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【アンチコナン映画】映画「落下の解剖学」ネタバレあり感想&徹底考察

どうもTJです
今回は2月23日公開、アカデミー賞でも5部門でノミネートされた「落下の解剖学」についてネタバレありでレビュー&徹底考察していく
最後までお付き合い願いたい

あらすじ・キャスト

人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見し、悲鳴を聞いた母親が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた。当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、前日に夫婦ゲンカをしていたことなどから、妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられていく。息子に対して必死に自らの無罪を主張するサンドラだったが、事件の真相が明らかになっていくなかで、仲むつまじいと思われていた家族像とは裏腹の、夫婦のあいだに隠された秘密や嘘が露わになっていく。

映画.comより引用

監督はこれが長編4作目となるフランスのジュスティーヌ・トリエ
主演はドイツ映画を舞台に活躍するサンドラ・ヒューラー
その他イケオジ弁護士役にはスワン・アルロ、息子ダニエル役のミロ・マシャド・グラネールなどが共演した

情報出力の巧みさ

https://eiga.com/movie/99295/gallery/より引用

転落死した夫が自殺なのか、他殺なのかというクエスチョンを起点に物語は幕を上げる
あらすじを見たらよくありがちなミステリーと言った印象を受けがちだが、実際に見てみると今までにない感触を覚える
その一つとして情報の出し方が実に巧みだ
劇中の大部分は裁判所が舞台となるので、映像的な動きはほとんどない
しかし情報を小出しに出してくるため、観客はこの裁判の行方にうまく巻き込まれる
例えば息子ダニエルが視覚障害者という情報も事件後に明かされ、ダニエルが実際どの程度見えているのかというところも最後まで提示されない
終盤の夫婦の口論でも映像と音声が絶妙なバランスで観客に与えられるため、観客の想像力を否応なく掻き立てられる

そして、この映画一番の特異な点は事件の真相は最後まで解明されないという点である
観客は真実への蟻地獄に突き落とされたまま、救い出されることはないのだ

この映画は何を解剖したのか

ではこの映画は果たして事件の真相のかわりに何を解剖したのか
それは裁判所という舞台装置の実態である
作中に印象的なシーンがある

https://eiga.com/movie/99295/gallery/より引用

弁護士(ヴァンサン)がザンドラの自宅に来て、淡々と状況を整理するシーン
ザンドラ:「待って、私は殺してない」
弁護士:「…問題なのはそこじゃない」

客観的な事実、証拠が乏しい以上、裁判所で真実は見つからない
裁判所は真実を見つける場所ではなく、真実を決める場所なのだ
そしてその過程において次々と明らかになる「家族の形」
繰り返しになるが、ここの情報の出し方、脚本の組み立ても非常に上手い

最終的には裁判でザンドラの無実が確定するが、その決め手となったのは息子ダニエルの証言だ
ここで留意するべきなのは人が決断する時は常に感情が付き纏うということ
ダニエルの証言によって裁判官、陪審員の心がつき動かされてザンドラは無実になる
逆に検事の言い方はウザいので、最終的には心を動かせない

だが、考えてみるとダニエルの証言が本当だという保証はどこにもない
明らかなのは彼が母親を救おうと決断したことだけなのだ

コナンみたくいつも真実が明らかになるとは限らないし、世の中はひどく曖昧だ
そして時折、真実は人の感情で決められる
これが裁判所の実態であり、今作ではその現実を克明に描いている

なぜ最後、サンドラは弁護士にキスをしなかったのか

無実が確定し、弁護士たちと勝利の宴をあげるザンドラ
そこで、イケオジ弁護士と2人きりで見つめ合うシーンがある
しかし彼らが唇を合わせることは無かった

https://eiga.com/movie/99295/gallery/より引用

なぜザンドラは弁護士にキスをしなかったのか?
それは最後まで弁護士のことが信用できないからだ
物語の中盤、ザンドラと弁護士がお互いに何の動物に似ているかを話し合う場面がある
弁護士はザンドラのことを犬に似ていると答えるが、ザンドラは答えられない
同時に「動物に似ていない人は信用できない」と言う

では、なぜ弁護士のことが信用できないのか
彼らは古くからの友人ということで、この裁判前に何かしらのきっかけがあったのか
理由は劇中内では明らかにされていない
ただ裁判を共に戦ってきて、最後まで目を合わせても彼を心の底から信用できない(彼が犬に見えない)からこそ、その夜、共に寝る相手は弁護士ではなく、愛犬スヌープなのだ

総評

最後にこの映画の感想を
総評としては、⭐︎3.5/5としたい
もちろんここまで説明してきた通り、映画としてのレベルは非常に高くアカデミー賞ノミネートも納得の出来だ
それでも劇中にもあった通り、人は(少なくとも自分は)結末に面白いものを求めてしまう
それが映画というエンターテイメントなら尚更で、今作の淡白な味付けには少し物足りなさを感じてしまったのが正直なところだ
それでも見終わった後も余韻が残る、考察しがいのある映画であることは間違いない

ということでいかがだっただろうか
今後も新作、旧作問わずレビューしていく予定なので是非スキ、フォロー、コメント等をよろしくお願いします
(今後の投稿の励みにもなります)

では!

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