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予想どおりに不合理

人間の「不合理」を理解すれば、人生も仕事も思い通り!

行動経済学ブームに火をつけたベストセラーが、ついに新装版で登場!

「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」
「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」
「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」――。

人間は、どこまでも滑稽で「不合理」。

しかし、そんな人間の行動を「予想」することができれば、長続きしなかったダイエットに成功するかもしれないし、次なる大ヒット商品を生み出せるかもしれない!

本書では、人間心理の奥底に潜む「不合理」なメカニズムを解き明かし、ビジネスや日常生活での成功に役立つヒントを満載。

今すぐ本書を読んで、人間の「不合理」をあなたの武器にしましょう!

3分で読める本要約(管理人)





・相対性の真相

次の選択肢のどれを選ぶだろうか?
①ウェブ版だけの購読(600円)
②印刷版だけの購読(1200円)
③ウェブ版と印刷版のセット購読(1200円)

実験結果は以下の通り。
①ウェブ版だけの購読(600円)→16人
②印刷版だけの購読(1200円)→0人
③ウェブ版と印刷版のセット購読(1200円)→84人

では、②を外すとどうなるだろうか?

①ウェブ版だけの購読(600円)→68人(+52人)
③ウェブ版と印刷版のセット購読(1200円)→32人(-52人)
マーケティング担当者は、ウェブ版と印刷版のどちらかにするかわたしたちが決められないことを知っていた。
そして選択肢を3つにすれば、印刷版とウェブ版のセットを選ぶだろうと踏んだのだ。

相対性は人生における決断を助けてくれる。
けれども、わたしたちをとんでもなく惨めな気持ちにさせることもある。
それは、嫉妬やひがみは、自分と他人の境遇を比べるところから生じるからだ。
例えば、ある経営者にこんな質問をした。
「社員の給与データベースの情報が会社中に知れ渡ったら、どうなると思いますか?」
「それこそ大惨事でしょうね。一番の高給取り以外は、みんな自分の給料が安すぎると感じると思います。そして退職して他の勤め先を探すでしょう。」
おかしな話ではないか。
研究によれば、「もっとも幸福な」人々が住んでいるのは、個人所得が最も高い国ではないこともわかっているのに、わたしたちは、より高い給料を求めてやまない。
そのほとんどは単なる嫉妬のせいだ。
ニューヨーク・タイムズ紙の見出しによれば「ウェブの世界はいまや金持ちが大金持ちに嫉妬する時代」だ。

この相対性の問題をなんとかできないだろうか。
解決方法は、自分の人生と比較する周りの輪を大きくするのではなく、小さくすればいい。

あるお金持ちの経営者は、ポルシェのボクスターを売って、かわりにプリウスを買った。
理由を聞かれると、「ボクスターの生活を送りたいとは思いません。だって、ボクスターを手に入れたら、つぎは911に乗りたくなりますからね。その911を持っている人たちが何に乗りたがっているとおもいます?フェラーリですよ。」
これは、わたしたちみんなが活用できる教訓だ。
人は持てば持つほどいっそう欲しくなる。
唯一の解決さくは、相対性の連鎖を断つことだ。


・アンカリング

私たちは実生活であらゆる商品の価格を目にしている。
だが、値札そのものがアンカーとは限らない。

値札の価格は、私たちが商品やサービスをその価格で買おうと思ったとき、初めてアンカーになる。
これが地面に打ち込まれた杭となって、これから先ずっと、別のテレビを買うにしても、友達とテレビが話題にのぼるにしても、あらゆる高品位液晶テレビは、この価格との比較で判断される。
これらをわかった以上、最初の決断がどのような過程を経て長期の習慣に変わるのかを理解することが重要になる。

この過程を具体的に説明するために、つぎの例を考えてみたい。
初めてスターバックスに行った時のことを思い出してもらいたい。
メニューを見るとコーヒーはぎょっとするほど高かった。
何年も飲みつけているドトールコーヒーとは比べ物にならない値段だ。
それでも、もう店内に入ってしまったことだし、試しに小さいサイズのコーヒーを注文する。
そして、その味と効果を存分に堪能して店をあとにする。
翌週、あなたはまたスターバックスの前を通りがかる。
立ち寄ろうか?
理想的な意思決定をするには、コーヒーの品質(スターバックス対ドトールコーヒー)、コーヒーの価格、もう数百メートル歩いてドトールコーヒーまで行く手間を考慮すべきだろう。
ただし、これは複雑な計算になる。
そこで、簡単な決定方法に頼る。
「前にもスターバックスで気持ちよくコーヒーを楽しんだのだから、これは私にとっていい決断に違いない」というわけで、店に入ってまた小さいサイズのコーヒーを注文する。
こうして、いつのまにかスターバックスでコーヒーを買うのが習慣になっている。
ところが話はここで終わらない。
コーヒーに高いお金を出すことに慣れ、新しい消費曲線に自らを押し上げた今、あなたは他の変化にももっと寛容になっている。
200円の小サイズから、300円の中サイズや、400円の大サイズにレベルアップするかもしれない。
もしここでちょっと立ちどまって、ほんとうにドトールコーヒーの倍以上のの値段もするスターバックスのコーヒーにこれだけ出費するべきなのだろうかと考えればいいのだが、もうあなたはこんなことをあれこれ考慮したりはしない。
コーヒーの価格はスターバックスのコーヒーが「アンカリング」となったのだ。

しかし、この話にはおかしなところがある。
アンカリングが最初の決断に基いているというなら、そもそもスターバックスはどうやって最初の決断になりえたのだろう。
私たちがそれ以前にドトールコーヒーの値段にアンカリングされていたのなら、どんな仕組みでアンカーがスターバックスに移ったのだろう。
スターバックスの戦略は価格ではなく、スターバックスを他のコーヒーショップとは一線を画する店にすることに力を注いだ。
つまり、入店の経験が他とは違ったものになるように、できることをすべてやった。
結果、ドトールコーヒーの価格をアンカーに使わずに、かわりにスターバックスが用意した新しいアンカーをすんなり受け入れるように全力を尽くしたのだ。

これらの事実を理解すれば、不合理な行動は改善できる。
例えば、最新型の携帯電話なり、400円のコーヒーなりを買おうと思っているとする。
つぎに、この習慣からどれだけの満足を得られるか自問してみる。
携帯電話なら、最新型よりひとつ前の機種にして出費を抑え、浮いたお金を他のことに回してはどうだろう。
コーヒーなら、今日はどのブレンドにしようかと考えるかわりに、そもそも高価なコーヒーを毎日飲む習慣を続けていいのかと自問すべきだ。
最初の決断の持つ力(アンカリング)は、その後何年にもわたって未来の決断に影響を与えるほど長くあとを引くこともあるので、最初の決断は極めて重要であり、十分な注意を払うべきだ。


・無料の力

無料の品物を手に入れるのが理にかなっている場合は多い。
たとえば、デパートのワゴンに無料のスポーツ靴下が積まれていたら、つかめるだけつかんだところで何も損になることはない。
重大な問題が生じるのは、無料のために、無料の品物とそうでない品物の板挟みになるときだ。

この葛藤に陥ると無料のせいでまずい決断をしてしまう。
たとえば、靴下を買いにスポーツ店へ行くとする。
欲しいのはかかとが二重になっていて、つま先に補強のある靴下だ。
ところが買うつもりだった靴下ではなく、もっと安い靴下を買ってしまった。
なぜだろう。
気に入ったわけではないが、二足組で二足目が無料だったからだ。
これは無料につられて、いいほうの買い物を放棄し、自分の欲しかったものとは違うものを選んでしまった例だ。

この結論は他の実験にも同じようにあてはまった。
そのひとつは、アポロのチョコを2円、1円、0円と変え、同じようにゴディバのチョコの値段を27円、26円、25円と変えておこなった実験だ。
この実験では、アポロのチョコを2円から1円に値下げし、ゴディバのチョコを27円から26円に値下げした場合も、それぞれの買い手の割合に違いは見られなかった。
しかし、アポロのチョコを値下げして無料にしたとたん、お客は圧倒的にアポロのチョコを欲しがったのだった。

無料となるとなぜ不合理にも飛びつきたくなるのか。
私の考える答えはこうだ。
たいていの商取引には良い面と悪い面があるが、何かが無料になると、私たちは悪い面を忘れさり、無料であることに感動して、提供されているものを実際よりもずっと価値のあるものと思ってしまう。
なぜだろう。
それは、人間が失うことを本質的に恐れるからではないかと思う。
無料のものを選べば、目に見えて何かを失う心配はない(何しろ無料なのだ)。

本章の実験からわかったのは、何かが無料だと、私たちは誰でもちょっとばかり興奮しすぎること、そしてその結果、最善の利益をもたらす決定とは別の決定をくだす場合があることだ。


・社会規範と市場規範

私たちは二つの異なる世界、社会規範が優勢な世界と、市場規範が規則を作る世界に同時に生きている。

社会規範には、友達同士の頼みごとが含まれる。
ちょうど他人のためにドアを開けるようなものだ。
どちらもいい気分になり、すぐにお返しをする必要もない。

二つ目の世界、市場規範に支配された世界は全く違う。
賃金、価格、利息、賃貸料、などやりとりにはシビアだ。

ある実験を行った。
この実験では実験協力者がお金で労働出産量がどのように変化するか調査した。
グループ①は参加料として500円を受け取った。
グループ②は参加料として50円を受け取った。
グループ③にはお金の話を一切せず、社会的な頼みごととしてお願いした。

どのグループがどれだけ熱心に課題をこなしただろう。
グループ①は平均159個
グループ②は平均101個
グループ③は平均168個
つまり、実験協力者たちは、全能の力を持つお金(500円だが)のためより、お金の絡まない社会規範のもとで熱心に働いたと言える。
市場規範では無意識的に貰ったお金の多寡によって行動が変わる。

では、お金のかわりにプレゼントを渡したらどうだろう。
グループ①は参加料として500円相当のプレゼント
グループ②は参加料として50円相当のプレゼント
グループ③にはプレゼントの話を一切せず、社会的な頼みごととしてお願いした。

結果は、3グループとも結果におおきな違いはなかった。
つまり明確な金額が不明なプレゼントは「社会規範」として捉えられるのだ。
ちなみに、金額を明確にしてプレゼントを渡すと、「市場規範」となる。

これらを踏まえると、家族や友達にはお金を渡してはならない。
なぜなら、関係性が社会規範から市場規範に変わる。そして一度、市場規範に変わると社会規範へ変わるのは非常に難しい。
渡すなら金額を隠したプレゼントがいいだろう。


・先延ばしの問題と自制心

なぜ人は先延ばしにするのか。

原因は「感情」にある。

たとえば、お金を貯めようと誓うとき、私たちは「冷静」な状態にある。
運動をして食事にも注意しようと誓うときも、やはり「冷静」な状態の時だ。
しかし、そのあと「熱い感情」の溶岩流が押し寄せてくる。
どうしても欲しい新しい車や服が目に入る。
運動しようと計画した矢先に、一日中テレビの前で座っている理由が見つかる。
目先の満足のために長期目標を諦めること、それが先延ばしだ。

ではどうすればいいのか。
私たちは目先の満足と後々の満足にかかわる自尊心の問題を抱えている。
それは間違いない。
しかし、私たちが直面するどの問題にも潜在的な自制の仕組みがある。
給料が貯金できないなら、銀行の自動積立制度を利用してもいい。
一人で規則正しい運動を続ける気になれないなら、友人と一緒に運動する約束を取り付けてもいい。
このように事前に決意表明するためのツールは存在し、自分がなりたい自分になるのを助けてくれる場合がある。


・高価な所有意識

人は自分の持っているものをなぜ他人よりも評価するのだろう。
これは人間性の中にある三つの不合理な奇癖のせいだ。

①自分がすでに持っているものに惚れこんでしまう。
たとえば、あなたはワーゲンバスを売ると決めたとしよう。
するとワーゲンバスで行った旅行のことを思い出し始める。

②手に入るかもしれないものではなく、失うかもしれないものに注目してしまう。
車を売ったお金で他の物を買えることよりも、ワーゲンバスに乗れなくなる方に注目する。

③他の人が取引を見る視点も自分と同じだと思い込んでしまうことだ。
だが、残念ながらワーゲンバスを買う側は、むしろあなたが一速から二速にギアを上げたときマフラーから煙が出たことの方に気づくだろう。

そしてこれらは、実際に何かを所有する前に、それに対して所有意識を持ち始める場合もある。
たとえば、腕時計の購入を考えるときを思い出してみよう。
あなたは洗礼された腕時計を自分が腕にはめているところを思い浮かべ、人に褒められているところを想像する。
ここまで想像すると、腕時計を「買わないということ」は、腕時計を「失う」ことと同じような心理的な苦痛となる。
「仮想の所有者意識」が広告業界の推進力の一つになっているのは言うまでもない。

所有意識という病を完全に治す方法はない。
なぜなら、所有者意識は私たちの生活に織り込まれている。
だが、そうと気づくことは助けになるかもしれない。

どこを向いても、もっと大きい家や、高級車や、新しい電化製品を買うことで生活の質を向上できる魅力に溢れている。
しかし、いったん所有物を変えてしまうと、並大抵のことでは元に戻せない。
たとえば、もっと小さい家に格下げするのは損失と感じ、心理的な苦痛となる。
そして、そのような損失を避けるためならどんな犠牲を払ってもいいと考える。
この場合、たとえ月々の住宅ローンのために沈没することになってもいいと考える。

私が個人的にやっているのは、どんな取引も、あえて自分と目的の品物の間にある程度の距離を置いて、できるだけ「自分が非所有者」であるかのように考える方法だ。


『まとめ』

私たちは「予想通りに不合理」だ。

つまり、不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される。

この不合理性を理解することは、毎日の行動と決断に役立ち、わたしたちを取り巻く状況や、そこで示される選択肢がどのように作られているかを理解するうえでも重要になる。


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