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【マンガ業界Newsまとめ】漫画村17億円賠償判決、文化庁がAIに見解、日本エンタメ輸出が鉄鋼・半導体に匹敵 など|4/21-150

マンガ業界ニュースの週1まとめです。マンガ・アニメ業界向けイベントIMART(https://imart.tokyo/) を運営するMANGA総研代表の筆者が、動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、マンガ業界の方が短時間で1週間分の情報をチェックできることを目指しています。

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「漫画村」裁判で約17.3億円の賠償判決、出版社側は抑止効果に期待も「海外で悪質な海賊版サイト」広がる

「漫画村」運営者への訴追について、大きなマイルストンを迎えました。

出版3社が約19億円の損害賠償を求めて提訴していた裁判の判決が18日、東京地方裁判所であり、サイトの元運営者の被告に対して約17億3000万円の賠償が命じられました。

小学館、集英社、KADOKAWAの3社が共同記者会見を開きました。この中で、長年この海賊版サイト対策を続けてきた集英社編集総務部参与・伊東敦氏より「著作者が安心して作品を作れることは出版社の責務」とし、ACCS事務局長の中川氏からは「海賊版サイトの運営に対して民事上の責任が発生することが示されたことは、当然のこと」とコメントしました。

以上から、海賊版サイトを運営することは、非常に高額な訴追が行われることが判例として残り、今後の抑止に繋がるものということですね。大きなマイルストンかと思います。

国内への判例はできたところで、今後は海外の海賊版サイト運営者に対する追及が次のマイルストンになるかと思います。

「判決を裁判官が読み上げる時に『またやります』って叫ぶ予定だった」

このあたりは最早場外戦ですね。
確かに、もともと被告側の主張は、現行法上解釈が問われるものではありました。しかし、国内での法整備も進み、今回明確に判例が出ましたし、一部作品の賠償だけでも、これだけ高額な賠償金が出ています。この辺りの主張も意味の無いものとなりました。
今後は、海賊版サイト運営は明確に違法として認識され、責任を問われるというまでのことです。

まだ1審ですけども、恐らく次は無さそうですよね。ロミ氏にはあまり皆の目に触れないところに蟄居いただきたいなと思います。

YouTubeとTikTokを漫画出版社が厳しく非難、Content IDによる著作権管理が出版物に対しては無意味であるため

こちらは、海賊版サイト運営者ではなく、大手プラットフォーム各社への動きですが、海外事業者の権利侵害を上記の海賊版対策と同じ枠組みで追及しています。これが恐らく、出版社やABJの次の狙いで、今度は海外の権利侵害者に対する訴追と実績の積み重ねへと、次の段階へ進んだのだと思われます。

漫画村の賠償命令で権利侵害の国内対策は大きなマイルストンを迎えたと思われます。ブロッキング問題の際のクラウドフレア対応などでも、海外での権利侵害対応は、国内と勝手が違うことが見て取れました。今度は海外の事業者や侵害者へ対応し、海外での練度を上げていくことが、次のアクションと思われます。


内閣がエンタメ産業活性化を議論 「日本のコンテンツ海外売上は鉄鋼、半導体に匹敵」

日本政府が「第26回新しい資本主義実現会議」を4月17日に開催。その中で興味深い資料がいくつか示されました。(2つ目の記事に資料類あり)

令和6年4月17日 内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「基礎資料」 より

この中で興味深かったのが上記の資料です。
ここでは、トップである自動車産業ではなく、例として比較して有意そうな産業として、鉄鋼、半導体、石油化学産業が上げられていますが、コンテンツ産業は2021ー2年ベースで、それに比肩する経済規模になっているとのこと。

ちなみに、日本の輸出総額は、ずっと自動車産業がトップですが、ここで指標とされているものは、海外で生産する割合の低いものを並べているようですね。

これら統合すると、コンテンツ産業は輸出額トップ5に入る水準となっていると思います。

令和6年4月17日 内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「基礎資料」 より

ここで経産省のいう「コンテンツ産業」の定義ですが、ゲーム、アニメ、出版(マンガ)という見方をしているようです。例えば、『ドラゴンボール』『NARUTO』『鬼滅の刃』など、マンガ、アニメ、ゲームとして展開しており、それがここに含まれるということですね。

近年「コンテンツ産業」への政府やその周辺の関与が増えてきていますが、それはこの数字に裏打ちされていると言えるかと思います。

長く、日本のエンタメ輸出に取り組んで来た、Minto社代表水野さんもコメントされてます。勉強になります。

同じような軸で、中山淳雄さんの記事も出ていました。
なるほど「デジタル棚」


国内News

これは、電子書籍界隈では大きな話題だと思いますが、めちゃコミが、いわゆるブックサーフィンファイルと呼ばれる、ガラケー時代以来の独自の縦読み(マンガのコマを切り分けて縦に並べて読ませる方式)以外の読み方として、1ページずつ読む、一般的な読み方も対応して順次ラインナップするとのこと。

通常、こうしたファイルはEPUBで提供され、Webtoon含めほとんどの会社がその形式でファイルをやり取りしてますので、版元側の手数はあまり変わらないと思いますが、めちゃコミ側に新しい動きがあったということですね。


近年、多くの漫画誌がWeb運用に切り替わっていますが、その中でグラビアの立ち位置が問われてきています。

元来、紙のマンガ誌は店頭で表紙にグラビアがあることで、新しい読者に手にとってもらうことを目指しました。近年、多くの雑誌がWeb・アプリ運用をメインとし、中でも雑誌単位ではなく、作品にフォーカスして読みに来る人が増える中で、アイキャッチとしてのグラビアの立ち位置は各社模索しているところかと思います。

ヤンジャンの場合も、グラビアを専門ページにして別途課金できる形にしたようですね。さてどうなっていくかですね。


50周年、めでたいですね。
1975年連載開始の『ガラスの仮面』美内すずえ先生より「完結までもうひと踏ん張り、頑張らなければ!!」というコメントも寄せられています。ちなみに、創刊は1974年です。まぁすごい話です。

そして「花とゆめWEB」がオープン。
白泉社では、花ゆめ含めた複数の女性向け媒体をマンガParkというアプリの中で運用してきましたが、それとは別にWeb漫画誌的なサイトがオープンするところですね。


コナミが作ったTCG的ゲームを、ジャンプラでコミック連載ということです。『遊戯王』は、ジャンプ連載(アニメ含む)のTCG化をコナミが請け負ってましたが、その逆ですね。


版元、WebtoonスタジオのファンギルドがVoicyとボイスドラマ展開で連携です。今時のドラマCDみたいな感じですかね。配信先に、appleとかSpotifyとかも入るんでしょうか。


手塚・赤塚賞の集英社、ちばてつや賞の講談社の他、新たに増えた無数の漫画賞に対して、69年の歴史の小学館漫画賞が、部門を廃止するに至った経緯が詳しく書かれていて興味深いです。記事としてはこれからの話と言うより、良い賞であったという振り返りが大きいですね。


今週、この記事をポストしたところ、沢山の反応がありました。

「遅い」という意見と「値段がつくと相続が」という意見が多かったです。ただこれ、基本的には「原画をしっかり保存すること。保存環境や、補修など」と「副次的に、原画を原画展などで活用すること」あたりがメインなので、多分値付けとか資産価値向上みたいなことがメインにはならないんじゃないかなと思います。

このあたり、様々な手法が開発・研究されてますが、今の所は現行法などとの兼ね合いで公になってないところが多いかなと。これから、少しずつ出て来ると思います。


『東リベ』和久井健さんのジャンプ移籍作、一話がジャンプラ公開とのこと。


オーバーラップのBLレーベル『LiQulle pathos(リキューレパトス)』第2弾配信開始とのこと。同社のBLレーベル捕捉出来てませんでした。同媒体名でKindleなどで電子雑誌形式で出してるようですね。そうだったのか。


ブックオフ増収増益ということなんですが、中身を見ると「本以外」ということのようですね。


「麻雀漫画50年史」5/31発売で予約開始とのことですが、激渋本ですね。かっこいいです。当まとめ読者の皆様には是非。これを読んだ人だけで、雀卓を囲むというのも一興。企画しようかしら。


新世代マンガコース。先週講義させてもらいました。 入学時は日本語学校との連携みたいなリアル事情もありますわね。あと、卒業後のビザとかも重要で、講義でも少し触れました


これ、言いたいことが多いので、xに書きました。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

注目を集めていたバンダイのWebtoon、ついに3作リリースですね。全て、版元は小学館です。また、先んじて伝えられていたエコーズ社の制作は3作中1作品のようでした。


フーモアは、KakaoPageでまた1作品連載開始です。
一方ピッコマは、同社系の国内「シェルパスタジオ」と、韓国の「Studio1pic」から、それぞれ1作品新連載開始です。ピッコマの内製作品も目立ってきましたね。


SORAJIMAは鈴木おさむ原作作品を縦動画化、動画制作は同じくWebtoonも手掛けるギークピクチュアズ。


Webtoon制作のために、タイの現地法人と言うは珍しい。


海外News

サウジの話題、引き続き色々ですね。
DBパークについては、なぜ先に海外でやられてしまうのか?という声も多いんですが、まぁ出来ると判れば追いかけられるんじゃないかなと思います。

この地区は今のところなんにも無い一帯で、観光地ですらないためホテルなんかもまだ全然なく、全てにおいてこれからなのですね。良くも悪くも砂漠の国らしいゼロスタートのようです。


「クロスボーダーコンテンツ」とは、各国に展開するNAVERの現地クリエイターコンテンツ、乃至は韓国製コンテンツ以外の作品のこと。日本風に言うと三国間貿易的なコンテンツを指すようです。「インドネシアで読まれるタイの作品」みたいな感じですね。なるほど。プラットフォームを複数国に展開した視点ですね。


日本においても、巨大なWeb広告市場がありますが、アダルトとそうでないものは、出し先が別れているように感じます。

具体的には、アダルトなマンガ広告は、主にまとめサイトなどの、少しグレー寄りのサイトに、アダルト対応可能なタフそうなアドネットワーク経由で展開する感じですよね。とはいえ、日本でも最近、平場に結構アダルト寄りのものが展開してはおりますが。

このあたり、細かい棲み分けは、韓国でどうなっているのでしょうね。


*: ここから、外国語の記事も紹介します。自動翻訳等活用ください。

タイトル訳:ネイバーウェブトゥーン社が数十億ドルの損失を計上、閉鎖の憶測広がる

タイトル訳:「中国人もウェブトゥーンをたくさん見るのに、なぜ?」

それぞれ英語と韓国語の同じ記事です。NAVERが中国市場でのプラットフォーム展開に苦戦し、香港の法人で数十億円の特損を計上。閉鎖の憶測まで広がるという見方です。

日本の映画などは、去年は中国でも好調で、作品の提供先としては中国は依然有力だと思いますが、外国企業によるプラットフォーム展開となると難しいようですね。


タイトル訳:WEBTOONのスーパーライク:メリットとトレードオフを解説

3月に導入された、WEBTOONの強化版スパチャ「SuperLike」ですが、ビュー数の制約など、なかなか条件が厳しいようですね。


タイトル訳:Viz MangaにMarvel Mangaが加わりました

VizMangaのアプリ上でマーベルの取り扱いが始まったとのこと。なんとなく、出し先の絞り込みから、出し先の拡大に向かってる気がして、形が日本に近づいてる気がしますね。恐らく北米の電子コミック市場の拡大とリンクしてるんじゃないでしょうか。


タイトル訳:ICv2: 2024 年 3 月 Circana BookScan - 大人と子供向けグラフィック ノベル トップ 20

北米は、ヒロアカ、スパイ、ワンピと新刊が売れてますが、その中にベルセルク特装版も。


Toronto Comic Arts Festivalは、5/11-12で開催。オンラインは5/3-24とのこと。


バンナムによると、4/20-21のムンバイのコミコンに出展したとのこと。


AI・画像生成関連

文化庁、「AIと著作権に関する考え方について」を公表

具体的なまとめは、この中の以下のPDF資料です。https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_02.pdf

パブコメなどを経て、文化庁が文字通り「AIと著作権に関する考え方について」かなり踏み込んでまとめています。

端的にまとめると、
・大規模モデルなどの学習にイラストを使用することは「非享受目的」となり、遵法という解釈
・但し「享受」する目的が併存しているような場合は適用されない。

これを更に具体的に言うと「stable diffusionのようなLLMで、無作為に大量の画像を使って学習する」というまでは、違法性が無い。
でも、Loraのように「特定の作品等を指定して生成する場合」著作権者以外が使えば違法性が出て来る。

という風に私は解釈しました。ただ、文化庁の文章はそこまで言い切らないことを配慮して書かれているので、少し私の拡大解釈もあると思います。

なるほど。順当だとは思いますけど、ナーバスになってるクリエイターの方々にとっては、まだまだセンシティブな内容ですね。

個人的に印象に残ったのが、以下のあたりで。

文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会 「AIと著作権に関する考え方について」 【概要】より

この辺りを見ると、文化庁の方も主にネットなどでの議論を良く見ていて、炎上などを憂慮しているように思えますね。いわゆるお役所口調とはかなり離れた、配慮と綿密な観察、熟考の跡が見えます。パブコメの内容も凄いことになってたんでしょうね。


ChatGPTが日本語対応ですね。日本はこうした実験場になりやすいなぁと。


なんとなく、マンガを読んだAIが、アニメ作っちゃいそうに感じる記事たちでした。


AI画像は、白黒マンガが苦手という印象でしたが、これはかなり線画らしくなってますね。


「小説の書くため」とありますが、漫画的に言うと、プロットに対する編集者、小説なら普通に編集者、みたいなものかなと。文章が長いです。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

もともと世界の学生向けにセルシスがやっていたコンテストが、だいぶ大きくなるようですね。資本業務提携をしたNAVERのTapasとの関係も入ってきていそうです。

BOOK☆WALKERも大きいの来ましたね。4/25まで。

もともと5/8まで続くとされてた大セールですが、なんというか本当に5/8までやるんですね。すごいですね。

11円→8円→6円という、なぞの値下げ3段階を含む竹書房セールからの、サイトリニューアル。

あぁなるほど。これは良いセールのアイディアですね。

ベルばら@品川水族館

コロコロの自治体コラボ、4例目だそうです。

人気BL作品10周年でバスツアー「修学旅行のやり直し」これはエモかろう。

これまたユニークな、if企画冊子。

場所が、新生なったGALLERY ZENONですね(旧ゼノンカフェ)


記事のみ紹介


告知関連

4月26日(金曜日)から 2024年7月7日(日曜日)
トキワ荘通り昭和レトロ館:地図

カクヨム主催のラノベのイベント、Discordで開催です。今時ですね。

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主に週末に週1更新ペースで書いています。原則日曜、月曜以降が休日の場合は、週初めの平日の全日公開にて。たまに番外編も書きます。
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今年2023年11月24日~26日に、第4回IMARTというマンガ・アニメの国際カンファレンスを開催しました。
基調講演に鳥嶋和彦さんを迎え、マンガ・アニメの現場から22のセッションやピッチが行われました。

アーカイブ配信のチケット購入がこちらになります。

インプレス社『電子書籍ビジネス調査報告書2023』のWebtoonパートの執筆を担当させていただきました。

筆者個人へのお問い合わせなど、以下まで。


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