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【本読み】『推し燃ゆ』で火傷した

『推し燃ゆ』(宇佐美 りんさん:著者 河出書房新社さん:出版)を読んでの感想、回想、後悔について。
※多少のネタバレ有り

燃えているように、1ページ1ページめくる指が、本を支える手が熱かった。
読み終わった今でも、ひりひりと焦げた胸が、頭が疼く。
そんな本でした。

本書は第164回芥川賞を受賞されました。
普通とされることを普通にこなすことが難しい生を抱える女子高校生。
推しを生きがいに頑張って生活していたが、その推しが不祥事を起こし炎上してしまう。推しのためでなく、自分のために生きることを突き付けられた主人公のもがきが、身近なテーマと痛いほどリアルな表現で描かれる。

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読もうと手に取ってまず驚いたこと。

フラミンゴ色のかわいいカバー表紙のピンクをめくると
ラピスラズリ色の真っ青な海にシルバーの線が波打ちます。

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読んで分かったのですが、この青は推し担カラー(※)でした!
※推しのアイドルの担当カラーが青色

デザイン性の高さに唸る……!ちなみにスピンも同じ青色です。

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個人的に一番印象に残っているシーンは、姉が妹にキレてしまうシーン。

姉がリビングで勉強する傍ら、風呂上がりの妹が母に注意される。
妹が母にこれでも自分は頑張ってるから~と返すと、姉は妹に言う。
”頑張らなくていいから、頑張ってるって言わないで”

せ、切実……!
切実な姉の悲鳴と、必死な優しさに胸がつぶれた。

それぞれの気持ちや状況が痛いほど伝わります。

妙にリアルで生暖かい表現や場面が多くて、ひりひりする。

・・・・・・そして、改めて偶像崇拝って生きるのに大切なんだな、と。
改めて感じました。

推しがどう感じて、どう思って生きているのか、理解しようと追いかける
主人公の推し活動の姿勢って、コアなファンの姿を焼き付ける描写として
完璧すぎる。

そして、主人公を通して主人公の推しを理解したくなっている自分に驚きました。

アイドルの物語が沢山あり、3次元も2次元も沢山のアイドルがいて
さらにそのアイドルを推すファンが本当に沢山いるこの世の中で、
この温度感と距離感で本著を書かれた著者はすごい方だと感動しました。

今後のご活躍が楽しみでなりません!

推しが不祥事で燃えたけど
ずっと生身を燃やしていたのは主人公で
そんな主人公の物語に触れて、私も過去を焦がして火傷したのでした。



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