無観客ライブの行きついた先に奇妙さを感じた理由【転の声】尾崎世界観著
「自意識過剰」
これが主人公である以内右手に対する印象です。
音楽番組に出るたびに、
自分の名前で頻繁にエゴサーチしてる姿が
滑稽に見えました。
そんな彼はチケット転売会社【Rolling→Ticket】と契約をします。
・チケットの転売
転売とか、プレミアとか聞いて、
昔、倉木麻衣さんのライブのチケットが
26万円で転売されたことを思い出しました。
このチケットは本人の誕生日で
ツアー最後の日、最前列でした。
定価は当時約6000円。
ファン仲間の間ではドン引きしていました。
後日談ですが、今ではチケットの転売どころか
第三者への譲渡自体が厳しくなりました。
事情があって手放すにしても、
公演4日前までに連絡しないと会場に入れません。
この作品とは逆の方向です。
ほしい人がたくさんいるのに、
チケットが手に入りにくくなればなるほど、
価値は上がります。
上がった部分が「プレミア」です。
「プレミア」がつけば、
自分たちの人気を証明できます。
以内右手はそれにとらわれてしまいました。
・以内右手に足りないもの
彼らは落ち目とは言え、知名度はあります。
彼を応援している熱心なファンもたくさんいます。
それなのにファンへの
感謝の気持ちが感じられませんでした。
「自分はもっと人気があるはずだ」と
承認欲求にとらわれているように見えました。
プレミアムにこだわる以内右手に対して
「定価への敬意が足りないね。
定価があるから転売がある」と戒めている
社長のエセケンの言葉が皮肉に感じます。
・無観客でチケットが売れることこそ価値がある
「プレミア付きのチケットを買ったけど、
敢えてライブには行かない」
この価値観に奇妙さを感じました。
「もはや何のためにライブ公演が存在しているだろうか」と。
コロナ禍の影響で配信ライブになりました。
何回か見たことがあります。
その後、また会場に行けるようになりましたが、
「生のライブいいな」と感心したぐらいです。
しかし、この作品の世界では
「無観客ライブで売れれば価値がある」という
不思議な価値観になりました。
「そもそも人間の存在って何だろうか」と
訳が分からなくなりました。
・感想
著者に対して、
さすがミュージシャンと感心しました。
今は現実に起こっていなくても、
今後可能性があると思いました。
作中に出てくるアーティストが
「ライブに来ないでください」と
ファンに向かって言いました。
お客さんが集まってこそ
価値があるイベントなのに
無観客の方が価値があるっていうのに
奇妙さを感じました。
私はソフトバンクホークスを応援してますが、
選手から「球場に見に来ないでください」と
言われたら、奇妙に感じます。
日頃、ヒーローインタビューで
「皆さんの声援がありがたいです」
「これからも応援よろしくお願いします」と
話しているのに…変です!
一時期、無観客試合になりましたが、
テレビで見ていても違和感がありました。
スポーツに試合にしても、
ライブなどの公演にしても、
見てもらってこそ成り立つのではないかと
改めて考えさせられました。
以上、ちえでした。
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