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「どうしたらいいの?」薬剤師が戸惑った患者さんへの接し方【誰でもわかる精神医学入門】東徹著

私はかつて、精神科の近くの薬局で
働いた経験があります。

比較的軽症の人から症状の重い人まで、
様々な患者さんにお薬の説明をしてきました。

学生時代に精神科で使われるお薬について
学んできました。

「治療でこの薬が使われる」
「この薬は効果が出る前に副作用が出るから、
効果が出始める目安を伝えて、
途中で中断しないように伝える」
このくらいの知識はあります。

薬の説明はできても、
「患者さんとどう接したらいいんだろうか」と
戸惑うときがありました。
この本が、そのヒントになりました。

主な読者は看護師さんを想定されています。
そうは言っても、一般の方や患者さん、そのご家族にも理解しやすいように、平易な言葉で書かれています。

専門家ほどの知識はないけど、
精神疾患の方と関わりがある人にオススメです。


・困っていたら病気

「そもそも、精神疾患ってどんな状態なのか?」
学生時代に学んでから疑問に感じていました。

実際に患者さんと接しているときでも
見た目ではわからない人が大半でした。

最初に結論が書かれていました。

病気とは「困っていること」です。困っていればそれが「病気」です。

誰でもわかる精神医学入門 p24-25

この一言に「え?」と戸惑いました。
更にこう続きます。

確かに、これは私の個人的な見解であり、正式な定義ではありません。しかし、実際のところ医療の現場、特に精神科はそれぐらいの捉え方で動いていると言っていいと思います。

誰でもわかる精神医学入門 p25

血液検査などで異常がないため、
身体的に問題がないと言われて
紹介される人がよくいるそうです。

精神科では、「精神疾患ではないから医療は必要ありません」と言って帰っていただく…とはならないとのことです。
明らかに「困っている」からです。

その場合は、傾聴、カウンセリング、対処療法として薬を使うことがあるそうです。

・支持的精神療法とは

統合失調症の項目でも、うつ病の項目でも、
「普通に接しましょう」とありました。
敢えて名前をつけるなら「支持的精神療法」と呼ばれています。

さらりと書かれていましたが、
さすがにこれだけ読んでも「具体的に何をしたらいいのかわからない」と思いました。
そこでいくつかポイントが書かれていました。

・うつ病であると伝える。
・自分のせいではなく、病気のせいであることを伝える。
・治療と見通しを説明する。
・周囲からの激励は聞き流すよう説明する。
・原則的には、励まさない。
・休息を促す。
・趣味、娯楽については無理のない範囲で推奨する。
・死にたい気持ちは否定せず苦しみを受容する。
・「自殺はしない」と約束してもらう。
・回復するまで重要な決断はせず、焦らないよう説明する。
・仕事は段階的に復帰するよう説明する。
など

誰でもわかる精神医学入門  p140

患者さんに対して、聞き役に徹していたのを思い出しました。
気の済むまで話してスッキリして帰る方がほとんとでした。

現時点で病院のカルテを共有できないので、
患者さんからの話は重要な情報源です。
話をしてくれる方はありがたいと思いました。

一人の「人」として接する姿勢は大事と改めて気づきました。

・感想

薬局で働いていた時、できるだけ患者さんを一人の「人」として接していました。
当時は「これでいいだろうか」と疑問でした。

「回復するまで重要な決断をしない」など
疾患の特性はあるものの、
これでよかったかもしれないと気づきになりました。

文章は平易ですが、読み応えのある内容でした。
うつ病や統合失調症などもっと詳しく学びたい人にオススメです。

余談ですが、著者の東徹先生は、
「#薬剤師に処方権を」の発起人です。

キャンペーンが始まった当初、署名しました。
なぜ賛同したかは、こちらに詳しく書きました。

半年経った今でも、「薬剤師もアウトプット型の仕事をするチャンス」と思っています。
今後も注目してます。

以上、ちえでした。
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