5.17 バンコク、国鉄とトレインマーケットとピンスワン・ベンシャロン

今日は充実した長い1日だった。
思うことがたくさんあった。

ベンジャロン陶器のナンバーワンの工房
ピンスワン・ベンジャロンを訪ねる。

片道タクシーで1時間半、4000円。
どうにか公共交通機関で行けないかと調べると
国鉄駅が出てきた。

終点の国鉄駅まで行き
そこからタクシーで約15分。

そこの終点駅が、線路に
店がはみ出すので有名な
トレインマーケットということで、
ついでに見れてしまう。

直前まではガラガラなのだが、
トレインマーケットの数駅手前で
一気に団体の観光客が乗り込んでくる。
電車から見るために組まれている
ツアーのようだ。

いざ終点駅の近くに来ると、
電車は汽笛を鳴らしながら
スピードを緩めていかにも
来ましたよ〜!
お待たせしました〜!と
言わんばかりに進む。

ひと目見ようとカメラや動画を構える
観光客の群れが広がる。電車と店と人が
0距離であるので、カメラを構えながら
ハイタッチなんかも出来て、
ノリノリで手を出して
1人としだしたら止まらず、
突如始まるハイタッチ会。

スターにでもなったような
盛り上がりを見せる。
めちゃくちゃ面白いので
ぜひマーケットからではなく
電車に乗って行くのをおすすめする。

マーケットのお店の奥から
線路側に出れるので、
お店の人は迷惑していないのか
お金を取ったりしているのか
気になるところでもあった。

マーケットでは以外にも
観光客向けの店は少なく
ローカルな八百屋なんかが
多く並ぶのがうれしかった。

1日に4本だけなので、
その観光客に向けた商売よりも
普通の時間に来る
地元の人向けなのかもしれない。

駅には観光客向けに
レストランも数軒並ぶのだが、
全然高くないのである。
あと3倍の値段をとっても
他に競走相手もいないし
観光客も払うだろうに、
逆に心配になる。

大量の観光客は受け入れられるキャパがなく
ツアーでは入らないように
言われているか、別の場所で
ランチが準備されているのかもしれない。

ガイドさんが休憩で
食べに来ていたり、
わたしたちのような
ツアーじゃない観光客が
食べに来ていた。

ツアーで訪ねる入場料があるみたいに
大量に訪れる観光客は
ここのマーケットに還元できているのか、
きちんと地元の人に
利益が行き渡るようになっているのか、
これだけおじゃましているのだからと
疑問に思った。

国鉄の途中の風景では
思うことがたくさんあった。

線路沿いの川のような湿地帯が続く場所に
高床になったボロボロな家が並んでいる。
トタンや木やビニールや
廃材で作られたような家がたくさんあり、
雨漏りや虫や湿気や排気ガスがひどそうで、
貧しいエリアのように思われる。
バンコクは貧富の差が拡大していると
聞いたが、街中では見れない
別の側面を見た気がした。

おばあちゃんやおじさんが
ぼーっと眠るように座っていたり
15.6の高校生も何もすることがないように
3人ほど集まって座っている。

貧しいエリアと、
少し栄えているマーケットのエリアと、
地元の人がのんびり商売をしているエリアと、
門が立派な閑静な住宅地と、
塀が高く物騒なエリアと、
5分も経たずにコロコロと
流れてくる景色が変わるのが
不思議な感覚であった。

それは世界一周なんて
大袈裟に旅をしなくても、
たった10バーツ(≒約40円)で
1駅分、15分だけ隣の駅まで
往復するだけでも、
自分たちの周りの景色や価値観は
大きく変わるんだ、と実感させてくれた。

普段当たり前に思えていた
周りの環境やコミュニティは、
少し出るだけで、完全に飛び出さずに
見に行くだけでもこんなにも違うと
教えてくれた。

なんのやる気もなさそうに過ごしていた
彼らも、もし1駅だけでも乗ってみたら
大きな刺激になるのにな、とも
お節介に思ってしまうが、
それは余裕もあって
少し離れた場所から俯瞰的に見て
知ったからなのかもしれない。

日本にいたって、クラスや職場や
小さなコミュニティで
毎日当たり前に過ごしていると、
嫌な人間関係に当たったときに
それが自分の世界の全てのような
逃げ出せないような気持ちになってしまうが、
話す人を変えたり、場所を変えたり、
飛び出さなくても、少し行動するだけで
何かが変わることがあるのは同じだ。

そしてもう1つ圧倒的に見たのは葉っぱの畑。
空き地が全てこれに変わってしまったのでは
ないかと思うほどの異様な光景だった。
街中やショッピングモールの中にも
堂々とお店が溢れかえっており、
ぎょっとして調べてみると、
約2年前に1部解禁されたが、
乱用が問題になり、
また規制の動きが出ていたりするらしい。

小さな街はどこも似ていて、
みんなお菓子や飲み物がぶら下がっていたり、
屋台のご飯屋さんがある。
その街に必要なお店が
それぞれの役割でのんびり営まれている。

それを見ていると、
日本で当たり前のように感じていた
唯一無二のコンセプトで、
大層な大義名分と意義とストーリーのもと
お店はやっているべきだという
先入観は1つの価値観でしかなかったと
思えてきた。

こどもがお父さんの原付に乗って
電車を見に来て、キラキラした顔で
うれしそうに手を振ってくれる。
1日にたった4回しか来ない電車を
見に来ることは、お父さんとこの子の
毎日の楽しみなのかもしれない。
可愛らしい日常を垣間見えた気がした。

この電車にはいろんな世代の
少しの観光客と地元の人が
乗り合わせていて、
自分ももしこどものときに
こんな風に一期一会で
いろんな国の人に
手を振るのは楽しいかもしれない。

1度終点まで行って川を渡り、
また別の電車に乗り換える。

乗り継ぎではみんなやさしく、
到着して乗り場を検索していると、
地元のおっちゃんが
船かい??あっちの道だよ〜と
教えてくれる。

船を降りてからも、人力車のおじさんが
こっちだよ〜と案内してくれたり、
車窓さんはディズニーの名物キャストさんばりの
超爽やかスマイルで
行ってらっしゃいと手を振ってくれる。

川を渡る前の街は
新鮮な魚市場で有名で、
たくさんの魚やエビが並び
とても賑わっている。

一方で川を渡ると
魚をはじめとした乾物屋が並んでおり、
のどかな地元の小さな街が
広がっていて、対比が面白い。

タイで出会って少し話した人はみんな
街の人もお店の人も友達もどんな人も
ウェルカムトゥータイランド、と
言ってくれるのが、
タイで感じた特有のやさしさに思う。
とてもうれしく素敵な心持ちだ。


外は暑すぎるので、電車を待っている間、
地元のマーケットを横めに
クーラーの効いた清潔な場所とものが食べたいと
唯一のカフェに入る。
結局こういう店を選んでしまうことも
少なくないのが悔しくもあるが、
たくさん活動する日は
冷房でしか得られない回復をはかる。
無理はしない。

そうこうして
ピンスワン・ベンジャロンに到着。
タイの三大陶器の1つで
王室御用達の歴史を持つ
美しい陶器のベンジャロン焼き。
このピンスワン・ベンジャロンは
その中でも1番の技術を誇り、
タイの国賓のディナープレートにも
使われていたりする名工房だ。

ギャラリーに入った瞬間に
あまりの美しさに息を飲む。
そしてライターをしており
地域の手仕事に興味があると伝えると
とても丁寧に案内してくださった。

国内で作っておいた名刺が役に立つ。
羽根ペンの絵を載せておいたおかげで
ライターが伝わりやすかった。

(ここの工房の詳しい記事は
こちらからどうぞ!
国賓やスタバコラボでも有名ですが、
工房の歴史や成り立ちの背景を
書いている記事はほとんどないので、
特別な記事になっています。)

https://note.com/love_journey/n/naa807d458c6a


トップの技術を明るく紡ぐ様子は、
他の伝統工芸にも繋がる
素敵な姿勢に思えた。

帰ってきて、いつものセブンに行く。

セブンのお兄さんに、
今日が最後でラオスに行くんだ、と話すと
どのくらい?と聞かれたので
2.3週間、と答えると、
また戻ってくる?また今度ねと
言ってくれた。

コンビニに行く時、
毎回店員さんにこんにちは、と
挨拶なんて日本ではしない。
馴染みのコンビニで毎日顔を合わせても
心は通わせることはない。

バンコクで顔見知りの人ができて、
お互いに認識してあいさつをする仲で、
街に居場所ができたような気がして
うれしかった。

帰ってきたら一緒に飲もうってこと?と
都合のいい幸せな解釈をして、
いよいよバンコクを出る。


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