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白熊親子4〜サンタ・トナカイ編

#シロクマ文芸部

小牧幸助文学賞提出の20字小説3部作に続く続編です。

白熊親子4〜サンタトナカイ編


十二月になった。
「サンタさんへ」と言う手紙が各地から次々と届く季節だ。
「あら、引越しのお知らせが届いていますよ」と、トナカイは言った。
「おや、北極で白熊親子を最近見かけないと思ったら南極に引っ越したんだね…」
サンタさんはつぶやいた。するとトナカイは手紙の山の中から南極からのもう一通の手紙を見つけてサンタさんに渡した。
「ここに、もう一通ありますね…おや、あの子グマは字が書けるようになったんですね」
トナカイが渡した二通目の手紙に目を通しながらサンタさんは目を細めた。そこには子どもらしいかわいい文字が並んでいる。
「サンタさんへ、『ペンギンさんにもサーモンをください』」白熊の小グマからの便りだった。

「赤ちゃんだった、あの小グマだね。南極でもう友達が出来たんだな。仲良くなったペンギンにもプレゼントをしたいとお願いするなんて優しい子に育ったね。偉い偉い。よし、とびきりおいしいサーモンをシロクマ親子とペンギンさんたちに持って行ってあげよう!」
トナカイはサンタさんへの手紙を確認しながら間違わないようにそれぞれの動物へのプレゼントをメモしていた。

「今年の夏は暑かったからなぁ。たくさんの動物たちが引っ越したみたいだね」
サンタとトナカイは、今年の長かった夏を思い出していた。あまりの暑さで森の木も乾燥して、枯れてしまった草木もあった。それで木の実が少なくて、動物たちはあちこちに餌を探して移動しているというニュースもあった。山からおりて普段は近寄らない人間の暮らす村や町にまでエサを探す動物もいた。
「日本のクマたちもエサがなくて街に出て大騒ぎになって困っているらしいですよ」
「そうか、日本のクマたちにも山からおりなくても過ごせるような木の実やサーモンをたくさん持って行ってあげたいね」

空には明るいオーロラが美しく輝いていた。
「南極でも、このオーロラが見られるのですか?サンタさん」
「さあ、どうかなぁ…。反対向きのオーロラが見えるらしいけど。わたしもよく考えてみた事がないからなぁ」
サンタとトナカイは、空を見上げながら、しばらくキラキラと輝く光のショータイムを楽しんでいた。
地球が熱くなってきたせいか、最近ではオーロラの出る場所も変わってきたらしい。

「目安にしていたオーロラの出る場所が違うから道に迷わないようにしましょう」
「さあ、出発だ!今年もたのむよ。一番寒くなる厳しい冬に間に合うようにね…」

サンタさんを乗せたトナカイのソリは、北極圏近くの空に消えていった。

シャンシャンシャンシャンシャン…

雪が降り出した。
たくさんの動物や人間が住む
世界中の森や山や町の境目もないくらいに、
すべてを包むように、
雪は地球の北の国を真っ白にしていった。

          おしまい


#白熊親子
#ファンタジー


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