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不気味さが漂う【幼児狩り・蟹】河野多惠子著

放送に出てくる『蟹』はそこまで感じないものの、
一緒にタイトルについてる『幼児狩り』に
言いようもない不気味さが漂ってきました。

メロディアスライブラリー2023.1.29放送。

河野多惠子さんは、2015年1月29日に逝去。
88歳でした。
命日の放送日に選ばれたのは、
芥川賞を受賞作品である『蟹』です。
1963年に受賞したので、
私が生まれる20年以上前の話です。


・タイトルの理由

主人公である悠子は結核を患っていました。
この当時はまだ結核で患う人が
少なくなかったと考えられます。

「なぜ蟹なんだろう」と考えながら読んだら、
途中から彼女の甥である武と一緒に蟹を探すことになりました。ここまで読み進めて「なるほど」と気づきました。

ここだけ聞くと小学生の甥と蟹を探す無邪気な話になりそうですが、作品全体を通すと、悠子と夫との不穏な関係性が浮かび上がってきます。

「決してよい関係性ではないだろう」
「だからと言って、別れるつもりもなさそう」
そう感じました。

・他の短編について

『蟹』以外にも他5作収録されてました。
タイトルにある『幼児狩り』と聞いて、子どもを誘拐するのかと不穏な空気が流れてきました。

数年前に性教育のセミナーを受講したときのことを思い出しました。
その時に「私たちの感覚では考えられないかもしれませんが、小さなお子さんに執着する大人はいます。男の子も女の子も変わりません」と講師から言われて驚きました。

成人男性が、幼い女児に執着するのは聞いたことがありましたが、性別が逆でも起こりうるると感じました。

『幼児狩り』の主人公林晶子は、
3歳から10歳の女の子が嫌いだけど、
逆に男の子には格別に好きです。

成人女性が幼い男児に執着するのはイメージがわかないけど、「こういう人がいるから気をつけなきゃ」と漠然と思いました。

『堀の中』、『雪』、『劇場』、『夜を往く』も
それぞれ説明できない不気味さを感じました。

・感想

メロディアスライブラリーで紹介されなければ、
きっと手に取ることがなかったと思います。
作品名で調べた時、『幼児狩り・蟹』と出てきて、
一瞬読むのをためらったくらいです。
対応してくれた司書さんも、同じ感想でした。 

最寄りの図書館にも置いてなかったため取り寄せ。
出版社違いの同じタイトルのものを、
2冊取り寄せていただきました。
最初に届いた書籍が汚れがひどかったため、
別途取り寄せたそうです。

短編の一つ『塀の中』は戦時中の話でした。
今、この時代の話を書くと歴史小説になりそうですが、当時はまだ少し昔の話だったと感じました。

著者は私の祖父母と同世代です。
祖父母世代か来てきた時代を
何となく感じることができました。

作品は1963年の芥川賞受賞作ですが、
最近の受賞作と雰囲気が違いました。

ラジオ放送中、小川洋子さんが
河野多惠子さんとのエピソードを語っており、
その話が興味深かったです。
小川さんが『妊娠カレンダー』で受賞した当時、
審査員をやっていました。

以上、ちえでした。
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