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【考察】石丸伸二、「覚悟の論理」の裏にある思惑|東京都知事選

皆様は石丸伸二という市長をご存知だろうか
若干38歳で、出身地である広島県安芸高田市の市長選に立候補
何のバックボーンもない中で、見事当選を果たし、劇場型とも評される政治手腕でネットを中心に数多くの注目を集めてきた

そして5月17日
安芸高田市長の任期が迫る中で、都知事の立候補を表明
引き続き多くの注目が集まっている

しかしこの一連の流れ、そしてこれを賞賛するネットの世論に少し疑問を持っている
何か持ち上げすぎではないのかと

そこで今回は石丸市長が都知事選に立候補するまでの流れと、その裏にある思惑を考察していきたい
もちろん石丸市長をすでに知っている方も、そうでない方も是非最後までお付き合い願いたい

石丸市政の4年間

鋭い切れ味でマスコミや議会と対立し、熱狂を生み出してきた石丸市長
そんな石丸市長の1期4年の実績としては自身も主張している通り、「市長就任以前の5年間は市の財政は実質単年度収支が赤字であった。それを黒字に立て直した」というものだ
これは徹底したコストカットと、自身のキャラクターでふるさと収入やYouTubeの広告収入などを増加させたことが要因として挙げられるだろう
これ自体は素晴らしいし、ケチのつけようもない

https://x.gd/gZaUB

しかしネットの切り抜き動画を中心とした、まるで救世主かのような扱いには疑問が残る
その人気の源泉となっている対立姿勢で議会を停滞させているのもまた事実だからだ
本人は緊張感を持って議会と対立することこそが、より良い政策につながると反論しているが*1、それでも議員への攻撃的な言い方などは気をつける余地があるのではないだろうか

石丸市長は安芸高田市という小さな自治体で、1期中にこれ以上の目に見えた実績をだせというのはほぼ不可能と話している
だが、それならもっと2期、3期とやって実績を積むべきではないのだろうか
あくまで一意見だが、1期4年を満了することなく、いわば投げ出した形で東京都知事選立候補は決して褒められた形ではない

(メディア批判の狙いについて)「一番の目的は安芸高田市を有名にすること。そのために言葉は悪いが燃やせるものは何でも燃やす炎上商法だ」

https://www.sankei.com/article/20240201-FP5KE6FJPVJHNKEGFJA4D44QJA/

都知事選、勝利の可能性

任期を途中を投げ出してまで都知事選に立候補した石丸市長
実際のところ、都知事選へ当選する可能性はどうなのか
これはメディア上でも言われている通り、かなり厳しいだろう
都知事選というのはそもそも現職が選挙で負けたことはなく、限りなく現職リードで進められる
仮にも小池百合子vs石丸伸二という1対1の構図を作り出せたのなら古い政治vs新しい政治というイメージ戦略で面白くなるが、5月27日に立憲民主党の大物議員 蓮舫氏が出馬を表明したことからもこの構図は完全に崩れている
※小池百合子氏が都知事選に立候補するかは現時点で不明(6月1日)

結果的に前選挙と同じような結果が予想され、石丸市長の立場は山本太郎氏(れいわ新選組代表)や小野泰輔氏(元熊本県副知事)と同じくらいの60万票ほど取れれば健闘といったところになるだろう

2020年東京都知事選結果(https://images.app.goo.gl/rwJaqJ4U7f7BXd7X7)

しかし問題の核心はここではない
というのもこんな一介の大学生が予測できることなど京大出身の石丸市長が分からないはずがないからだ
つまりなぜ敗戦覚悟で東京都知事選に出馬したのか
その石丸市長の裏にある狙いを考察していきたい

「覚悟の論理」の裏にある思惑

そもそも石丸市長は5月9日まで、2期目に立候補するかについて一貫してまだ決めてないと答えてきた
5月10日に2期目に出馬しないこと、そして17日に東京都知事選に立候補することを発表した
それに合わせたの如く、5月24日に自身初の著書「覚悟の論理 戦略的に考えれば進む道はおのずと決まる」を発売
続けて来月6月20日には「吾往かん」を発売を予定している

政治家というのは勝負をかける前に本を出す
田中角栄の「日本列島改造論」は象徴的だが、その他にも第1次安倍政権発足前に出版した安倍晋三の「美しき国へ」や自民党総裁選前に出版した岸田総理の「岸田ビジョン」などがある

当然のことながら1ヶ月そこらで本が出せるはずはない
つまり石丸市長はかなり前から東京都知事選出馬を念頭に行動している
「覚悟の論理」を出版するタイミング含め、彼の行動の裏には「政治家の論理」で働いている

もちろん敗北が濃厚なことは前述の通り本人も重々承知だろう
しかし東京都知事選に出ることで全国的な知名度という余りあるリターンが返ってくる
これをバネに国政、もしくは広島県知事などを狙うのではといった想像は容易くない
実際に前回選挙で敗れた小野泰輔氏はその後、維新の会から衆議院選挙で比例東京ブロックで当選している
近くには衆議院選挙が噂され、そして広島県知事も現職の湯崎英彦知事は2025年11月で任期満了となっている

もちろんこれらの動きを批判するつもりはない
一つだけ言いたいのは彼も権力を握るために動く立派な政治家という生き物だということ
救世主のように崇め奉るのは危うさを感じてならない

落選した場合の予定を尋ねると、

「負けたらどうしようという想定やイメージが全然できませんね。私にとってすごく大きな勝負なので、受け身の取り方すら想像がつかないみたいな……。(広島県知事選や国政進出は?)予定はないですよ。そのときになったら考えるのか、それもわかりません」

https://news.yahoo.co.jp/articles/c0b008c757fadcd1e9699ef6386f15445b64cfba

彼は日本を救う救世主か

彼は停滞した日本を救う救世主か
その答えはこれまで答えてきたようにNoである
しかし彼が無能な政治家であるかという問いに対してもまたNoである
そもそも日本をたった1人で救う人物など存在しない(SNSの発達で、国民からは分かりやすい救世主が求められているが)

今回、この記事を書いた狙いとして石丸氏があまりにもネット上で持ち上げられすぎていたように感じられたからである
今でこそ東京都知事選の出馬を受けて賛だけでなく非の声も上がり始めているが、それまでは石丸市長に対しての疑問の声はほとんどネット上においては表出していなかった
※これはYouTubeに上がる切り抜き動画のコメント欄などを見れば明らかである

しかし1人の人間に対して様々な意見が寄せられることこそが健全な言論空間であり、彼が一貫して訴えている政治のエンタメ化に繋がるのではないだろうか

彼のような若く、エリート街道を歩んできた人物が政界に参入していくのは日本にとって良いことだ
だが彼のやってきたことについて、メディアや議会を論破する分かりやすいイメージで評価するのではなく、是々非々でバランス感覚を持って評価する必要があるのではないだろうか
政治とは妥協の芸術でもある
無用な対立を煽り、燃やせるものは何でも燃やす
このスタンスに疑問符を付けた上で、彼の今後の動きに注目していきたい

前 東京工業大西田亮介准教授が産経新聞から石丸市長についての取材を受けて

「議会対応を含め、市長の言い分に納得できるものもあれば首をかしげるものもある中、常に記者や議員が悪者扱いされているようにみえる。人間なので言動のすべてが正しいというのはありえないにもかかわらず、市長に支持が集まるのは、論破ブームに乗った見せ物としておもしろいという脊髄反射的な大衆の反応ではないか」

「市長は世論を意識し、自分の見せ方を分かっているが、肝心の施策面で何をしたいのかがよく見えない。この点は政策実現のためにメディアを利用することもあった橋下氏との違い。ネットでの発信に加えて、政治家として何をしたいかを明確にし、政策を磨くことも期待される」

https://www.sankei.com/article/20240201-FP5KE6FJPVJHNKEGFJA4D44QJA/

今後も政治をエンタメ化させるべく、政治系についても投稿予定
都知事選の総括もまた投稿したいと思うのでスキ、フォロー、コメント等など是非
今後の投稿の励みにもなります!
では!

見返りは何もありませんが、結構助かります。