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「ナベプロという虚像」

戸部田誠著「芸能界誕生」(新潮新書)読了。1940年代、戦後間もない時代から80年代、90年代まで、日本の芸能界の黎明期について詳細に綴った渾身のルポルタージュ。

戦後すぐの芸能界を中心に描くということで、前半は渡辺プロダクション(ナベプロ)の興亡がメインになっている。クレイジーキャッツ、坂本九のブレイク前夜のエピソードはもちろんのこと、GHQ総司令官・マッカーサーとの水面下での攻防は鬼気迫るものがあり、読んでいてワクワクするものがあった。

戦後の娯楽を守り抜くために、これほどまでに壮絶な闘いがあったとは!

中盤以降はアイドル黄金期に話が移り、松田聖子、中森明菜といったスターたちが活き活きと活写される。

昭和、平成、令和……いつの時代にも、その裏には「ナベプロ」という巨大な影が存在する。バンド、GS、アイドル、お笑い芸人と、時代によって軸足は変わっているとしてもナベプロが芸能界の主軸を握る巨像であり、虚像であることに変わりはない。

芸能界の裏側を深く描いた新書としては、「松田聖子の誕生」もおすすめである。


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