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いつまでも再発するがんと呼ばれて

昨日は精神科の受診と、乳腺外科の受診日。

書きたいことが沢山あって、今日は乳腺外科の話から書きたいと思う。

私が〝乳がん〟の告知を受けたのは2018年の11月の終わり。

そして右乳房の全摘除術を行なったのは、翌年2019年の2月。

3月に病理結果が分かり、がん細胞の詳しいグレードが判明。

私のがん細胞は、組織学的分類のグレードが〝2〟核分類のグレードが〝3〟であった。

グレードは〝1〜3〟まであり〝3〟が一番悪いとされている。

『一番悪い』はイコール『再発する率が一番高い』というわけだ。

転移はなく喜んだのも束の間、正直この結果を聞いた瞬間、『これはいつかまた必ず再発するな…』と心の中で思ったのを覚えている。

再発・転移の抑制のため、それからすぐにホルモン治療が始まった。

全摘術を受けて今年で丸2年。

来年になれば丸3年が経過。
4年目に突入する。

そんな中、昨日行った血液検査の腫瘍マーカーは〝異常なし〟。

ホッとするのと同時に、担当の部長先生からこんな言葉が。

「体調どう?最近なんかあった?」

「んー悪くはないですけど…」

と答える私。

どうやら炎症反応の数値〝CRP〟が4.39と高値(基準値は0.25以下)らしい。

「熱出たりしなかった?」

「ワクチン打って高熱は出ましたけど…。でもそれって先月上旬の話しですが…」

「ん〜〜それかなぁ〜。まぁ外科的には特に問題ないんだけどね〜。まぁ様子見にしようか」

採血のたび、この〝CRP〟はいつも少し高く、結果値の横に「H」の文字が常にあった。

今回はいつもより少し高めで、医師もちょっと気になったようだ。

私は〝CRP〟が高めの体質なのか?
てか、そんな体質あるのか?
わからないけど…。

まぁでも普通に元気だし、病院玄関での体温計測も35.8℃と低めだったし。
気にしないことにした。

もしこれが先月のワクチン接種の影響だとしたら、それはそれで少し怖い気もするが…。
どれほど私の体が反応を続けているのかと…。

乳腺外科の次回3ヶ月後の定期受診は、1年に1回の総点検にあたる。

再発・転移がないか体の隅々まで調べる。

検査は全部で7種類。

乳腺エコー、骨シンチ、骨塩定量、腹部エコー、胸部CT、採血、そして健側乳房のマンモグラフィーである。

それらを2回に分けて受けて、さらに結果を聞くため先生の診察を受けるので、2週間の間に合計3回も病院に行かなければならない。

検査も痛いのとかあるし、時間もかかるし、結構大変なのだが、しっかり見てもらわないといけないのでこればかりは我慢するしかない。

なんといっても、今回の採血結果もそうなのだが、結果を聞く時の緊張感はなんとも言えないぐらいイヤな瞬間である。

で。

昨日の診察で先生が最後にサラッとこう言ったのだ。

「ではそんな感じで。10年は見ていきましょうね」

「…10年???10年ですか?」

今考えると不思議なのだが、私は勝手にこの術後のフォロー期間は5年だと思っていたみたいだ。

落ち着いて考えてみると、医師は〝5年で寛解〟とは私に一言も言っていない。

何故だかわからないが、勝手に『5年経てば大丈夫だろう』と自分の中で思っていた節があり、10年と聞いた瞬間『え?!』となったのだった。

「胃ガンや大腸ガンは5年とされていますけど、乳ガンは10年見たほうが良いですからね」

驚く私に先生は優しくそう話した。

家に帰り、調べなくてもいいものを、スマホでついつい調べる私。

すると医師が言っていたとおりの内容が書かれてあるのをすぐに見つけた。

日本人のがんのイメージはかつて最も多くの死者を出していた胃がんを通して形成されてきた。
がんは治療後、5年を経過して再発しなければ治癒したと見なす「5年生存率」重視の姿勢はその象徴といえるだろう。
確かに、胃がんや大腸がんでは5年を経過すると再発、死亡する患者は稀になる。
しかし、ある種のがんでは5年を経過しても、再発死亡する患者が出る。
今回、全がん協のデータをもとに初めて集計、公表された「部位別10年相対生存率」を見ると、5年を過ぎても再発するかどうかはがんの部位によって大きく異なることが改めて明らかになった。
臨床現場の実感がデータで裏付けられた格好だ。

※日経メディカル Oncology Cancer Review より

恐る恐る続きを読む。

10年生存率の違いに加え、5年生存率と10年生存率の違いにもそのがんの特徴が示されると同研究班は指摘する。
例えば胃がん、大腸がんなどの消化器がんでは5年を超えると生存率は大きく低下しない。
つまり、巷間いわれているように5年を治癒の目安とすることができるがんだ。
しかし乳がんでは5年を経過しても再発し、死亡する患者が多い。
研究班のおひとり(某がんセンター・がん予防センター疫学研究部)は、乳がんを「いつまでも再発するがん」と呼ぶ。

※日経メディカル Oncology Cancer Review より(一部割愛・お名前は匿名としています)

〝いつまでも再発するがん〟…。

その言葉を見て、ほんの少し頭をジャブされたような気になる。

なんて嫌なネーミングだろう。

10年どころか、その先もずっと再発に怯えながら生きていかないといけないというわけか。

ここのところ、心の健康を取り戻すことだけに集中してきたように思う。

しかし、乳がんの再発は術後2〜3年以内に起こることが最も多いと言われているので、考えてみれば2019年に手術した私は、今まさに再発の可能性が最も高いとされている時期にいるんだということを、改めて突き付けられたようでハッとしたのだった。

毎年12月に米国でサンアントニオ乳がんシンポジウムが開催されます。
2010年にも第33回目が開催され乳がんの生存率についての画期的な報告がありました。
報告者は世界一のがん治療センターといわれる米国のテキサス大学MDアンダーソンがんセンター乳腺腫瘍学のBuzdar教授です。
その内容は、同センターで過去60年間の5万6,864例の乳がん患者記録を調査した結果、全体として乳がん生存率が劇的に改善されたとのことでした。

その理由として、早期乳がんならびに局所進行乳がんともにその再発リスクが減少したことが挙げられています。これは、乳がんの治療選択肢が増えたことにあります。

さらに注目すべき点は、転移再発乳がん患者さんの長期生存がかなり増えていることです。
例えば、1944〜1954年の10年間では転移再発乳がん女性の10年生存率はわずか3.3%でしたが、85〜94年の間では11.2%、95〜2004年では22.2%に上昇しています。
20年以上前では一度転移再発した乳がんは助からないのが現実でしたが、最近では治療法さえ合えば転移再発を来たしても10年以上さらにはそれ以上の生存が可能になったということです。

※認定NPO法人 J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)より

このような嬉しい報告もあり、少し安堵。

また、このような興味深い内容のものも。

乳がんは、日本人女性の20人に1人が生涯に一度はかかる、女性の罹患率トップのがんです。

早期発見ができ、良い治療法もあるので、乳がんが分かった後の生存率は他のがんより優れています。
乳がんになったからといって死ぬことは、現在ではあまりなくなっているといえるでしょう。
他のがんと同じく、進行していれば死亡率は高くなりますが、進行がんであっても適切に治療を受ければかなりの効果を期待できます。

ただ、高齢化や食生活の欧米化といった要因が絡まって、乳がんにかかる人の割合は年々増えており、それに伴って乳がんによる死亡数も増えています。

良い治療法があるにもかかわらず、なぜ死亡数が増えているのでしょうか。

それは、乳がんの場合、再発の可能性が高いからです。
肺がんなど他のがんでは、治療終了後5年、10年とたっても再発がなければ、しばらくはある程度がんのことを忘れて暮らせます。
ですが、乳がんは治療が終わってから10年、20年がたっても再発することがあるのです。
再発部位は骨や肺、リンパ節が多くなっています。

なぜ、これほど時間がたっても再発するのか。
その理由が「がん幹細胞」の存在にあるのではないかということが近年、分かってきました。

従来、がんは正常な細胞のDNAに傷が入ることで悪いがん細胞に変質し、その後、異常なスピードで増殖していく病気だと考えられてきました。
増えた細胞がさらに増殖していくという、ハエの増え方と同じイメージです。
従来の抗がん薬は、このようにどんどん増殖する細胞を死滅させる目的で開発されていました。

しかし、近年の研究の進展で、いわゆる「幹細胞」というものががん組織にもあることが分かってきました。
幹細胞というと、全ての組織細胞を作り出せる力(万能性)を持ったiPS細胞やES細胞を思い起こす人も多いでしょう。
単なる「幹細胞」にはそこまでの万能性はないのですが、体の中には脳神経や血液細胞、乳腺の細胞といった特定の組織にしかならない「組織幹細胞」があることが明らかになったのです。

組織幹細胞は、自分で増えるだけでなく分化すること(違う性質を持つこと)もできます。
幹細胞が分裂して2つの細胞(娘細胞)になると、1つは母細胞と同じ多能性を持った幹細胞に、もう1つは組織を作るのに適した細胞になるのです。
この性質は、がん細胞になった場合もある程度保たれます。
そうしたことがここ10年ほどの研究で次々に分かってきました。

現在では、がん化した組織幹細胞ががんの成り立ちに関わっているという考え方が主流になっています。
通常の組織幹細胞は、幹細胞の増殖などを支援する細胞(ニッチ細胞)を積極的に呼び寄せませんが、がん幹細胞は他の組織や体全体のことを考えずにニッチ細胞を呼び寄せ、操り、分化した娘細胞を増やせる環境を整えるという考え方です。

がん幹細胞自体にはそれほど増える力はありませんが、娘細胞は非常に良く増えます。
そういう面では、先に挙げたハエの例えよりはハチの増殖に近いでしょう。
がん幹細胞が女王蜂、娘細胞が働き蜂といったイメージです。

こうしたがん組織に従来型の放射線治療を行った場合、娘細胞から増えた働き蜂のような細胞だけが死滅して、悪の親玉であるがん幹細胞は生き残ることがあるようなのです。

がん治療を生き伸びた幹細胞は“冬眠”に入ります。
乳がんの場合は冬眠期間が特に長いようですが、DNAに新たな傷が入ると目覚めて、再活性します。
よみがえった幹細胞はまたニッチ細胞を呼び寄せ、娘細胞を増やしてがん組織を作っていきます。
これが、がん再発の実態ではないかということが、最近分かってきました。

ここでカギとなるのが、ニッチ細胞の存在です。
がん幹細胞は、自分が生存・分裂するために周囲にさまざまなタンパク質を放出し、周辺の細胞を自分に都合が良いように呼び寄せ、操り、自分が体の中にすみつける環境を整えます。

ニッチ細胞はこの操られる側の細胞のことで、新しく血管を作る細胞、免疫を押さえ込む細胞、がん細胞の隙間を埋める間質細胞、娘細胞など、さまざまな細胞が含まれます。

操られる存在ではありますが、ニッチ細胞なくしてがん幹細胞は体にすみつくことができません。
つまり、従来の抗がん薬や放射線治療ではやっつけにくかったがん幹細胞の弱みが、ここにあることがようやく分かってきたのです。

がん幹細胞、あるいはニッチ細胞をターゲットにした治療ができるようになれば、がん再発の不安はなくなります。
今、そうした治療法の開発に向けた研究が世界中で始められているところです。

※JCA日本癌学会/第23回市民公開講座より

こちらは2014年に石川県で行われた日本癌学会市民公開講座内での、後藤典子先生(金沢大学がん進展制御研究所分子病態研究分野教授)による講演内容。

この講演からもう7年の時が経過しており、このがん幹細胞やニッチ細胞の研究がどれだけ進んでいるのか、あるいは進んでいないのかは不明ではあるが、私がこの先10年、20年生き続けた先には、今よりもさらに治療法の選択肢が増えていることは間違いないであろう。

〝いつまでも再発するがん〟は、いつの日か〝再発しにくいがん〟となり得るのだろうか。

そんな日を期待しつつ、キチンと定期検査を受けながら、とにかくストレスをためない日々、〝楽しく〟〝明るく〟〝優しく〟…そんな毎日を心掛けながら、心身共に健康で生き続けたい。

来年も、再来年も、もっともっと先の人生も。





最後までお読みいただき有難うございました♪

ではまた。        Tomoka (❛ ∇ ❛✿)

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