LoveMeTender

山育ち。赤い夕陽をバックにトンボ採りをしていた。黒電話が鳴って叔父の死を知らせた。なの…

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山育ち。赤い夕陽をバックにトンボ採りをしていた。黒電話が鳴って叔父の死を知らせた。なのに夕日もトンボも、全く変わらずそこにあることを知り、急に創作意欲が湧いた。昭和後半、小学校4年生くらい。あの感受性を思い出し、書きたいことを書くべと誓う、平凡な子持ちの主婦。

最近の記事

二次創作、腐、同人サークルの世界に刹那的に飛び込んだら、目が白黒した話し

 ある漫画のキャラクターに、ハマった。 いや、正しくは、「そのキャラクターが登場する二次創作作品」にハマったのだ。そしてもうひとつ、「ハマっていた」と過去形にしなければならない。  二次創作作品の沼に沈んでいった経緯は別に書くとして、わたしは、二次創作の世界に少しだけ、いた。  身を置いてみた。  実際に文を書いて活動もしてみた。    そして、わずか数か月でリタイアした。決してあちらの世界がつまらないということではない。楽しめない「わたし」という人間がつまらないのだ。  

    • 腐る女

       その電話を切ってすぐ、杏は砂粒ほども罪悪感を持たずにパソコンを閉じてフロアを出た。  昼休み中の仕事仲間はみな、スマフォと格闘するのに忙しい。1階に降りてタイムカード脇に備えつけられたホワイトボードに「外回り」と記入し、そこから駅に向かい、構内で新幹線切符を購入し改札を通った。  仕事を抜け出して東京に行く。  外は雪だ。  関東平野の腹を撫でるように滑走する文明の利器から外を見やれば、まるで雪風巻の中にいるのではないかと錯覚するほど、瞬時に雪は流れていく。  そうよ、そ

      • 妻よ、『私は男らしい』と言ってくれるな

         女性に「男らしい」という区別はあるのだろうか?  妻の作る飯はうまい。台所いっぱいを使って一気に作る料理、豪快な盛り付け、食卓には必ず4~5品が並ぶし、リクエストの幅も効く。それでいて、俺が帰宅するまで恨めしい顔を隠そうともせずダイニングで待つようなタイプでは断じてないし、バスケットボールに命を燃やしていた妻は、上下関係を重んじ嫌なことがあってもあまり深く悩まない。そうだ、エネルギッシュという意味では間違いなく妻は「男らしい」。  ただ、俺の母親のことになると少し勝手が

        • 友よ、結婚って何?と聞いてくれるな

           美人だ。二重まぶたで大きな黒目、ちょうどいい塩梅の眉毛、整った鼻、柔らかそうな唇。入社式の日に同じフロアで初めて見たときから、20年以上経ってもなお、その感想は変わらない。  そんな同僚でもある友が、世間でいうところの「幸せな結婚」「幸せな家庭」を築けないと言って、馬の絵が描かれた彼女の好きなワインを私のグラスに注ぎながら、困ったような顔で笑う。  もう一人の、これまた違った類の美人…浮世絵の「美人画」に出てきそうな友が、わかる、わかると言いながら手際よく皿の上にクラッカー

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          夫よ、「綺麗だね」と言ってくれるな

           いつからか、夫に対して何の感情も湧かなくなった。  いや、感情としては「嫌い」なのかもしれない。瑞々しい果物のような感情が、もうない。  一般的な家庭に育ったから、とりあえず同じ屋根の下にいるという家族の形はよく知っている。夫に対してもそれと同じだろうと問われれば、そうだとも言えなくもないが、でもやっぱり、少し違う。  子育てが一段落したことと引き換えに、まだ小学低学年の息子が、ベッドに入ると自慰をするようになった。本人はそれが何か分かっていないようだが、私は、驚くより先

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