「その女、ジルバ」でまた泣く

東海テレビ・フジテレビ系で毎週土曜日に放送されているドラマ「その女、ジルバ」。
(※一部ネタバレ内容含みます)

有間しのぶさんによる漫画が原作。
脚本は「Dr.コトー診療所」シリーズの吉田紀子さん。

【原作者・有間しのぶさんのコメント】
あちこちでお話ししたことですが、「その女、ジルバ」は連載開始から終了まで、本当にたくさんの方に支えていただいた幸福な作品でした。
それが今回は憧れの脚本家吉田紀子さんのシナリオで、大好きな女優さん俳優さんが目白押しで出演のドラマになるとは、まだふわふわして信じられない思いです。
マンガの連載中に色々な方に取材し、また寄せられたご感想を読んで痛感したのは、世の中にはなんて多くの人が「あんまり報われないけれど、自分は自分に正直にやっていく」と肚をくくっているんだろうということでした。
声高でもなく、本人は手柄とも思わず。
でもその矜持の美しさに、心の中で頭をさげることが多くありました。
このドラマは、そうした想いをなにより大切に、手の中に包みこんでくれています。
きっととても素敵なドラマになると、私が一番楽しみにしています。
ご一緒にご覧頂けましたら幸いです。
(※東海テレビ番組HPより)

主演は池脇千鶴さん。
ご自身も39歳という年齢だそうで、等身大の主人公・新(アララ)を演じている。

【ストーリー】
うまくいかない現状やその先の老後…30代後半に差し掛かる頃に、多くの女性が感じ始める様々な不安。
どこにでもいる40歳の働く女性が、このドラマの主人公です。
結婚相手とは直前に破談になり、以後は相手に恵まれず、会社でも年齢を重ねるごとに肩身が狭くなり、ついに左遷。
そんな時に目にした「ホステス募集、ただし40歳以上!」の張り紙。
〝何かを変えたい。変えないと私は私の人生を嫌いになってしまう!〟
主人公の新は思い切ってそのBARの扉を開いた。
扉の向こうにいたのは自称50代~80代までの元気な高齢ホステスたち。そこは、美味しい料理と軽快なトーク、さらにパワフルなダンスでおもてなしをする特別な空間だった。
戦前戦後、昭和、平成、令和へ、どんな時代も明るくポジティブに生きてきた彼女たちの姿を見て、新も少しずつ輝き始め、職場でも仕事の取り組み方が変わっていく。
さらにそんな彼女の前向きな姿を見て、BARに来た客や、同じ境遇だった職場の同僚たちもどんどん生き生きとし始める。
今の社会を覆う言いようのない閉塞感。
そんな問題山積の今だからこそ、これまでの価値観をがらりと変える歴戦の熟女たちの言葉と、現実を素直に受け入れ前向きに生きはじめるヒロインの姿は、見る人に勇気と生きる力を与えてくれるのです。
(※東海テレビ番組HPより、一部割愛)

前回放送された第9話で、私は草笛光子さんの演技に泣かされた。

草笛光子さんが演じているのは、新が働くバーの2代目ママ・きら子。
ママの隠された過去をアララに告白するシーンだった。

終戦間もない頃、私は花を売っていたの。
その日もひとりぼっちの寂しい夜だった。
真夜中に雨が降り出し、やがて嵐に…。
突然バラック小屋の戸が開いて、私、咄嗟に思った。あーやっとお父さんが帰ってきてくれた!待ち続けたお父さんが!
でもそれは待ち焦がれていたお父さんではなく、その界隈を荒らしていたヤクザ者だった。
『きゃーーっ』
生きるために、私は…私は…
私が売ったのは、花じゃない。この体…。
あれは地獄。地獄ね…。
ある日気付いたの。
ここから逃げ出さなければ私はこのまま殺される。人間扱いされず、ボロ切れのように、体も心も蝕まれ、捨てられ…。
そんな暮らしは…そんなケダモノのような扱いは…。
地獄から這い出すために、私は逃げた。
ある晩、男達の家に火をつけ裸足で走った。
助けてくれたのは…ジルバ。
生まれ変わろうって…ふたりで。
『きら子、つらい過去は忘れて生まれ変わればいい。私は生まれ変わってジルバになった』
ジルバは、何も聞かなかった。
私の身に何があったのか。私がどうやって生きてきたのか。
長いこと一緒に暮らしたのに一度も…。
私の方からも話さなかったわ、誰にも…。


きら子ママが15歳の時の話だそうだ。
戦後間もない頃15ということは、私の母とちょうど同じ年代だ。
私の母も小さな弟を連れて、ふたりで焼け野原をひたすら歩いたという過去があった。
母の身になにも起きなかったのは、むしろ幸運だったのかも知れないと思った。

その話を聞いて、アララは泣きながらきら子ママにこう言う。

「ママは悪くない。ママは悪くない。
だから…もう…苦しまないで…」
「私ね…70年間、誰かにそう言って欲しかったのかも知れない…。ありがとうアララ…。」

きら子ママの壮絶な過去。
もう亡くなってしまった初代ママ・ジルバ以外、誰にも打ち明けることなく、心に封印しながらずっと生きてきた。

この回の最後に、主人公・アララがこう言っている。

言葉がみつからない。
この10年、故郷の町で沢山の痛手を見てきた。傷が大きいほど、人は自分を責め続ける。
そして打ち明け話をしたあと、またその傷が蘇り、つらくなる。
ママはもしかしたら過去を知った私を疎ましく思うかも知れない。
それでもいい。覚悟しよう。
告白を聞くというのは、そういうことなんだ。

店には初代ママ・ジルバの写真が飾られているのだが、初め私はなんて名前の女優さんだっけ…?と分からなかった。
白髪のそのママはとっても美しく楽しそうに笑っている。
それが誰でもない池脇千鶴さん(二役)と知った時、鳥肌が立った。

最初からアララがジルバの面影があるという設定で、お店に採用されるのだが、きら子ママがアララに過去を打ち明けたのも、アララにジルバを重ねていたからで、今後もしかしたらアララの過去がジルバに関係する可能性もある。

原作者・有間しのぶさんが会津若松市出身ということで、アララの故郷も福島という設定だ。
福島にはアララの両親と弟家族が居て、弟は震災を乗り越え地元でカフェをオープンする。
弟の苦悩や姉弟の関係、そういうエピソードを交えているところもこのドラマの魅力のひとつだったように思う。

今週土曜日、いよいよ最終回。
バーの存続や、アララとジルバの関係など…。
気になることがいっぱい。
楽しみだ。




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