見出し画像

私の感覚を理解するのは私だけ #24

太宰治『走れメロス』についてだけ #17


小説やマンガの中の主人公にはたまに尋常じゃない優しさや根性を持つ者が現れる。
そんな中でも、ちらっと垣間見る人間としての感覚を見つけるのが大好きだ、

例えば、尾崎紅葉『金色夜叉』での貫一とお宮のやり取りの中で、のもすごく貫一の感情が深く共感し突き刺さってくる部分があった。
具体的に忘れてしまったので申し訳ないが、貫一がお宮に対して取った行動と抱いていた感情、その部分を読んだときに「あぁ、人間って本当に完璧ではないよね。貫一の心がよく分る」と妙にしんみりしたのだった。
(今、ざっと読み返したのだが見つけられなかった…すみません)

メロスもしっかりと桁外れた主人公ぽく、ちょっと…いや、かなり変わり者だ。
でも、ここからのメロスはごく普通の人間味あふれる行動が多くみられる。
縛られている友がいることを考えれば、信じられないくらい余裕満々でこちらが心配するほどの行動だが。

ボロボロに疲れて帰ってきた兄を見てさすがの”内気な妹”も驚きを隠せなかっただろう(どうでもいいが、この”内気な妹”という言葉のかたまりが好きだ)。

どう見ても”なんでも無い”とは言えない状態だっただろうが、ここまでよく走った。

さあ、ここから先のメロスの行動は物議を醸しだす部分かもしれない。
婿の牧人を説き伏せたところまではまだOKとしよう
夜明けまで議論を続けたというが、まあそりゃそうだろう。

夜に突然訪ねてきて、明日結婚式をやってほしいといわれたら誰だって「無理無理無理」というだろう。
大体にして怪しすぎる。
どうやって、”なだめ、すかして、説き伏せた”のだろう…。

そういえば結婚式の場面で出てくる単語”車軸を流す”も国語の意味調べの宿題で調べたなぁ。
他の教科書の物語なども同じように意味調べがあったはずだが、メロス内のものだけいやに覚えている気がする。

さあ祝宴はどんどん盛り上がっていく。
メロスも妹も幸せいっぱいだ。

そしてここからが問題の始まり。
ひと眠りしようとするメロス…え、寝るの!?
君はそれでいいのか?!

3日間の猶予を与えられてはいるが、それは3日間のうちに帰って来いという意味で、ぎりぎりまで命を大切にしろということで与えられた時間ではないぞ。
セリヌンティウス、縄打たれているよ…。

眠気には勝てない!
それが漢、メロス!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?