スキとフォローとコメントと
──酎愛零がSNSにおけるリアクションについて考える話──
※このお話にはSNSにおける一般的な集客ノウハウとはそぐわない、または真逆の考えのもとに展開されているであろう箇所が出てきます。特に「フォロバ100」系の人とは相容れない話になると思いますので、ご了承の上、お読みください。
どうも、ついにノンアルコールビールを飲み始めた私です。
縁あって、SNSにおける反応について、かなりネガティブな思考に陥っている方の記事を読みましたので、私もこれを機に「記事に対するリアクション」について考えを深めていきたいと思いました。
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ここnoteを始めとした、SNS全般における「スキ」「フォロー」「コメント」について書かれた記事は山とあります。もちろん全部に目を通すことなどできませんので、読んだ範囲内での感想になりますけれど、それらの多くが『数字に囚われてはいけない』という論調でした。私もまったくその通りだと思います。
PVが少ない、見られていない。
スキがつかない、良い記事だと思ってもらえない。
コメントされない、特に読者の心に響いていない。
フォローされない、その他大勢の一人にしか過ぎない。
数字の低さがもたらすものは、往々にしてネガティブな、自分を追い込んでしまう系の感情であり、この感情はともすると(もっと、もっとがんばらないと……!)というあせりを生み出し、自分のペースややりたいことを見失って、数字を増やすための──正確かどうかもわからない──指南書に飛びついたり、他人やプラットフォームに媚を売るような内容にしてしまったり、必要以上に自分の容姿や個人情報などをさらけだす不安全な行為に走ったりするなどの結果を招き寄せてしまいます。
数字に囚われてはいけない論調の記事は、これらの悪影響を説いて、心の平安を保つことを推奨しているのですけれども、「数字が人をコントロールする」SNSや配信サービスなどの性質と、スキ、フォロー、コメント、PV数に一喜一憂する自分のどこが、歯車ががっちり噛み合うような負の螺旋構造を形成しているのか、もう少し詳しく考えてみることにします。
■スキ(グッドリアクション)が欲しい
発信者に対してリアクションを送れるプラットフォームのほとんどに標準装備されているのが、noteにおける「スキ」のようなグッドリアクションボタンですね。特に言うことは無いけど、ちゃんと見ているよ、という手軽な意思表示として重宝します。
このグッドリアクションがつかないと、「ちゃんと見てもらえていない」「見てすらもらえていない」という思考に陥る人は多いのではないでしょうか。
でも、考えてみてください。グッドリアクションをつけた人が本当に記事を読んでいるという証拠はどこにあるのでしょう。どこにもありません。訪問者の足跡がわかる機能がついているプラットフォームですら、訪問者がちゃんと読んでいるかどうかまではわからないのです。例えばnoteなら、タイムラインに出てきた記事にかたっぱしからスキをつけていくことができます。それらの記事を読んでいないにもかかわらずです。こうなると、グッドリアクションの数などあって無いも同然ということがおわかりいただけるでしょう。スキをつけていくことが単に日課であるだけかもしれません。
手軽に押せるからこそ、逆に手軽にユーザーを追い込むことができる、しかし手軽であるからこそ、大して意味が無い場合もある。それがグッドリアクションです。多くの人に知ってもらいたい、認めてもらいたい欲求が大きい人ほど、いともたやすくこの空虚な数字に絡め取られてしまう恐れがあります。その「スキ」は何から発せられたのか、いつもより少なかったらなぜ少ないのか、よく考えてみましょう。
■フォローされたい
「フォローする」とは、自分を継続して見る確約をしてくれるようなものと思っている人が多いのではないでしょうか。フォローしているとタイムラインに優先的に出てきたり、別途ラインナップされたりと、記事がかなり目につくところに配置されるようになります。相互フォロー、という言葉もあることから、フォローしあう関係はかなり親密な間柄である、と思う人は少なからずいるのではないでしょうか。
しかし、残念ながらそれは錯覚によるところが大きいでしょう。まず、自分がフォローしている人たちあるいはフォロワーのことを思い起こしてみてください。その全員と親密ですか。全員を等しく気にかけていますか。冷たいことを言うようですが、現実の友人と同じようにネット上の交友関係でも優先順位があります。注ぐ熱量には差があります。(同じフォロワーなのに、あの子とは親しく交流して、私にはそっけない……)と思っても、それは当然なのです。気が合う、合わない。知り合ってから長い、短い。さまざまな要因によって、相手に注ぐ熱量とそのベクトルは、違ってくるのが当たり前です。人と人とが交流する以上、リアルでもネットでも、これは避けて通れないものです。
フォロワーの数が多いほど自分には価値がある、という考え方は、「フォロワーの数が自分より少ないアイツは自分よりも劣っている」というおぞましい観念に容易に結びついてしまいます。フォローは自分の興味のある記事を優先的に表示するためのマーカーのようなもの。増減したところであなたの価値が上下するわけではありません。そもそもフォローするのも外すのもボタンひとつで気軽にできるのですから。
■コメントがほしい、PV数がほしい
コメントは、コメント欄をオープンにしている場合、書き込める人を限定したり、フルオープンにしたり、変更できるプラットフォームが多い印象ですね。言うまでもなく、発信者の記事や作品に対して寄せられる感想や意見、賛辞や批判などがコメントの内容になります。賛辞や同調のコメントが多いほど、自分が優れた創造者であると考えている人が多いのではないでしょうか。
けれど、ここには落とし穴があります。コメントを書いているのは人間だということです。人間だということは、さまざまな要素で構成されているということです。年齢、性別、教養、職業、文化、信条、環境、出身、地域性、社会性、その他もろもろの要素を持つ集団のうち、その記事や作品が「刺さる」要素を持つ層だけが反応してコメントしているのです。興味が無いものに「あ、そう」とわざわざコメントする者など(よほどのひねくれた暇人でないかぎり)いません。この「コメントする層」と「プラットフォームの性質」の関連は無視できないものがあり、コメント不振に悩んでいる人はまずここから改革していかなければならないでしょう。
自信のある記事や作品なのにPVやコメントの書き込みが振るわないのは、あなたが「海で川魚を釣ろうとしている、もしくは一本釣りでシラスを釣ろうとしている」に等しいことをしている可能性が大です。PVが伸びずコメントにも飢えているならば、プラットフォームを適したものに──刺さる層が多くいるプラットフォームに──変えるあるいは増やす勇気を持った方がよいでしょう。変えても付いてくる人は来ますし、来ないならそこまでの関係です。
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スキもフォローもコメントも、義務ではありません。する必要もなければ、同様にされなければならないものでもないのです。フォローしている相手でも、特に刺さらない記事や作品なら、スキを押す必要もなく、ましてコメントする必要などもありません。スキやコメントをする義務感を持ってしまうと、その瞬間からSNSに縛られて生きる人生が始まってしまいます。もし、あなたのフォロワーが、義務感から書きたくもないコメントをむりやりにひねり出しているとしたらどうでしょう。とても悲しく、申し訳ないことだと思いませんか。
同様に、フォローもし続ける義務はありません。一度はフォローしたけど、自分の感性とあまりにかけ離れていると感じたら、フォローアウトしていいのです。一度フォローしたら何があってもフォローし続けなければならない理由はありません。合わない内容の記事が延々とタイムラインに流れ続けてくるより、はるかにましです。特に、個人の方で、フォローしてくれた人を全員フォローバックしている人はご注意ください。
こうした数字は、数字というわかりやすい形をしているため、そう思っていなくても一喜一憂しがちになるものですけれど、その性質を見極めると、実に定義のあやふやな、指標として使うには適さないものだということがわかります。
私は、大切なのは「スキ、フォロー、コメントしてくれた人の層、質」であると考えます。
流行りものをあっという間に飲み下してさっさと次の流行りものに飛びつく客よりも、『よう、大将。今年の出来はどうだい』と言って暖簾をくぐり、じっくり味わってくれる常連客の方がはるかに価値がある、と言えばわかりやすいでしょうか。
細かい機微を汲み取ってくれる。
面白い経験を共有してくれる。
熱心に応援してくれる。
志を同じくして肩を並べてくれる。
どれだけ間があいても、『よう、久しぶり』であの日の続きを始めてくれる常連さん。たったひとりでもそういうフォロワーがいたら、こんなに素敵なことはないと思いませんか?
(もちろん、常連客にかまけて新たな常連になってくれる可能性のあるご新規さんをおろそかにするわけにはいきませんけどね。それに、常連さんにかまうよりも、大量のいちげんさんをさばくことに重きを置いたスタイルもありますし、あっていいと思います)
これが、企業や都道府県、市町村などの組織のSNS・配信だったらまた話は変わってきますけれど、そこのところは、またいつか。
今回は、スキとフォローとコメントとについて、私なりの考え方をまとめてみました。まあ、こういうのって、気にしない人はぜんぜん気にしないんですけどね。私も、願わくば、たくさんの人を応援するグッドフォロワーになりたいものです。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、ごきげんよう。