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[短編小説]/ ひいろAIからファンタジー 図書館の魔法使い② (1932字) シロクマ文芸部 「月曜日」後編

ひいろAIからファンタジー 

図書館の魔法使い 前編はこちら


図書館の魔法使い 後編


朝から降り続いていた雨は止む気配もなかった。
月曜日の図書館は閑散として、私のほか誰の姿も見えない。
入り口を何回見ても、誰も来ない。
「ケントくん来れなかったのね。さすがに、この土砂降りじゃね…」

あきらめて本を棚に戻しに行った。目の前に驚きの光景…!

「えっー?!本が空中を舞っている?!」

瞬きをして、目を凝らした。
「マジ?!しかも、あの人…ケントくん?!」

何が起こっているのか状況がつかめない。驚き過ぎて、そこから動くこともできなかった。
ケントくんの方は集中しているのか、見られているのに気づいてないみたい…

指先にパワーを集中させてコントロールしているみたいに見えた。
彼が両手で上向きの力を加えると、次々と本は浮き上がった。

空中を舞う本たちはページをパタパタさせている…その様子は、まるで鳥が羽ばたいているようにも見えた。
次第に大きな円を描くように同じ向きに回りだした。
フィナーレのワルツを踊っているみたい…
ラストは、本はそれぞれの書棚へと戻って行った。

ショーは終わった。

ポカンと見上げていた私に気づいたケントくん。

「あ、見てた?…ごめん、驚かせたね」
はにかんだような笑顔。
何が起こったか、わけわからないけど…
「やっぱり、、、
 ケントくん……素敵✨」

まさかケントくん魔法使いなの?!
もっと素敵!!
だってファンタジー大好きだから⭐️



ハッと我に返って、あわてて帰ろうとする私にケントくんは続けて言った。

「もし良かったら、一緒に帰らない?」
「えっ??」
まさかの誘いに思わず、うなづいてしまった私…

え?なんて言う展開?!
ドキドキしながらケントくんの後について図書館の外に出た。
ケントくんは立ち止まって自転車に乗ると後ろの方を指して、
「ここに座って」…って?!
「……」

さすがに戸惑っていたら、サラッと言ったの。
「虹を見に行こうよ」
「虹って言ったって、この雨…」
「大丈夫、観てて」
ケントくんは、タクトを振るように指先をクルクル回しだした。

すると、滝のようにザーザー降り続いていた雨はスローモーションのように大粒のドロップにかわっていった。

両手の指先でパワーを注ぐと、今度は小さく小さく弾けていってパウダーみたいになっていった。
パウダー状の雨粒は、指揮に従うみたいに円を描いて回り出した。
さっきの本みたいに…

今度は右に大きく回した手を上向きにすると、細かい雨粒はだんだん螺旋状に上昇。
両腕を広げると道をひらくように、目の前に晴れ間が広がっていく…

もう一度チラッとこちらを見て言ったの。
「さあ、おいでよ!」
私は自転車の後ろに座った。
「ボクに捕まっていてね」
そう言うと、後部座席にある特製ベルトを私に固定した…

「ここが精一杯…」とケントくんのマントに捕まった。

2人を乗せた自転車がグングン走る。加速度がついてくると、ケントくんの自転車はフワリと浮いた。

「ここからスピードを出すよ。高くまでいくからボクにしっかり捕まっててね」

飛行機の離陸の時みたいに、背中にグーンと力を感じてきた。
私は思わずケントくんの背中にギュッと捕まった…。
いろんなドキドキが一気に高まって鼓動がドクドクと音を立てる。
目も開けられない。
これ夢の中なの?



無我夢中でしがみついている私にケントくんは言った。

「みて!」
怖くて固く閉じていた目をあけた。目を開けると
「うわー!!きれい!」
私たちの下には街の屋根や公園の木がキラキラ光っていた。

分厚い灰色の雲を吸い込みながら、私たちの自転車は進んだ。
雲を蹴散らした私たちの周りには、大きなシャボン玉のような空間ができていく。

そして吸い込んだ雨粒はピンク、クリーム色、ブルー…の花に変わっていった。
花が増えていくにつれて
だんだん色が濃くなっていく…
赤・橙・黄・緑・青・藍・紫

雨粒はいろんな色の花に変わった。

「ここら辺で、いいかなあ」
ケントくんは、そう言うと自転車を止めた。

「ここが虹の頂上だよ」
「えっ?!」

私たちは観覧車のてっぺんにいるみたいに、七色の花でできた虹🌈の頂上に腰掛けた。

驚きの連続。
夢の中にいるような気持ち。
でも一番の驚きはやっぱり…
ケントくんといることだけど。

「図書館でね…虹の作り方を調べていたんだ」
そんな突拍子もない話だって信じられる気がした。
「ボクは虹作りの魔法使いなんだ。キミの名前は?」
「…ステラ」

そう言えば不思議。
この国の言葉は、わからないはずなのに…
ケントくんとずっと喋っていることに今さら気づいた。

街には大きな虹がかかっていた。
やがて、国中を染め上げるような黄金の夕焼けがかかった。
それを見るケントくんの目もキラキラ輝いていた…✨💫

           おしまい















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