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散文『車の窓』

『バッバッバッバッ』

山道に揺られていたら、

気持ち悪くなって外の空気が

吸いたくなって窓を開けた。

窓の外には月に明るく照らされた樹々が

高く高く空を目指して伸びている。

湿った樹々の香りが

胸のムカつきを静めてくれた。

こうして、誰かの運転する車

でただぼーっと外を眺めるなんていつぶりだろう。

そんな思い耽っていたら、虫が目に入った。

風もあいまって片目から涙が止まらない。

束の間の感傷に浸る時間はおわりだ。

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