![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97675778/rectangle_large_type_2_ce283ad71d64758bdf08c9e91e5731c4.jpeg?width=800)
「リアルすぎる業界サスペンス」
新堂冬樹著「枕アイドル」読了。やさぐれた風俗嬢と10代にして天下を獲った女性アイドル。まったく異なる境遇で育った2人の人生をサスペンスフルに描く圧巻の小説。
弱小事務所の地下アイドルグループに所属する主人公・未瑠は、毎日のようにネットの掲示板に自分への誹謗中傷を書き込むアンチを見下しながら、オタクたちに偽りの笑顔を振りまいていた。
未瑠の野望はただひとつ。そう遠くないうちに薄汚れた地下アイドルの世界から抜け出し、トップアイドルとして芸能界の頂点に上り詰めること。その野望をかなえるべく、有名プロデューサーへの枕営業も辞さない未瑠に業界全体が注目し、やがて、彼女の圧倒的な支配力に誰もが牙を抜かれ、従順な奴隷へと成り下がっていく。
一方、幼い頃から父親の執拗な性暴力にさらされて育ち、身も心もやさぐれ、未瑠へのアンチコメントの投稿だけを生きがいとしているデリヘル嬢、樹里亜。
まるで接点のない、決して交わるはずのなかった2人の少女の人生のレールがある日、ほんの些細な1点により重なり合い、思わぬうねりを生み出していく……。
未瑠と樹里亜。2人の視点が交互に切り替わる形で、物語は進んでいく。枕営業の全容までもが細部に至るまで克明に描写されており、業界の闇がよりリアルに感じられる。誰もが知る大御所芸能人が実名に近い形で記されており、あたかも業界のルポルタージュを読んでいるかのような錯覚にとらわれてしまう(錯覚ではないかもしれない)。
樹里亜の描写も生々しい。風俗嬢としての仕事ぶりはもちろんのこと、実の父親による性暴力の描写も執拗なまでになされており、未瑠とはまた違った意味での痛々しさ、救いようのなさがある。
2人の人生がどのようにして重なり合い、彼女たちがどのような末路をたどるのか。
それは、実際に本を読んで確かめていただきたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?