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4 歌舞伎町 夢千代 ~短編小説 恋愛 初恋編~懐かしい卵焼き~

祖母と二人暮しだった僕にとっては、
思い出の味が卵焼き

  「いいかい、お前は言葉は
わかるけど、会話出来ないだから、
どんな時でも笑ってなさい。」
と悲しい笑顔で微笑む祖母の事を
思い出し卵焼きを食べると、
嬉しいけど寂しい気持ちになった。
でも、祖母の言いつけを守り笑顔で、
夢中になって食べた。

祖母が死んだ時も僕は、笑顔でいた。
周りの親戚は、横たわる白装束の祖母を見つめながら、微笑みかける僕を見て、遠縁の少女が
「なんで、お兄ちゃん笑ってるの?
悲しくないの?」
言葉をかけてた時、
「悲しいかい!」と祖母の声が
聞こえた。

今まで、どんなに辛くても笑顔でいた
僕の頬を暖かい何かが伝わる感覚を
覚えた。
「お兄ちゃん泣きながら
笑ってるの?大丈夫!?」
心配そうに僕の顔覗き込む
少女に僕は、うなずきながら
孤独をかみしめた。
女店主の涙も僕と同じ孤独から
だったのかもと卵焼きを食べて思った。
(懐かしい卵焼き)


✩°。⋆⸜(*˙꒳˙*  )⸝次回土曜日 更新

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