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腸 beautiful, it's true

ブタの小腸内壁の写真です。

理科の授業で、ブタの腸間膜にハサミを入れ、小腸を引き伸ばし、みんなで持って長さを測ると18mありました。

さらに、その内壁を実体顕微鏡で観察すると、美しい黄金の絨毯が広がっていました。高さ約1mmのたくさんの腸絨毛(柔毛)です。

以下、小腸内壁の観察の授業例と覚書です。

授業「小腸内壁の観察」

▼ 学年・単元
中学2年・生命を維持するはたらき 

目的
小腸内壁の構造を観察し、そのはたらきについて考える。

事前の準備
・ブタの小腸を筒状のまま3cm程の長さに切り、流水で洗う。
・Google Driveに写真提出用フォルダを作成し、Google Classroomにリンクして投稿。

準備
ブタ小腸、シャーレ、ピンセット、実体顕微鏡(黒のステージ板)、写真を撮影できるもの

▼方法
1.小腸を3cm程の長さに切り、筒状のまま内側をよく水洗いし、裏返す。
2.小腸が水に浸るようにシャーレに入れ、実体顕微鏡で観察する。
3.小腸の内壁の特徴がよくわかる写真を撮影する。

▼結果と考察
結果
・写真提出
・観察結果を文章で説明

考察
・小腸内壁の構造は、小腸がはたらくのにどのように都合が良いだろう?

写真1 反転した小腸を肉眼で見たようす。肉眼でも内壁に数多く突出した腸絨毛がよく見える。


写真2
腸絨毛を実体顕微鏡で見たようす。きれいな水または生理食塩水に浸す。背景を黒色にし、際の部分にピントを合わせると美しい写真が撮れる。



覚書  

▼ 授業のこと

構造を観察し、その機能について考えるのに適した良い教材である。マルチョウとして入手しやすいウシの小腸でも、同様の手順で腸絨毛を観察できた。

柔毛のことや呪文のような「表面積を大きくして吸収の効率を上げる」ことはすでに多くの生徒は知っているが、実物を見るのは初めて。

試料の扱いや顕微鏡操作はあまり難しくないため、ペアワークであれこれ対話しながら進めるのが良い。

「美しい写真の提出を楽しみにしている」旨を伝えると、写真の構図や光の具合などの創意工夫がはじまる。

提出先を共有フォルダにすると、他者の提出した多様な写真がリアルタイムにアップされ、効果的である。

高校生物の「小腸上皮細胞におけるグルコースの輸送」で、マクロとミクロの視点を行ったり来たりしながら学ぶのに役立つのではないか。

▼ 小腸のこと

小腸は吸収面積の拡大のために単に長くなるだけでなく,構造的に様々な工夫がなされている.肉眼的には小腸の近位部の粘膜面に輪状ヒダが発達し,その表面には長さ約1mmで指状から舌状の腸絨毛が密生し,ビロード状の外観を呈する.腸絨毛の長さや形状は腸の部位や動物種で変化し,肉食動物では細長く,ウシでは短く太い.全般に小腸の近位部で長く遠位部で短い.これら腸絨毛は単層円柱上皮でおおわれており,上皮の表面には光学顕微鏡的には線状縁と呼ばれる強い屈折性を示す構造物が観察される.これは電子顕微鏡的には長さ約1〜1.5μmで直径約0.1μmの微絨毛の集合物である.1個の吸収上皮細胞に約1,000本の微絨毛が密生しているといわれている.

『獣医組織学』日本獣医解剖学会 より引用

気の遠くなる絨毛、微絨毛の繰り返しである。小腸そのものの長さに加え、輪状ヒダ>腸絨毛>微絨毛というスケールの異なる3つの構造により、小腸内壁の表面積を劇的に増大させ「ヒトの小腸はテニスコートの広さ」を実現させている。

参考資料


『獣医組織学 [第5版]』学窓社 日本獣医解剖学会

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