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#29 CCRTシスプラチン治療経過報告と、幸せ長生きをもたらすもの真実について。だから生きていける、と思うこと。

生態学者、文化人類学者で登山家の今西錦司先生の自然学を学びたくて、傍らに、何冊か読み解き書を置いている。深遠で高邁な学びを、チラとでも仰ぎ見るのは、先達の辿られた道を行くのが最短ルートなのだから。
先日、思わず抱きしめたくなる一節に出会った。

何か神秘的な自然体験を積み、自然との一体感、至福感に包まれることによって、自然が、単なる地形や物ではなく、精神とつながっている印象をもつようになる。
今西は、大慈大悲といった「自然の根底にある包容力」とも表現したように、自然そのものに、変わり、創り、滅びていく力が本来あるという確信につながる。

木村貴好『今西錦司 自然学の創造』2023年、デザインエッグ社

そうだ。
自然の中の人間の身体にも、変わり、創り、滅びていく力が本来的に備わっている。

来週月曜日、放射線治療の次の段階の準備のために、築地の国立がんセンターで診察を受けることになった。入院中の外出として受診するのだが、そこに持参するのに撮ったMRI画像を先生に見せていただいた。
いはく、

「残念ながら、腫瘍はやや増大していますが、顔つきが変わっていて、治療効果と言えるかもしれません。腫瘍マーカーが、4分の1に下がりましたから」

とのこと…!
前半の「残念ながら・・・」、の部分はスグに忘れてしまった。
ビフォーアフターの画像を見てみると、良いニュースしか頭に入ってこなかったのだ。
そして、昨年10月から、にわかに異変を告げていたSCCという腫瘍マーカーは、49から11へと見事な斜度を表していた。
何よりこの2日前から、あの忌まわしい38度超えの高熱が出なくなってきたのだ。これは、実感を伴う、変化だった。


入院時の画像を見てみる。目が、ある部分に釘付けになる。
骨盤の右半分を、得体の知れない、じゅくじゅくした、まあるい一個の物体が覆い尽くしているのだ。それは骨盤壁にベッタリとへばり付き、グイグイと臓器を押している圧力を見せている。左側の方にも膨らもうとするゴム風船のようでもある。はち切れそうだ。目を向けるだけで鼓動が早まる。

そして、昨日の画像。

ワオ!!
KO前のボクサーの顔ではないですか!!
じゅくじゅくの外壁の一部がところどころ白くなって、固まった感じ。真ん中のじゅくじゅくにも、疎な部分がうっすら浮かんでいる感じもする。
おお!!
絶対、この白いところは、白旗だ、リングへの白タオルだ。滅する途上だ。塊ができた分、じゅくじゅくも生き延びようと、逃げ惑い?、広がろうとしているようにも見えるが、そこは毎日核弾頭ミサイル(放射線治療)を受けているので、シェルター探しに苦労しているようでもある。
がん細胞は、細胞に備わっっている、滅びの力を失ってがん化する、とも言えなくはないだろうか。治療によって、滅びが与えられれば、このじゅくじゅくじゅくだって、悪夢から解き放たれるはずだ。

ワタシは、先週、会社の素敵な同僚が届けてくれた、千羽鶴と、彼女と彼女と同じく海外グループを預かる同僚が、それぞれに足を運んで手に入れて来てくれた、東西日本の病気平癒・がん封じの大名刹のお守りのことを思い出した。

アレだ。
あのご利益だ…。

西の名刹は、奈良、南都七大寺のひとつ、大安寺。
聖徳太子を創建の祖とする大安寺は、平城京の時代にこの場に遷寺し、仏教の総合大学として栄えた。鑑真和上を日本にお連れくださったのも大安寺の普照僧だ。最澄も空海もそれぞれに大安寺に縁がある。

東は、封じの宮として知られる行田八幡神社。
埼玉県行田市の中心部にある。行田市には、国宝「金錯銘鉄剣」が出土した稲荷山古墳など、有名な古墳が群集する「埼玉(さきたま)古墳群」があり、埼玉県名発祥の地として知られている。行田八幡の虫封じ、がん封じは有名で、秘法として伝承される御祈願があるという。

ここへ、お二人はそれぞれ、忙しい時間を割いて、遥々と、旅をして来てくれたのだ。

治療効果は、単に、神仏の神秘だ、と言いたいわけではない。この御守りと千羽鶴を受け取ったとき(そして、他に、、心に深く響く大事なメッセージと想いを送ってくださった方がいた)、そう、コレは、何がなんでも、本当に良くならないといけないぞ、と、ものすごく、闘志が湧いたのだ。絶対に、負けないぞ、と。元気になって、お一人お一人に自分で御礼をお伝えするんだぞ、と。
最大のご利益とは、ワタシに心を寄せてくれるこんなにもたくさんいるということと、その人たちとの温かな関係を再認識させてくれたことだ。決して、一人で闘っているのではないし、必ず、快復するんだという、そういう闘志がみなぎってきたことなのだと思う。
それこそが、恩恵なのだ。

#15の『後世への最大遺物』で書いたけれど、財や才覚や、地位や名誉がなくても、後世に残せるものがある、それは、苦難や苦境に、自分という人間がどう立ち向かって生きたか、そのものだと。

そして、もう一つ、思いだす。

TEDで見た、ハーバード大学精神医学教授のロバート・ウォールディンガー博士のご研究だ。これは、84年に渡る長期間、総勢2000人超の被験者、調査協力者を追跡調査した成人の発達に関する研究だ。一つの研究が、85年続くということはものすごい奇跡だ。研究者から研究者へ、四世代に引き継がれて、生き延びた研究なのだ。

この研究の目的はシンプルだ。
一生を通じて、私達を健康で幸福にしてくれるものは何か、を特定すること。
そして、その結論も極めてシンプルだ。

(ネタバレにならないように、TEDからご覧いただく方のために先に動画をご紹介します。コチラ、必聴オススメです!)

結論は、Good Relationship.
(健康で幸福な人生をもたらすものとは、つまり)良好な人間関係。ピリオド。

研究は、1934年にスタートした。ハーバード大在学中の10代の知的エリートと、比較対象として、ボストンのスラムにすむ10代の若者、合わせて700余名の男性が被験者として選ばれた。その後の彼らの人生を、その家族やコミュニティ、医療受診記録を含めつぶさに追跡したのがこの研究なのだ。
そして、ここから、健康で幸せに長生き、というのは、どれだけ裕福な生活をして、どれだけ預金があるかではなく、また、結婚しているか、いないか、あるいは、子供の有り無しなどとは、全く無関係であったという結論が導出されるのだ。

昨夜、このことを数年ぶりに思い出して、もう一度、TEDの動画を見てみた。
大事なことほど、忘れてしまいやすい。本当に。


こちらも、ウォルディンガー博士の言葉。

人は交流し合い、助け合うために他者を必要とするし、他者とつながり、他者に支えを与えることで幸せを感じる。

ロバート・ウォルディンガー 東洋経済オンライン2023/07/29


そうだ。そういえば。
いい加減、麻雀断ちをしている母のメンタルヘルスも気掛かりだ。いや、母の心配はしていない。母は昨日も雨の中、颯爽と現れて、ダイモンミチコのアレ(胸に手を当てて気を送る儀式)をして帰っていった。
昼のランチには、駅前の商店街に、博多ラーメンの店を見つけて、半玉にしてもらって食べてきたというから驚く。ちょっと塩辛かったけど、とっても美味しかったと言っていた。
その前の日は、サイゼリヤでトマトのサラダとエビのアヒージョと赤ワインを1杯で、至極ご機嫌だったと言っていた。こういう話を聞くのが、ワタシは、一番、嬉しくて、楽しい。

心配なのは、母ロス?の健康麻雀教室のお仲間だ。
今日(2/23)は祝日だし、今日こそ来るかな?と電話やLINEが入っていることだとう。
御免なさい、、、今、ワタシが長期にお借りしております。幸せでお戻りいただきますのでご心配なく。

写真は、再び宮崎、平和台公園の埴輪。
みんな幸せそうだ。





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