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【マンガ業界Newsまとめ】 ウェブトゥーンのある世界線で、マンガ雑誌を再構築「booklistaSTUDIOweb」開始!など|9/4-067

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。

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国内初! webtoon制作スタジオによるWebマンガ誌「booklistaSTUDIOweb」スタート!「コミチ+」導入!

auブックパス、ReaderStore(ソニー)を運営する株式会社ブックリスタ内のウェブトゥーンスタジオ「booklistaSTUDIO」が、コミチ社の提供するマンガSaaS「コミチ+」上に、Webマンガ誌「booklistaSTUDIOweb」をオープンしました。

もともと10作品ほどのWebtoonを制作、各社に配信していた同社ですが、このオープンを機に6作品を連載開始し、現在は15作品を「booklistaSTUDIOweb」上に連載中です。

booklistaSTUDIOによるリリースは↓作品については、こちらが詳しいです。

多くのウェブトゥーンスタジオは、作品を制作した後、他社の運営するプラットフォームに作品を預け、その中で売れるか売れないかという神判を待つという形です。場合によっては期間縛りのある独占配信契約を結び、初動で売れなかった場合は長い期間塩漬けになるというようなこともあります。

一方、複数の電子書店・アプリに作品を提供する場合、上記のような条件がない代わりに販売優遇が得にくくなります。同時に、他社プラットフォーム上の動きだけでは、自社作品にどんなユーザーがついたか詳しい情報をリアルタイムで得たり、自力でプロモーションすることも難しくなります。

そこで、できたのが自社運営Webマンガ誌という考え方です。

初動でどんな読者が作品につくか?その読者がどんな動きを見せるか?ターゲットが決まった後に、スタジオが自力でプロモーションを仕掛ける。購入は、ご自身が使ってる電子書店・アプリへどうぞと誘導する。などと、実はもともと出版社のマンガ雑誌が紙の時代に持っていた機能や、上手く行っている出版社のWeb雑誌機能などを、組みなおして実現しているSaaSです。

これは、ユーザーを囲い込むと強いが、新規ユーザーは一度必ずダウンロード作業をしないとけいないアプリでは出来ない利点です。電子書籍やアプリが十分に普及した現在、全て自社で完結する必要もありません。自社他社トータルでの広い成功を目指しています。

コミチ社はこの仕組みを、先行して「ヤンマガWeb」上で成功させており、運営1年でMAU200万、WAU100万(週に100万人がWebを見に来る)にまで成長しています。それを、出版社・ウェブトゥーンスタジオ向けに提供しているのが、マンガSaaS「コミチ+」です。

と、あまりに詳しく書いてしまいました。お気づきの諸兄も多いと思いますが、このコミチ+は、著者の所属するコミチ社のサービスです。なんでしたらこのプレスリリースは自分で書いておりますm_m

自分の関わるサービスではあるのですが、このWebマンガ誌「コミチ+」の仕組みは、今後のマンガ業界に対してインパクトを持った「ウェブトゥーンのある世界線で、マンガ雑誌を作りなおした」という新しい世界観を提示する気合を込めたものでして、力を入れつつ紹介させていただきました。


集英社ら、海外向けの漫画投稿、公開サービス--「少年ジャンプ+」掲載の漫画賞も

ジャンプ+編集部とMediBangが、海外のクリエイター向けの漫画投稿、公開プラットフォーム「MANGA Plus Creators by SHUEISHA(MPC)」を発表しました。

同じタッグでジャンプPAINT という、Medibangの作画ソフト上でジャンプ漫画を素材に様々なことが出来る、ジャンプ公式のマンガ制作ソフトを運営していました。

今回は、ジャンプ+編集部がはてな社と国内で展開している「ジャンプルーキー!」という投稿サービスの海外版を作ったということですね。大元はMedibang社のサービスで、英語とスペイン語に対応するとのこと。月例賞も行い、日本語訳してジャンプ+に掲載する将来もありとのこと。

別途運営しているジャンプ+の海外向けサービス「MangaPlus」や、そこで来年から行うという日英サイマル配信などと連動した海外施策なのでしょう。

海外クリエイターの日本デビューについては、翻訳や文化、仕事観の違いなど、色々と難しい課題はあります。Medibang社はもともと英語スペイン語の他にも、様々な言語でコミュニケーションを出来るスタッフを揃えているため、そうしたメンバーが運営のサポートに入るということでしょうか。


アニメーションの企画制作プロダクションの株式会社ツインエンジン、ゲーム会社大手のテンセントグループ、電子書籍プラットフォーム大手のアムタス、BookLiveの3社からシリーズBラウンドの資金調達を完了

『ヴィンランドサガ』『ゴールデンカムイ』『地獄楽』等などと漫画原作のヒットアニメを多数つくっているツインエンジン社が3社から資金調達しました。うち2社がマンガ業界関連で、アムタス社(めちゃコミック)とBooklive社です。

それぞれの企業がリリースで書いているのは「オリジナルIPを早い段階から共同開発し、コミックとアニメの連動企画を進める」という趣旨です。

最近のエンタメ業界の環境のもと、アニメ製作会社がオリジナルIPを作ることを目指すのは一つの流れでした。また、もともとは電子書籍プラットフォームであるアムタス、Bookliveの2社ですが、近年はオリジナル作品制作にも力を入れています。

IPが欲しいなら出版社と組むのが素直では?とも感じますが、日本の大手出版社は出資の際、基本的には少額出資をするケースがほとんどで、原作を共同開発するレベルまで踏み込むことは少ないです。(例外はあり、一般論)

そのため、恐らくツインエンジン側がマンガを売る力のあるPFに対して原作開発に協力し、マンガで安価に多数の作品を量産、良いものをアニメにしていくということかなと読み解けます。

元々この2社が作っているオリジナルコミックは、どちらかというと実写向きのものが多かったと思いますが、今後この取組が進めば、アニメ向きというか、普通の漫画誌のような作品が増えていくのではないでしょうか。


ミニ特集:AIはイラストの世界を変えるのか?

AI作画の仕組み、MidJourney の出現から晩夏に突然はじまったAIイラストとクリエイターの問題、そして国産サービスmimicの開始と、即終了。AIイラストというこれまでなかったものが物議をかもしています。

ここでは、一先ずここまでどんなプレリュードから、まだ真っ最中の中、本日現在までどんな話があったのか、記事で並べてみます。正直まだ見解をまとめられる段階には無いと思ってもいます。

もともと、この分野での発信を多くしていたnoteCXOの深津さんが、ある意味伝道師のように、その前夜を記事にしています。

当初のAIイラストとはこんな感じ。この時点で話題にはなっていましたが。。


これが、mimicの出現で日本国内も騒然となりました。

そして、わずか数日でサービス終了

法的には問題なし。一方、日本国内においては同人文化とは相いれない。

また、現在のTwitterなどを中心としたネット上で活動するクリエイターにとって、絵柄を使われる、奪われるということは、致命的なのか、いやそんなことないという話なのか?黙ってると海外サービスに席巻されるとかされないとか、そんな議論もありました。

などなど、ちょっとその切り分けも簡単ではない状態になっています。

こういう時に頼りになる弁護士ドットコムさんも沈黙を守っています。無視しているというより、見解を書きにくいんだろうなとは思います。一先ず、AIイラストに関する現在地は、これらの記事を読めば文脈を抑えられるでしょうか。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

WebtoonStudioとしての事業をスタートしていた「NOKID WEBTOON」ですが、いわゆる「着彩工程」の上に、アニメ風の「撮影処理」をするサービスを開始とのこと。NOKID社はもともとアニメの制作などをしている企業で、Webtoon事業に進出したうえで、自社の持ち味を出したということでしょう。

もともと漫画の世界では、マンガをカラー化するときに「アニメ塗り」という言葉や技法があります。本に掲載する前提の塗りに対して、PC/スマホ画面で作品を見ることに対応した着彩技法を指してました。

記事中のサンプルを見ると、サンプルの左側がいわゆる「アニメ塗り」で右側が「撮影処理」というところかと、明らかに違いますね。


WebtoonStudioの「WONDER WAVE」社による新作リリースなのですが、珍しいことに、プレスリリースの中に同社代表の波房克典氏が取材記事のような形で、Webtoonビジネスについて語っているくだりが大きく尺を取っています。

ざっくり読むと、日本のエンタメ最前線にいる人ですら、普通の漫画を「ただ縦にしたもの」という誤解をしていると。縦スクロールコミック最大の特徴は「紙芝居である」と看破し、”Japan Webtoon”スタンダードを生み出すことを目指しているとのこと。


先週記事を紹介した際には社名までは出てなかったLink-U社と韓国D&CMediaの合弁Webtoon制作会社ですが、社名が「StudioMoon6」となるそうです。制作流通を内外で広げながら、小説原作となる「Noveltoon」も制作していくとのこと。


海外News

韓国にて、NAVERは利用率において群を抜いてるが、一人当たりの課金額が他のサービスと比べて少ない。という記事が2つほど。

韓国においてNAVER、KAKAO、他第3勢力がWebtoonの主要プレイヤーになる中で、トップのNAVERが圧倒的なユーザー数を誇るにもかかわらず、一人当たりの課金が少額、一方それ以外はかなり高い課金額になっているという数字が興味深かったです。

未だ収益性の低いと言われる北米、日本、中国でも、「待てば無料」の更に次の新たな発明や、作品の展開が必要になってくるというところでしょうか。

一方、Webtoonのビジネスは、もとよりアプリ上などの作品課金だけではなく、周辺の映像・音楽といったIP展開収入が大きいこともわかっており、そのあたりどう見るかというのもあるなと思いました。

2本目は「優良顧客」と思いきや「有料顧客」のお話ですね。

1本目の記事に続くような文脈ですが、NAVERはAIを使ってのリコメンドシステムの開発に力を入れているとのこと。このリコメンド、読みたい作品がチェーンするという意味で、地味ではありますが重要なのですよね。


米国の優れたマンガに与えられるハーベイ賞の「ことしのデジタル図書」部門に、NAVER WEBTOONの『ロア・オリンポス』『エブリシング・イズ・ファイン』2作がノミネートされたとのこと。

このハーベイ賞(The Harvey Award)ですが、他にも「Book of the Year」や「Digital Book of the Year」「Best Manga」など、色々な賞があるようです。「このマンガが凄い」や「次に来るマンガ大賞」などのような位置づけになるのでしょうか。ちょっとサイトのトンマナ的にはもうちょっと格調が高そうですね。


記事中に「…韓国ウェブトゥーンが日本漫画エコシステムを破壊する側面まであります」とありまして、これがどういうことを指しているのか興味はあったのですが、この記事の1と2だけでは読み取れませんでした。3が続くのかどうか?

この記事にもあるYLABの取組として、マーベル・DCのようないわばスターシステム的アベンジャーズのような形で世界を狙うことは、野心的で面白い取組だと思います。

尹(ユン)さんは、漫画原作者でもあり、LINEマンガにも取締役として在籍した方なので、日本漫画のことは熟知されていると思います。せっかくこのテーマで話すなら、記事のほうももうちょっと掘り下げた内容が知りたかったところではありました。

ただ、この記事も以前のまとめ記事で指摘した、日経新聞の「漫画は日本のお家芸――。そんな常識が覆されつつある」という記事が引用されてました。以前指摘した通り、これは誤謬だらけの記事ですので、暗澹たる気持ちになってしまいました。


北米エンタメニュースまとめのlibroさん、今回はCrunchRollの特集ですね。
有名な黒から白に転じた話から、現在のイベントのお話まで、良くまとまってると思います。

この、「海賊版サイトが正規版サイトに転じる」という流れ、漫画においては唯一北米のアダルトコミックサービス「FA〇KU」と、国内のアダルトコミック雑誌サブスク「Komiflo」の流れのみで実現はしています。

ただ、いわゆる海賊版サイトが、その巨大なユーザーを抱えたまま正規版に転じるというマンガの事例は他になく、少し前にベトナム企業がそれを目指したいと宣言しましたが、日本の出版社連から「盗人猛々しい」と強く拒絶されています。

長きにわたり海賊活動をしてた上で、海賊版対策が強まった後の話で、文脈的に許容出来ようがないものでした。このCrunchRollは大丈夫だったという経緯は、ほんとに世の中タイミングだなぁとは思います。

個人的には、クランチが白転するにあたって黎明期に日本で何をしたかという話も好きなんですが、もうちょっと普通の場では話せないことになっちゃいましたね。当時の担当者も辞めてますし。

イベントをCrunchが良くやるというのは、海外の場合ネットサービスを広げていくのに、日本ほどネット広告だけで簡単にユーザーが捕まらないので、イベントをマメにやってファンをガッチリ掴んでいくというのが、北米では王道の顧客獲得手法ということもあるかと思います。


国内News

講談社の現代ビジネスが漫画配信専門のブランドを作りました。「コミックカクテル」ということで、これは大人の女性向けということのようですね。


もともと、アートスパークホールディングスという持ち株会社が、グループ内で主力事業を行うセルシス社の全株を持って、持ち株会社とグループ会社という関係としていたものを、セルシス社がそのアートスパークホールディングスと合併し、他のグループ会社の株もセルシス社が親となって持つという体制への移行のようです。(記事だけで全ては読み取れませんでしたが、おおよそ、そうではないかと)

近いところだと、メディアドゥ社も以前に単純持ち株会社を主要な事業会社と合併させてグループの中心に据える体制変更をしているのですが、それと同じような形ではないでしょうか。この業界に限らず、割と良くある動きかと。(サービス内容そのものには、変な影響は出ないものです)


公式画像などが出るたびに、2次創作が次々出て大盛り上がりのミャクミャク様ですが、公式からガイドラインが出てます。内容は一般的なことをちゃんと抑えている感じですね。2次創作が増えることが公式が歓迎しているのはわかります。成人向けにもならなくはないですけどしにくいですしw返って扱いやすくなったかもしれないですね。公式の方、よくわかってらっしゃる。


先週のピッコマ上場へという記事を受けて、仕手系の記事もちらほらです。これなんかを読むと、業界人としては「ざっくりだなー」とか「話が局地的」などと思ってしまいますが、株という方面から見ると、我々も色々ある中のひとつの業界でしかないということですね。それでも、こうしたことで大きなお金が動いてしまうわけですが。


記事のみ紹介


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現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。

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