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「少し不思議で、少し複雑」

辻村深月著『凍りのくじら』読了。『ツナグ』、『かがみの孤城』などで知られる直木賞作家・辻村深月が「ドラえもん」をモチーフにして綴る長編小説。

母親との微妙な距離感に思い悩み、元カレの執拗なつきまといにストレスを感じながら単調な日々を生きる芹沢理穂子を中心に、ストーリーは進んでいく。

国民的アニメ『ドラえもん』を下敷きにしているところに、作品の特徴はある。各章の表題には『ドラえもん』で実際に登場するひみつ道具の名前が使われており、ひみつ道具の特性に沿った物語が展開していく。

ただ、理穂子の人生には『ドラえもん』のような救いは訪れないし、牧歌的な人間関係によって心が癒されることもない。物語の終盤にかけてはどんどんシリアスな展開になっていくし、理穂子やその周囲が痛めつけられていくストーリーには胸が苦しくなってしまう。

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