「あたたかな想いに、論理的な努力を。」〜食堂Ao.の若き店主が語る、夢の実現と店の魅力〜
飲食を軸に、夢を追いかける方にインタビューをする連載マガジン「ユメゴハン」。
今回お話を伺うのは、京都の有名料理店で大学生の頃から修行を積み、2023年12月に、千葉県の下総中山で「食堂Ao.」という夢だった自分の店をオープンさせた青山啓汰さん(29)。
啓汰さんは、インタビュアーである私が大学時代のアルバイト先でお世話になった方でもあります。
若くして飲食店を開業した啓汰さんが、どのように夢を叶えていったのか。
働く上で大切にしていることや、食堂Ao.にこめられた想いをお聞きしました。
夢を叶える一歩は、正しい努力の仕方を知ること
── 啓汰さんからは、20代とは思えない貫禄が感じられます。今まで、どういった経験をされてきたんですか?
大学生のときにあるアイドルが好きで、ファンが集うオフ会によく行っていたんよ。
実は行ってた理由の1つに、色んな人と話をしたかったからというのもあって。
将来人前に立ちたいと思っていたから、「知らない人たちと、どうすれば会話を持たせられるんだろう」と思って飛び込んでいったんよね。
同じアーティストが好きっていう共通点だけでは、絶対に会話は持たないし。
── 人と接することで、成長していったんですね。
そうやね。もし面白くない人と出会ったとしても、「この人面白くないな」で終わらせない。
「なんで面白くないのかな」ってところまで考えないと、成長しないから。
逆に、話が上手い人はどこにポイントがあるのかを考えていった。声の抑揚や、タイミングなどを分析していってたね。
── 経営者になるためには、話し方を研究した方がいいと?
経営者になるには、というか自分の夢の逆算の話かな。自分の店を出すにあたって、必要なことは全部やりたいと思ってた。
── 夢を逆算するために、何をすべきなのか細かく考えたり、紙に書いたりしていましたか?
高校の時からずっと、「夢ノート」っていうのを書き続けてた。日記みたいな感じで、文章を書いてたね。
「今日は何があった」「しんどい」とか、1行でも良いから書き続ける。
毎晩、今日あったことや思ったことを振り返ってたよ。
たとえ振り返りが1分で終わったとしても、365日できたら、1年で365分も振り返ったことになる。
そうすると、何も振り返らない人よりも必ず実を結ぶはず。
── 日々の小さな振り返りが、成長に繋がっていってたんですね。
そう。なぜなら、振り返ることで学びを曖昧にせず、自分の中で落とし込むことができるからね。
たとえば、お客さんに良くないタイミングで話しかけてしまったとき。
そのあと、反省するだけで終わらせないことが大事やね。
まず、なぜそのタイミングで突っ込んでしまったのかを考える。理由が思い浮かんだら、理由となる出来事がなぜ起こってしまったのかを考える。
そうやって、「なぜ」を繰り返していくことで問題の原因を噛み砕いていく感じかな。
「努力は人を裏切らないって言葉があるけど、考えてやらないと、普通に嘘つくよ」っていうダルビッシュ有さんの言葉があるんやけど。
自分はその言葉がとても好きで、いつも胸に留めてるよ。
── 正しい努力を積み重ねれば、夢が叶うということですね。
そうやね。いつか報われる日が来ると、僕は思ってる。
すべき行動を逆算をして、改善点はとことん掘り下げていく。啓汰さんは、論理的に突き詰めていくことで夢を叶えられていったようです。
「目の前の人を喜ばせたい」から、たくさんの笑顔と肯定を
── 料理人を目指した理由をお伺いしてもいいですか?
人に喜んでほしいっていう気持ちが多分1番大きいかな。
たとえば、僕ってめちゃくちゃ人のこと褒めたり、ボケたりするやん。
── はい。私は啓汰さんと働いたことがありますが、どんな小さなことでも褒めてくれたり、冗談が多かったり。いつも、場の空気を明るくしてくれますよね。
そういうのも、人が笑ってくれたらいいなっていう想いの延長線上やと思う。
小さい頃から、人に喜んでもらうのが好きやったんよね。
── 啓汰さんのポジティブな発想を、いつも尊敬しています。なにか心がけていることはありますか?
マイナスなことを言う人には、いいことなんか起こらへんって僕はずっと思ってて。
経営者として、もちろん改善してほしいことはスタッフにきちんと伝えないといけない。
だけど、必要以上にマイナスなことを言ったり、雰囲気を悪くさせたりしても誰も喜ばないよね。
強く言わなければならないときは、2人でいる時に話したらいい。
僕は、チームで働くなら全員でプラスの雰囲気を作っていった方が絶対に良いと思ってる。
散々嫌なこと言われて、ショボンとしたまま働いたって、良いパフォーマンスなんかできるわけないし。
だったら、少しでもいいところを見つけて、本人に伝えたい。自分で言ってても気持ちが良いしね。
「人に喜んでほしい」という気持ちから料理人を目指した啓汰さん。
夢を叶えてからも、周りの人を笑顔にしながら働かれています。
心を動かすために、頭で考える
── お客さんとの関わり方で、大切にしていることはありますか?
ずっと大事にしてるのは、お客さんの背景を考えること。
お客さんが入店してからじっと観察して、この人にはどういう背景があるんやろう、って1人ひとり考えるようにしてる。
たとえばスーツで来てたら、今日は仕事終わりで疲れてるのかな、飲みたい気分なのかな、とか。
女子2人で来てたら、すごく仲のいい友達でガッツリ飲む感じなのか、久しぶりに会ってゆっくり話す感じなのか、とかいろいろ予想できるよね。
── お客さんの背景によって、対応も変えているんですか?
そう。そこで提案するメニューも違ってくるし、接客の仕方も変わるよ。
── 1人1人に合わせたサービスをしていると。
うん。なぜなら、自分にしかできない仕事をしていきたいから。
近い将来、きっとAIにいろんな仕事が奪われてしまう。最近はファミリーレストランでも、ロボットが料理を運んでるやろ?
効率的で良いと思うけど、僕はしたくないし、そうじゃない方がいいと思ってる。やっぱり人が、飲食が好きやから。自分たちにしかできないことをやっていきたくて。
アルバイトの子たちにも、お客さんをしっかり見て、頭で考えようって伝えてるんよ。ボーッと立ってるだけじゃ、何も得られないからね。
美味しい料理を提供するだけでなく、人の気持ちを考えることや、人の心を動かすことを大切にしておられるんですね。
おでんとクラフトビールには、温度の高い想いを添えて
── 看板メニューをおでんにされた理由を教えてください。
あたたかい料理を出したいっていう想いがあった。温度じゃなくて、心があたたかくなって、ほっこりするような。
お出汁って、飲んだらほっこりするやろ?食べることでお客さんにホッとしてほしくて、おでんをメインにしたんよ。
あとは単純に、自分が大のおでん好きっていうのも理由の1つかな。
── なんとも、ハートフルな啓汰さんらしい理由ですね。
食堂Ao.ではクラフトビールにもこだわっていると思うのですが、その理由も教えていただけますか?
クラフトビールって、「自分のやりたいこと」をやってるビールなんよ。
こういうビール俺たち飲みたいよね、面白いよね、っていうのを考えて作られていて。
たとえば、普通のドライホップじゃなくて柚子を使ってみたり、お茶っぽく仕上げてみたり。
他にもラベルのデザインや、商品の全てにこだわりを詰め込んでる。魂がこもってるんよね。
── なるほど。クラフトビールは、啓汰さんのやりたいことと合致しているように感じます。
そうやね。さっき言ったように、僕は自分にしかできないことをやりたい。
クラフトビールも自分たちにしかできないことを体現してて、考え方が一緒やなと。
白米にもこだわってるんやけど、実は徳島に住む僕のおじいちゃんが作ったお米を提供してて。
僕は29年間食べてきて、本当に美味しいと思ってるし、作る苦労も1番わかってる。
そんなおじいちゃんのお米を届けたくて、洗い方と水の分量はめちゃくちゃこだわったね。
想いを込めたお米を、しっかり味わってほしいな。
お客さんの気持ちをあたたかくしたい。作り手さんの熱い想いを届けたい。
食堂Ao.では、料理の温度だけでなく、心の温度を大切にされているようです。
最後に
今回お話を聞いて、前向きに、かつロジカルに努力を重ねていくことが大切だと気付かされました。
そして、「好き」「届けたい」という想い。たくさんのあたたかい想いを大切にしながら、食堂Ao.は日々営業されています。
心も身体もホッとするお料理が食べられる、食堂Ao.。
行けばきっと、あなたの大切な居場所になるはずです。
ぜひ、啓汰さんともお話ししてみてくださいね。
インタビュー:朝川真帆、なこてん
執筆:朝川真帆
撮影:なこてん、朝川真帆
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