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光もやがて死ぬのだろうか

    • 20230710 ルールブック信仰

      糸井重里『ボールのようなことば。』に入っている「まずは、ボールだ」という文章、ものすごく平易に書かれていながら、ある種の臆病な人にはとんでもなくぶっ刺さるようにできている。 曰く、サッカーや野球をしたいときにまず必要なのはボールであって、とりあえずボールと戯れていくことからすべてが始まるのだが、ときに人はルールブックから手にしたがる。しかし、それを暗記したとして、なにも始まらないのだ、と。 ゲームの中で失敗するのがこわくて、ルール違反するのがこわくて、ルールブックや攻略本を

      • 20230706 遠くへ、あるいは卑近なほど遠くへ

        にゃるらが怖い 『ぼっち・ざ・ろっく!』はひとりちゃんが順当に成り上がっていくルートがいくらでも見えて、取り残されていく感じがあって、それよりは『ソラニン』の何者にもなれないけど痛みとともに大丈夫になってしまう感じとか、『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』の成り上がりが常に後景でしかなく、それが前景化する瞬間に大切なものの喪失に気づく痛みとか、そういうものだけがリアルだと思いたいけれど、成り上がる/成り上がらない・勝ち/負けじゃないと言うためにこそ何らかの「本気さ」は要

        • 20230705 映画『怪物』感想

          是枝裕和監督+坂元裕二脚本+坂本龍一音楽の映画『怪物』。予想の百倍良かったです。今年、これ以上の映画が出てくる気がしません。おい駿、聞いてるか? ネタバレ無しで感想を書くとなると難しいですが、話がべらぼうに面白い、人物描写が多面的で多層的、全員嫌いになれない、現代性の盛り込み方が絶妙すぎる、ショタの色気がエグすぎる、隠喩が練られすぎている、場面の切り方で余白を作るのがうますぎる、マジか、最高か、君たちはどう生きるか、という感じです。 観てない人今すぐ全員映画館に行って観て

        光もやがて死ぬのだろうか

          20230704 メモ:「Fラン大学就職チャンネル」試論

          解説系クリエイターとしてはジャンル史に残るレベルで強い固有名である「Fラン大学就職チャンネル」について考えるとき、その世界や人物がほとんど「いらすとや」で描かれていることは重要に思える。なぜなら、「いらすとや」で描かれるキャラクターは、彼が「何者」であるか──あるいは、「何者でもない」のか──を、一目で伝えるのに最も特化された人間像だからだ。そして数ある「いらすとや」のイラストのなかで、世界から最も求められ、使用されているのはまさに「何者でもない」匿名的な男や女の絵なのである

          20230704 メモ:「Fラン大学就職チャンネル」試論

          20230629 ツイート考:「頭の悪そうな話し方」について

          「医療相談」の仕事をしている人による、「頭の悪い人の相談の仕方」の特徴分析。結構思い当たる節があった。それぞれに関する内省、思ったことをメモしておく。 ①唐突な固有名詞の登場 入り組んだ文脈を持ち出したり、それを背景にしてなにかを語るとき、毎回相手に伝わるように説明できているか自信がない。 たとえばなにか映画や小説の感想を話し合うとき、何も考えていないとうっかり「あのシーンは「批評的」で~」などと口走りそうになるが、批評の読者以外には「批評的」や「批評性」なる概念は全く意味

          20230629 ツイート考:「頭の悪そうな話し方」について