見出し画像

【違和感】映画「バービー」-ネタバレあり感想&徹底考察

どうもTJです
今回は2023年No.1ヒットを記録した「バービー」についてネタバレありで徹底考察していく
Netflixで配信開始されたことで、比較的アクセスもしやすくなったいうことでまだ見ていない方はぜひ

あらすじ・キャスト

ピンクに彩られた夢のような世界「バービーランド」。そこに暮らす住民は、皆が「バービー」であり、皆が「ケン」と呼ばれている。そんなバービーランドで、オシャレ好きなバービーは、ピュアなボーイフレンドのケンとともに、完璧でハッピーな毎日を過ごしていた。ところがある日、彼女の身体に異変が起こる。困った彼女は世界の秘密を知る変わり者のバービーに導かれ、ケンとともに人間の世界へと旅に出る。しかしロサンゼルスにたどり着いたバービーとケンは人間たちから好奇の目を向けられ、思わぬトラブルに見舞われてしまう。

映画.comより引用

監督:グレタ・ガーウィグ
主演:マーゴット・ロビー
その他:ライアン・ゴズリング、アメリカ・フェレーラ、ケイト・マッキントンなど

監督は40歳ながらハリウッドの最前線で活躍中のグレタ・ガーウィグ
今作で興味深いのが、主演のマーゴット・ロビーがプロデューサーも務めているということ
ここについても後で詳しく述べていきたい

ディストピアからディストピアへ

話は、バービーが自身の身体の異変を治そうとバービーランドから人間の世界へと行くところから動き出す
ピンクで染められたバービーランドはバービーたちにとって何不自由ない世界
彼らにとってそこは間違いなく幸せに満ち溢れたユートピアだった

https://eiga.com/movie/98952/gallery/

しかし人間の世界を訪れたバービーは男性から性的な目線でしか見られないことや家父長制が根強く残る人間社会に愕然とする
人間の世界はバービーが想像していた形とは真逆の男性優位のディストピアだったのだ
またここで同じく人間社会に降り立ったケンは男性優位の人間社会に触発され、バービーランドをケンダムに変えてしまう
ケンにとってバービーランドは女性優位のディストピアであり、それを人間社会へ行ったことで初めて自覚する
今作はバービーランドから人間社会へ行って帰ってくる映画ではあるのだが、それはディストピアからディストピアへ行くことを意味している
今作のグレタ・ガーウィグの巧い点としてバービーランドを男性優位の現実社会とは分かりやすいほど真逆の女性優位の社会としてデザインした点である
旧約聖書の世界では最初の人間は男でアダムであるのだが、バービーランドでは最初の人間は女性のバービーであり、ケンはバービーのおまけとして後に作られて行く
この舞台設定、そして人間社会と正反対に位置するバービーランドを行き来させることで現実社会の男女格差を自覚させようとするグレタ・ガーウィグの手腕は素晴らしい

徹底した自己批判  

話はその後、バービーたちがケンの手に落ちたバービーランドを取り戻そう展開されていくが、この映画の着地点として面白いのが単にバービーランドを元の女性優位の社会に戻そうとしないこと
バービーランドという超女性優位社会、そしてケンダムという超男性優位社会、そこに人間社会を仲介させることでバービーランドがいかにケンたちにとってディストピアだったかをバービーたちに自覚させ、本当の男女平等社会を目指そうとする

https://eiga.com/movie/98952/gallery/

この過程では、徹底的な自己批判で従来のフェミニズム映画で来るだろう批判を完全に無効化している
例えばバービーが自分は美しくないと言ったシーンにナレーションで「マーゴット・ロビーが言っても説得力がないけどね」と補足するところや「バービーはフェミニズムを50年遅らせた」と現代の価値観でバービーを批評させている
おまけにマテル社の不正会計にも触れる始末w
このように自分たちにとって批判的なメッセージをあえて出すことで、逆説的に今作が伝えたいメッセージ性に説得力を持たせている
そんなことはわかっているよ、でも現実社会は男性優位だし、ルッキズムは無くなっていないでしょ?
そんなグレタ・ガーウィグの叫びが映像を通じて伝わってくる

マーゴット・ロビーの華麗なるアンサー

キャストのところで触れたとおり主演のマーゴット・ロビーは今作でプロデューサーも務めており、どうやらグレタ・ガーウィグへオファーしたのもマーゴット・ロビーだそう
そんな作品の内外で核となっている彼女だが、この映画はマーゴット・ロビーの華麗なるアンサーにも思えてくる
この映画の終盤でケンはバービーに自分の恋人、自分にとって都合の良い女になることを要求するが、バービー(マーゴット・ロビー)はこれを拒否する
この男性にとって都合の良い女というのはまさしくマーゴット・ロビーが「ウルフ・オブ・ウォールストリート」で演じたナオミであり、自分のキャリアをフリにして私は私であり、男性にとって都合の良い女でないというというアンサーを観客に示す

https://images.app.goo.gl/A2AvHxjmvDT3Fepj8

マーゴット・ロビーがなぜバービーを題材にし、グレタ・ガーウィグへオファーしたのか
ここにすべての理由が詰まっているように思えてならない

ラストの意味

大分とっ散らかってきたので、ここで一旦まとめたい
今作は従来の人形バービーが女性にもたらしたエンパワーを現代の形へともう一度再解釈するのが大枠であり、その中身としてステレオタイプからの脱却、バービー(マーゴット・ロビー)のアイデンティティの獲得がある
ラスト、バービーはバービーランドから旅立ち人間世界へ向かう
なぜ、わざわざディストピアである人間社会に向かうのか
それはバービーが完全でなくても良いと気が付けたからだろう
バービーの産みの親であるルース・ハンドラーとの対話を経て不完全でも、不十分でも良いと気づけたからこそ、バービーは地面にかかとをつけ、人間世界へ向かう
この一連のシークエンスこそがまさにステレオタイプからの脱却であり、人形から一人の人間になるというアイデンティティの獲得を意味する
人間になったバービーは人間の一番の記号である生殖器を持つことになるし、婦人科へと向かう
「困ったら婦人科へ行け」このメッセージも女性への現代的なエンパワーである

https://eiga.com/movie/98952/gallery/

総評-解像度の低さ

最後に総評を
世間では色々と言われているが、個人的に今作は現代的に再解釈をしたフェミニズム映画だと思う
バービーという従来のフェミニズムという器を使って再解釈を試みるというアイディアは面白いし、そこにアイデンティティの獲得やマーゴットロビーのバックボーンなどが重層的に重なっている
一方で少し人間社会の解像度が低すぎるところは少し気になってしまった
例えば人間社会を明らかな男性優位社会へと簡略化し過ぎているし、実際はトランスジェンダーのような人たちも少なからず存在する
いくら男女平等と言っても読解力などで能力差があるというデータも見られている*1
もちろん、これはメッセージ性を強く残すためにあえて分かりやくしたのであり、理解はできるのだが、結果的に作品の解像度が低くなってしまっているように思える
またマテル社の上層部の立ち回りが意味不明なため、バービーのラストの選択にも深みが十分に出てないように思えた
ということでTJ的評価は⭐︎3.5/5としたい
もちろんこれは人によって、さらには性別によっても受け取り方は異なるように思えるし、刺さる人には刺さる映画だと思う

ということでいかがだっただろうか
久しぶりの旧作レビューとなったが、今後も新作、旧作問わず映画レビューしていく予定なのでスキ、フォロー、コメント等など是非
今後の投稿の励みにもなります

では!


最新の映画レビュー


*1https://www.rikejo.jp/article/27557#

この記事が参加している募集

映画感想文

映画が好き

見返りは何もありませんが、結構助かります。