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読書メモ:ドラマへの遺言

基本情報

『ドラマへの遺言』
倉本聰 碓井広義
2019年2月20日発行

「北の国から」シリーズや「やすらぎの郷」等の脚本家である倉本聰さんに弟子である碓井広義さんがインタビューする形でまとめられた本書。

恥ずかしながら倉本聰作品ドラマをちゃんと拝見したことはないが、大御所脚本家であり、どのような思いを持って作品を作り、また、現在のドラマ界に対してどのような「遺言」があるのか興味があり、手に取った一冊。

構成

第1章 常に怒りのパッションを持っていないと
第2章 原点から学ぶってことが必要
第3章 10年ぐらいの修行を経ないと絶対続かない
第4章 歴史というのは地続きだ
第5章 利害関係のあるやつばっかりと付き合うな
第6章 頭の上がらない存在はいた方がいい
第7章 都会で競ってる知識なんてなんの役にも立たない
第8章 「棄民の時代」から目を背けない
第9章 何かを想像するというのは命賭け
第10章 夢の鍵を忘れるな
第11章 店に入ったら壁を背にして座る
第12章 あえて重いテーマをずばりと掘り下げる
第13章 美は利害関係があってはならない
第14章 ゛これが最後゛という覚悟がいい仕事を生む
第15章 神様が書かせてくれている間は書き続ける

感想

ドラマを作る際に「本読み」と言って出演者が撮影前に集まって、台本を読むことがある。
倉本聰さんは、セリフの意味・ニュアンスが変わってしまうため、セリフを一字一句変えて欲しくないということもあり、この本読みに参加するが多い。

具体的にドラマ「優しい時間」の最後に場面で、寺尾聰さんが現場で演出家と話してセリフを変えてしまい、それを放送で倉本さんが見てショックだったということが書かれている。

少し前に「セクシー田中さん」の原作者が亡くなるということがあったが、ドラマや映画、舞台等一人ですべて作り完成するものではなく、スタッフ、関係者と議論をして作り上げていくものではあるが、「原作者の想い」というのは変えてはいけないものだろう。

簡単に言えばコミュニケーションということになってしまうが、コミュニケーションということを超えて、「信頼関係」をしっかりと構築できるかがいい作品になるかの重要なポイントだと思う。

本書の中で、森光子さんの所作の素晴らしさが触れられている。普通ドラマを見ているだけではおそらく気づかないような細かい所作のことだったが、台本をしっかり読み、演じるシーン、相手との関係を読み解き、「目下の人に対するしぐさ」を脚本には書いてないが、演じられていたとのことである。

こういう細かいことの積み重ねで、信頼関係ができていき、結果として、同じ人が同じ脚本家の人のドラマ、映画に出ることになるのだろう。

昔がよくて今はダメと単純に言えるものではないが、手間暇やお金のかけ方等でドラマ・映画の作り方、脚本家と役者の関係等で変わっていってしまうが、それでもなお変えてはいけないものがあり、それを大事にしていければ、これからもよい作品はきっとできるだろう。
ただの一視聴者ではあるが、これからもよい作品、面白い作品に出会えること期待していきたいと思われた一冊であった。


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