マインドセット
・マインドセットとは何か
自分の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人、「硬直マインドセット」の人は、自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない。
知能も、人間資質も、徳性も一定で変化しえないものだとしたら、とりあえず、人間としてまともであることを示したい。
このような基本的な特性に欠陥があるなんて、自分でも思いたくないし、人からも思われたくない。
失敗せずに上手くできるだろうか、賢そうに見えるだろうか、認めてもらえるだろうか、勝ち組でいられるだろうか、といつもビクビクしている。
それとは違った心の持ちようもある。
それこそが、しなやかな心の持ち方、「しなやかマインドセット」である。
その根底にあるのは、人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができるという信念だ。
思い通りにいかなくても、いや、上手くいかないときにこそ、粘り強い頑張りを見せるのが「しなやかマインドセット」の特徴だ。
●硬直マインドセット→自分が他人からどう評価されるかを気にする。
●しなやかマインドセット→自分を向上させることに関心を向ける。
次のような場面を想像して欲しい。
外国語を習おうと決心し、ある講座を受講し始めた。
あるレッスンで教室の前に呼ばれ、講師の先生から次々と質問を浴びせられる。
①硬直マインドセットの人
みなの視線が自分に集まるのを感じる。
自分の能力が評価されていると考える。
緊張が高まり、自尊心が危機にさらされて動揺する。
②しなやかマインドセットの人
自分は初心者で、だからここに学びに来ている。
そして、学ぼうとするあなたに力を貸してくれるのが先生なのだと考える。
・能力と実績のウソほんと
教育心理学者は、さまざまなずば抜けた実績を持つ人を調査した。
それによると、その大多数が幼少時には凡庸な子で、本格的な訓練を受けるようになるまで、際立った才能は見られなかったという。
思春期初期の段階でもまだ、将来の成功を予見するのは難しかった。
さまざまなな人々に支えられながら、たゆみない努力と精進を重ねて初めて、頂点にまで上りつめることができたのである。
教育心理学者はこう結んでいる。
「学校教育について、40年間にわたる綿密な調査を行った結果、まず第一にわかったのは、学習できる環境がある限り、世界中のほとんど誰でも能力を伸ばすことが可能だということである」。
この中には、重症の障害を持つ2~3%の子供と、何もしなくてもできてしまうような1~2%の子供は含まれていない。
つまりこういうことだ。
訓練をほとんど、あるいは全く受けていなくてもできてしまう人もいるが、だからといって、それ以外の人は訓練を受けてもできないという訳ではない(場合により、元々できた人よりもはるかにうまく出来るようになる)。
憧れの人物を思い浮かべてみよう。
その人は、ほとんど努力せずに、何でもできてしまう、驚異的な能力の持ち主だと思っていないだろうか。
実際はどうか?
その業績の陰にとてつもない努力があったことを知ろう。
そして、その人をいっそう素晴らしいと感じよう。
・ビジネス マインドセット
研究者は、企業を良好から偉大へと飛躍させる要素は何だろうと研究した。
重要な要素がいくつか挙げられるが、絶対的に重要なのは、どのケースにおいても企業を率いる指導者のタイプであることが判明した。
偉大な企業への飛躍をもたらした指導者たちは、我が強くて自分を売り込みたがる派手なカリスマ的人物ではなかった。
謙虚で控えめで、たえず答えを探して問い続け、その答えがどんな厳しいものであっても直視できる人たちだった。
失敗を、それが自分の失敗であっても、真正面から受け止めつつ、その一方で、最後には必ず成功するという確信を失わない人たちだったのである。
このような指導者は、自分が人より優れていることを証明しようと躍起になったりしない。
トップの座についても、社員たちの努力の成果を自分の功績にしたりしないし、人をけなすことで権力を感じようともしない。
そんなことよりも、常に向上することを心がけている。
ある成功しているCEOの言葉。
「私は一人称を使いたくない。私がこれまでの人生で成し遂げてきたことのほとんどは、周りの人たちとの共同作業だからである。」
硬直マインドセットの指導者は、何かにつけて自分の優位性を確認しないと気がすまず、会社はそのための舞台にすぎない。
付け加えるならば、このような天才経営者みずからが優秀な経営陣を嫌う。
硬直マインドセットの人は、自分だけが突出した存在でいたい。
周囲の人と比較して自分の方が上だと思えないと気がすまない。
・対人関係 マインドセット
対人関係で上手くいかない場合のそれぞれの考え方。
硬直マインドセットの人は、「自分の資質」は変えようがない、「相手の資質」も変えようがない、「人間関係の質」も変えようがないと信じている。
しなやかマインドセットの人は、その3つとも良い方向に変えていけると信じている。
自分も成長するし、相手も成長するし、お互いの関係も改善できると。
・教育 マインドセット
子どもはそのメッセージから、自分がどのように思われているかを感じ取る。
「おまえの資質はもう変えようがない。」という硬直したメッセージの場合もあれば、「あなたはこれからどんどん伸びていく人間。」という、しなやかなメッセージの場合もある。
成功したときにどんな言葉をかけるか?
次の言葉に潜むメッセージを聞き取って欲しい。
「そんなに早く覚えられたなんて、あなたはほんとに頭がいいのね。」
→早く覚えられなければ、頭が良くないんだ。
「あなたは凄いわ。勉強しなくてもAが取れたんだから。」
→勉強しないほうが良い。さもないと、凄いと思ってもらえない。
頭の良し悪しや才能の有無にこだわるのは、硬直マインドセットの子。
裏を返せば、挫折しやすい子ではないだろうか。
親がいつもそういうことを口にしていると、子供はますますそれに取りつかれてしまう。
頭の良さを褒めると、学習意欲が損なわれ、ひいては成績も低下したのである。
成功するのは賢いからだとすれば、失敗するのは頭が悪いせい、という硬直マインドセットに縛られてしまうからだ。
しなやかな観点に立った褒め方はいくらでもある。
上手い方法で粘り強く勉強や練習を重ねて何かを成し遂げたことを褒めればいい。
また、問いかけの仕方を工夫すれば、子供の努力や選択を評価する気持ちを伝えることができる。
「今日はずいぶん長い時間、一生懸命に宿題やってたな。集中して終わらせることができて偉いぞ。」
「この絵、綺麗な色をとてもたくさん使って描いたのね。色の使い方のことを話してくれるかな?」
「心をこめて弾いてくれて、ほんとうに嬉しいわ。ピアノを弾いているときってどんな気分?」
多くの研究の結果、「褒めるときは子ども自身の特性をではなく、努力して成し遂げたことを褒めるべきだ。」という結論に達している。
失敗したときにどんな言葉をかけるか?
9歳のエリザベスは、初めての体操競技会に出場した。
なかなか素晴らしい演技だったが、入賞を逃してしまった。
エリザベスはすっかり落ち込んでしまった。
しなやかマインドセットの父親はエリザベスにこう言ったのだ。
「エリザベス、気持ちはわかるよ。入賞目指して思いっきり演技したのにダメだったんだから、そりゃ悔しいよな。でも、お前にはまだ、それだけの力がなかったんだ。あそこには、お前よりも長く体操をやってる子や、もっと懸命に頑張ってきた子が大勢いたんだ。本気で勝ちたいと思うなら、それに向かって本気で努力しなくちゃな。」
父親は更に、楽しむだけに体操をやりたいのなら、それはそれで構わないが、競技会でみんなよりも優れた成績を取りたいなら、もっと頑張る必要がある、ということもエリザベスに言って聞かせた。
つまり、父親は、娘に本当のことを告げただけでなく、失敗から何を学ぶべきか、将来成功を勝ち取るには何かをしなくてはならないか、ということも教えたのである。
『まとめ』
人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができる。
しなやかマインドセットとは、自分を向上させることに関心を向ける。
硬直マインドセットとは、自分が他人からどう評価されるかを気にする。
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