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「貧しさという渇き」

映画「渇水」をAmazonプライムビデオで鑑賞。河林満の同名原作小説を生田斗真主演で映画化。共演に門脇麦、磯村勇斗。

殺人的な暑さが続く真夏。群馬県前橋市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)は停水執行者としての職務を淡々とこなしていた。水道代を長期にわたり滞納した世帯の水道を止め、水道料金の督促を行う業務にある種の虚しさを感じつつも、岩切は生活のためだと割り切って連日の業務を粛々と請け負っていた。

「自分には流れを変えることはできない」と半ば諦観しつつ、嫁や子どもとの離別もあって自暴自棄にすらなっていた岩切だが、ネグレクトの母親を待ちつづけ、ぎりぎりの生活を送る姉妹との出逢いによって心が少しずつ潤い、人生との向き合い方が変わっていく。

月並みな表現が許されるなら、重苦しい作品である。映画では原作よりも姉妹の暮らしぶりによりフォーカスがあてられており、登場人物が絞られることで物語本来が持つメッセージが鋭利に突き刺さる。原作小説は1990年の刊行だが、貧しさへの静かな怒りは現代と通底するものがある。

原作では救いようのない運命が姉妹を待ち受けるが、映画ではほんのわずかだが希望の見える終わり方になっている。

原作のほうもぜひお読みいただきたい。


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