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【マンガ業界Newsまとめ】電子コミックの成長率鈍化は「成熟期?」、デジタルから名作漫画は生まれる? など|2/12-89

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。

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電子コミックの伸び、急速に鈍化「成熟期に入った」 2022年の出版市場、4年ぶり前年割れ

1/25に出版月報により発表された数字から、電子コミックの成熟期論チラホラ出始めています。コミック市場そのものの中身については、2/25に出る出版月報2月号のデータを待って語れるようになるのかなと思います。

記事の中身を見ると割と冷静で、コミック市場についてはデジタル化の文脈の他に、ヒット作品の有無という要素も大きいので、簡単に言えないところがあるのは、業界の人間としては経験的に熟知しているところとは思います。

『鬼滅の刃』のような作品が再び生まれるようにするには、慌てて何かをするよりも、その大ヒット作品が生まれる土壌を維持し、耕し続けることが難しくも大切な要素なのは自明なためです。

また、近年個人的に大きな問題かなと思うのが、マンガを起点としたIPビジネスが、どうにももう紙書籍や電子コミックの売上だけでは語り切れなくなっていることです。

集英社の毎年の決算においても、ライセンス収入の割合が増えたことは数年来伝えられ、海外出版のインパクトも大きくなっています。これも広い意味でライツ収入と言えましょう。Webtoonに至っては、より以上にこの展開を数値として拾うことが難しくなっています。

また、その対岸のWebtoonにおいて、韓国の業界で発表している「市場」の数値には最初から映像化などのライセンス収入が組み込まれています。これはなにもズルや背伸びをしているわけではなく、Webtoonのビジネスはその生い立ちから、ビジネスモデルにライセンス収入が含まれることが当たり前であったからです。

このあたり、日本の市場評価の基準を、電子コミックを含めた「本だけ」で続けていると、そもそも羅針盤を見失うことになりかねないかなと思います。


電子コミックから「名作」は生まれるのか? “インパクト”重視で分業制も進む中…漫画制作の是非

電子コミックの伸長から来る売れ線の変遷は無視できないところでしょう。

この記事で述べる通り、Web広告によるユーザー獲得を起点とした昨今の電子コミックの流行は、一定の型を求められてはいます。大作を作りにくくなっていることも言えるのでしょう。

とはいえ、こうした手堅い売上となる作品の制作も、市場の底上げには重要で、いかに両立していくか、変化にどう向き合うか?ということなのかなとは思いますが。


韓流「縦読み漫画」に押され、日本の漫画は「ガラパゴス化」してしまうのか 澤田克己

こうした情勢下で、日本のWebtoonの遅れと言う論も大分出尽くしたところでしょうか。「売れる作品だけを作る努力が勝つのか?」「世の中を変える面白い作品に挑戦し、世に問い続けるのか?」という綱引きは続きそうです。


Webtoon関連News

この取組は注目したいところです。既に、KADOKAWAタテスクコミック編集部や、『どろろ』『サイコメトラー』、古くは『鋼の錬金術師』など、既存の日本漫画をWebtoon化する動きは開始から久しいですが、今回は、ハイエンドWebtoonスタジオを標榜するフーモア社による、横マンガ『暴食のベルセルク』のWebtoon化です。

Webtoon巧者に言わせると、今の市場環境下で、横マンガの中にも「Webtoon化したらウケそうなもの、そうでないもの」の目利きはある程度確立しつつあるとか。こうなると、横マンガはアニメ化するIPの大元みたいな使い方にもなりましょうし、そろそろ国産Webtoon制作勢も制作や目利きの練度が上がってきていると思います。こうした作品の動きにも注目したいところです。


DNPもhontoをユーザーベースとしながら、「ホンコミ」ブランドでWebtoon進出ですね。座組が大きいようで、メディアドゥやLink-Uなど、業界各社の名前もリリースの中に組み込まれています。

・株式会社メディアドゥとの協業によるオリジナル作品の開発と、国内外への配信。
・株式会社Link-Uとの協業による本アプリの共同運営と、オリジナル作品の開発。
・出版社をはじめとするパートナーとの協業による、オリジナル作品やリブート作品(すでに世に出ている作品をベースに新たな視点で作り直した作品)の共創・提供。※提供コンテンツや協業先を随時拡大していきます。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000322.000069194.html

既報のライトアニメ化なども含め、ライセンス展開にも注力するようですね。


Webtoon化、アニメ化などの原作創出で好調な主婦の友インフォス社ですが、かねてから謡っていたWebtoon進出に際し、制作Studio機能、アニメ制作機能も社内に確立するとのこと。これも良く考えられた座組に見えますね。


今週までNHKで『ワタシってサバサバしてるから』のドラマ放送もあり勢いのあるDPNブックス社が、Webtoonレーベル・DoPoooNの創刊を発表しました。出し先としては、もともと結びつきも強く、最近ますますWebtoonに力を入れる、めちゃコミックで引き続きとのことです。Webtoonの販売ルート多様化していきますね。

ちょうど、こんなキャンペーンも開催中です。

ちなみに間違われやすいのですが、こちらは「DPNブックス」で、先にニュースを紹介した、大日本印刷社の略称は「DNP」です。PとNの順番が逆です。呼び方がまぜこぜな人、そもそも同じ会社だと思い込んじゃってる人、割といるのでご注意くださいませ。



1月末から開始してる、コミチ社の連載記事「ウェブトゥーン制作の最前線」の、ARCSTUDIO編前中後編が完結です。小説家や漫画家などの個人クリエイターが、Webtoonに参入する際に注意すべき点など、小説家でもあり、Webtoonプロデューサーでもイ・ドギョン氏が語っています。

ドギョン氏は『どろろ』のWebtoon化にも関わるなど、もともと『月光彫刻師』などのヒットを作ったうえで、日本作品のWebtoon化にも関わる業界のキーパーソンの一人です。

コミチとしては、その方から、個人の漫画家・小説家に向けたメッセージを語っていただいたものを、沢山の方に読んで欲しいという狙いになります。


国内News

かねてから個人作家・クリエイター向けのサービス開始を謡っていたBookLive社ですが、個人クリエイター作品を取次をするというサービスとして「BLIC(ブリック)」の開始しました。

前身のビットウェイ時代に、取次機能が別れ、これが現在のメディアドゥ社の中に流れている経緯がありますが、今回は改めて個人向けの取次事業開始ですね。非アダルト分野のD2C事業は各社着々と準備を進めている感じですね。


シェアアパート事業のTOKYO<β>社が、Webtoonスタジオのナンバーナイン社とWebtoonクリエイター向けの住居提供を実施、家賃水光熱費を1年間無料で提供とのこと。

個人的に興味のある取組ですが、一先ずはどんな感じで入居者を募るかですね。集住して作品を作ることは、クリエイターにとって良い影響を与えることも、やり方やタイミング次第で充分にあると思います。そこは太鼓判押します。ほんと、運営の仕方次第です。


海賊版の経済損失が、22年は21年比で半減とのこと。これまで長年の取組の成果が出ていますね。


海外News

これ、韓国語話者ではない日本人技術者が、韓国で翻訳賞を取ったという記事です。AIが進むとこういうことがあるんだなと。


ヒットWebtoon作家でありつつインフルエンサーでもあるヤンオイ氏の近況です。ここまで有名になると、難しいことも色々あるだろうなとは思います。


AIイラスト・画像生成関連

マンガ業界の人にとって、AIを突き詰めて何に関心があるかといえば「AIが漫画を描けるのか?」ということかと思います。最近のChatGPTの物語を作っちゃう能力や、StableDiffusionなどのイラストを作っちゃう能力からすると、これからが統合されていくと、なんらかのものが出来そうな気はします。

だいぶ先行して、モーニングにも掲載された『ぱいどん』による、手塚治虫作品の再現など、色んな意見はあったと思いますが、そこから更に先に進んでいるようです。この分野もここに来て急速に進みそうですね。いまのところ、プロが道具として使う補助制作ツールみたいなイメージのようです。


ネタが尽きないですねw


赤松健さんの捉え方は、最終的に法制化に動く際の起点になる可能性が高く、アップデートを追い続ける必要があるかと思います。


記事のみ紹介


告知関連

マンガと地域振興展:明治大学 米沢嘉博記念図書館

■期間:2023年3月3日(金)-6月12日(月)
■会場:明治大学 米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館 1階


クリエイター必見!海賊版ってなんだ?被害者だけでなく加害者になることだってあるってホント?

■主催:文化庁/日本ネットクリエイター協会(JNCA)
■日時:2023/2/26(日) 18:00開始(ニコ生配信)


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現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。

コミチ+は、来年に向けて大手出版社やWebtoonSTUDIOなどの大型受注を複数控えておりまして、絶賛エンジニア、Webディレクター(運用担当・データアナリスト等)などを募集中です。サービスがどんどん大きく広がっていく、これから滅茶苦茶楽しくなっていくタイミングです。一緒にやりませんか!私も力を出し切るつもりですし、一緒に働く方には私の持ってる知識や人とのつながりを最大限提供したいと考えています。詳細は以下より。

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