド分類ソフトウェアの開発」プロジェクトとして国立がん研究センター、東京理科大学との共同研究により、医療分野への応用についても研究開発を進めてきました。

創業した2014年当時、そのプロジェクトは終了しており、これらの技術はまだ社会実装されていませんでしたが、いつかは臨床でも活用できるように実用化したいという想いがありました。その想いが顕在化したのは「始動 Next Innovator 2015(経済産業省)」という起業家支援プロジェクトを通じてでした。そこでは「医療画像診断支援AI」の事業計画プランを提案し、ブラッシュアップしていきました。最終的にはシリコンバレーに2週間ほど派遣していただき、ベンチャー企業とはどういうものか、破壊的イノベーションはどういうものかというスキルとマインドを学ぶことができました。その結果として、2016年に初めて9億円の資金調達を実施し、医療AI分野への挑戦を決断し、邁進していくことになりました。そこから、さまざまな過程を経て、2019年日本では初めて深層学習を活用したプログラム医療機器として承認を取得したと言われています。そこから4年ほどを経て、脳・胸部・大腸の画像を対象とした製品、約400施設に導入実績がある製品となりました。

創業事業である創薬AI


ライフサイエンス領域における画像解析事業は創業時からの生業です。これまでも、さまざまなライフサイエンス領域における研究者の問題を解決してきました。しかし、「ライフサイエンス領域における画像解析事業」で認知を拡大し、事業を成長させていくことに限界を感じていました。そこで、2017年にIMACEL(イマセル)というクラウドで簡便に細胞画像解析ができる自社製品の販売を開始して認知拡大を図ることとしました。

研究者の多様なニーズを全て解決するパッケージソフトウェアを提供することは非常に困難ですが、まずは解析ニーズが高い細胞分類、細胞の計測機能をパッケージ化し、簡単に使えるUI/UXとともに提供することとしました。その上で、オーダーメイドのソフトウェアが必要になった時に開発し、多様なニーズに応えることができればと考えていました。しかし残念ながらパッケージ化した初期のIMACELは思ったように使われませんでした。一方で、幸いにも医療AI事業により会社の認知度は拡大しており、ライフサイエンス領域における画像解析事業も着実に成長していきました。その過程で、当事業のブランディングを見直して生まれたのが「創薬を加速させるAI、IMACEL」です。

創業時から顧客としては製薬企業が多く、さらに製薬企業が抱える問題解決に注力していこうということで、創薬AIのブランディングを強化するに至りました。また、私たちが単なるAIソリューションを提供するエンジニアの集団ではなく、AI技術に加えてライフサイエンス・医療のバックグラウンドを兼ね備えた研究者の集団であり、ディープなディスカッションが出来ることも、多くの製薬企業様から支持されることに繋がりました。その結果、2022年には第一三共株式会社と包括提携契約を締結するまでに至りました。

第一三共株式会社のプレスリリース
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/pressrelease/pdf/202207/20220720_J2.pdf

私たちは製薬会社の方々と、サイエンティフィックな議論を中心として何でも話せる関係を構築し、共に問題を発見し、問題解決していくことを目指しています。例えば、仕様書を書いてからソフトウェアを開発するのは手間ですし、そもそも問題に気づけていないことも多いです。そのため、勉強会や研究会を通じて全体のリテラシーの向上を図った上でオープンな議論を通じて問題発見し、仮説を持ってとりあえず解析してみたり、あるいはアジャイルにアルゴリズムを開発して仮説の確度を見極めた上で、合意形成をしながら開発を進めています。このようなオープンな関係性を持った上でチームとなって寄り添うことは、最も無駄なく効果的に進める手法であると考えています。

また最近では、製薬企業が医薬品(創薬)に留まらない、診断から治療までをトータルでカバーする流れが来ており、そのビジネスやソリューションは"Beyond the Pill"や"Around the Pill"と呼ばれています。特にデジタルを用いたソリューションとしては、AI技術を用いた診断補助用プログラム医療機器や治療用アプリなどを、スタートアップなどと手を組みながら製薬企業が開発を進めています。これらのニーズに対しては、LPIXELの医療AIの技術や知見を活かせており、医療AI事業との合流が起きています。今後もこの合流が進み、近いうちにLPIXELの医療AIと創薬AIを融合した新たな枕詞が生まれるのではないかと期待しています。

文:島原 佑基 

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