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#17 人生イチの激痛?! 尿管ステントカテーテル留置術 【大脱線と恐怖の前編】

この大学病院には、約3800人の職員・医療従事者の方がおられて、医師は、研修医を含めず、約900名おられるという(!!)。いつも、患者さんも多いけれど、お医者さんが本当に多い。この日も、立派な、素敵なドクターが病室に来てくださった。
午前10時ごろ、泌尿器科の、若い、女性のお医者さんだ。

ワタシの主治医から、尿管ステントカテーテル留置を、この二日以内に実施してほしいという緊急オーダーが入ったという。この手術に対応できる手術室と泌尿器科の専門チームは限られており、予約は3ヶ月先までビッシリ入っていたそうだが、なんとか、その日、1月31日の14時から16時の間に対応可能になったのだと、後から、看護師さんに聞かされた。

先生が、ワタシの泌尿器周りの病態と、手術について詳細なご説明をくださる。
右の腎臓の輸尿管が閉塞して、腎盂が拡張した状態であること。完全閉塞してしまう前に、尿管の中に尿管ステントカテーテル(以降、単にステントといいます)を留置する手術で、尿管から内視鏡を入れ、その後、レントゲン透視で位置を確認しながら、ガイドワイヤーを狭窄位置まで進め、ステントを留置する。腎臓から尿を持続的に膀胱内に排出できるようにするのが目的だという。

先生は、事前に理解しておいていただきたい事、として、わかりやすく、丁寧にお話を進められる。内容を十分に理解した上で、この手術に同意するか判断いただきたい、と言われる。

まず、「手術は私の他、2名の男性医師、放射線技師など男性スタッフが行います」「手術台は、いわゆる、股を広げた格好で、恥ずかしい思いをされてしまうと思いますが、全員が専門家なのでご安心ください」とのこと。

なんの。
全く問題にならない。

そもそもが、ワタシがメインでお世話になっている産婦人科なんて、患者さんの99.9%が女性なのに、圧倒的に男性医師の方が多い。

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製薬会社に勤めていた頃、秋篠宮妃紀子さま(継承は当日とさせて頂きます)の、悠大さまご出産を担当された、安達知子先生が仰っていた。
患者さんの99.9%が女性なのに、長年、産婦人科学会の役職者にも女性は皆無で、学会の意思決定に女性の本音が反映できていない、という趣旨のことを仰っていたと思う。
安達先生は、当時、東京港区にある愛育病院の副病院長になられたばかりだったと思う。その後、病院長に昇格される。そのほか、日本産婦人科学会の理事、評議員などの要職を務められ、風穴を開けてこられた方だった。

安達先生ご自身、結婚、出産を経験されながら、時間も不規則で早朝夜間の呼び出しも日常茶飯事という超絶激務の産婦人科勤務を続けられ、確か、産後6週を経たずして通常勤務に戻られたと仰っていた記憶がある。労働基準法第65条母性保護規定で産前産後の休業について明確に定められる前のことだったのではなかっただろうか(1999年、で正しいだろうか、、間違っていたらご指摘をお願いしたい)。
女性であること自体が、仕事上のハンディキャップになるという時代だったのだ。男性仕様に完成された組織の一員となり、そこで力を発揮し、メンバーを率いていく立場となることは容易なことではない。男性と同化することなどたとえ気持ちの上ではできたところで、到底叶わないことだ。性差を超えて、個人としての強みを磨き、そして活かし、周囲からも応援をされる人柄を育てながら、信念を持って、しなやかに、賢く、戦わなくちゃいけない。

製薬会社に勤めて、本当に幸せだったのは、生涯のロールモデルとなるような、人格、知性、品性に優れた、まさにに人生の師というべき素晴らしい先生方にたくさん出会わせていただけたことだ。
出会いと憧れが人生を作ってくれた。

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これまた、大脱線してしまった。。。
泌尿器科のO先生は、手術に関する次なるリスクをお示しになる。

「今日の手術は麻酔なしで行います。アセトアミノフェン(カロナールの成分の鎮痛剤)の点滴を行いますが、多くの患者さんが、」
少し間をおいておっしゃる。
「生きてきた中で、一番痛い、と仰られます。」

なぬ!? 
ワタシは、口が半開きのまま固まった。
歯医者さんでも無痛治療の時代だ。
なぜ麻酔なし?

先生の理路整然としつつ、患者第一のお考えとわかるご説明を、ココに再現するのは難しいのだけど、通常、外来日帰りで行われる30分から1時間弱の手術であり、麻酔を行うために入院するケースは極めて少ないとのこと。麻酔に拘れば、手術のスケジュールは月末にずれ込むだろう。

ワタシの新たな治療計画「プランB」の成否を決める最大のポイントは、スピード。
とにかく、出来うる限り速やかに、CCRT(Concurrent Chemoradiotherapy:化学療法・放射線治療同時併用療法)を始めることだ。そう、この、一週間で直径を倍にしてしまう速度で成長する、骨盤の腫瘤との、スピード勝負なのだ。
治療計画では、癌腫瘤に対する放射線照射治療を、30日間「毎日」15分程度、照射する。ただし、土日は休みで回復日に充てる。がんと戦うのも週休2日なのか、、、というのがなかなか笑える。そこに、週に1回、曜日を固定して、シスプラチンの投与を重ねて行う。

TC療法は中20日登板だったが、CCRTのシスプラチン(TC療法のカルボプラチンは、シスプラチンの強烈な副作用を軽減した新しい薬だった。詳しくは#12 白金製剤の謎で書いた)単剤を、毎週投与するのだ。
シスプラチン…、あの、とうとう、アレだ。
映画で見る、ゲーゲー吐くやつでしょうか、、、
と、これについては、産婦人科の先生のお聞きしたが、いやいや、制吐剤も進化してますから、大丈夫です、とのこと。
また、CCRTとの相性は、シスプラチンが断然良いのだとのこと。改良版はダメなのだ。やはり、元の妻が良い、と。(伊勢物語)

なるほど。
45年以上まえから使用されている、元祖白金製剤が、バリバリの現役なのだ。
アラフォー(?)のシスプラチンは中6日の登板か。
強いな、シスプラチン。
どうなっちゃうのだろう、ワタシの身体。

さて、半開きの口に戻ろう。
この、CCRT、腎臓に大変な負担を与える。水腎症を治しておかないと、とても持ちこたえられないのだ。途中、尿管の閉塞が悪化して、完全に詰まったりしたら、背中側から、腎臓に針を刺して、そこから尿を外に出す、という腎瘻、というのが必要になるとのこと。

口は、まあるく、大きく開いてしまった。
あんぐり。

背中に管が出ていると、寝返りがキツイらしい。
いやいや、そんな問題ではない。
背中から、お小水の管が出ていて、また、それを貯める尿バッグを持って、どうすれば、ピタピタのワンピースを着て、ハイヒールを履いて、銀座にお出かけできるのだ?!

無理だ。。。

尿管ステント留置は絶対に、すぐに必要だ。なのに、奇跡的に、今日、手術室とチームの空きスロットが1つだけあって、そこで、この手術をやってくださるというのだ。
是非に及ばず。

「一番痛いのは、内視鏡の挿入時です。その太さがコレくらいです、」
と、胸ポケットに刺したボールペンを示される。
ふ、ふ、太い…。
先ほどの決意はどこへやら、早速動揺する。

どうやったら、手術中、気を失っていられるだろうか。
浴びるほどワインを飲む。残念ながら入院中はできない。
誰かにボコボコに殴ってもらう。これでは、その誰かがお巡りさんに捕まってしまう。
麻酔や意識消失が得られる鎮静剤の投与には、呼吸管理がいる。必要な医療体制が段違いなのだ、、、
そんなに痛いんですか…、と露骨に落ち込んだ姿を見せてしまった。

先生は、
「はい、一生最大、とおっしゃる患者さんが多いです。患者さんにはどれだけ泣き叫んでもいいですよ、と言っています。どうしても痛い時は、少し、動きを止めて休憩したりもできます。我々もできうる限り、短時間で、確実に終わらせるように最善を尽くします。お産の時の痛み、なんておっしゃる方もいらっしゃいますね」と仰った。

その言葉に、ぽっ、と闘志に燃える火がついた。
お産なら、世の多くの女性がご経験されていることではないか。なんだ、大丈夫だ。戦えるぞ。
徹頭徹尾、真摯なご説明をくださる先生に、「頑張ります、今日、よろしくお願いします」とお答えした。
一つだけ、付け加えると、、このステント、留置して終わり!ではなく、3ヶ月に1回、交換が必要になる、とのこと。3ヶ月に一回、出産の痛みをバーチャルに経験できるという、特典付きだったのだ・・・。



14時になり、手術が始まった。
ワタシは自分に誓いを立てていた。
「絶対に、ただの一度も『痛い』と言わない」というものだ。

果たして、、ワタシの誓いの顛末は。
いいかげん、長くなってしまったので、今日はこれにて。
(えーーー?!ですよね。。
 すみません、、、今日はエネルギーが切れまして。)


読んでますよ、と、心から愛する人たちがメッセージをくれる。
本当にありがとうございます。ココロの支えです、
次のページへの活力となります。
ちょっと暗めの闘病をテーマにした迫真の?ノンフィクション、かつ、筆者がネクラなので(?)限界がありますが、もうちょっと、面白く書けるように頑張ります!

写真は、十年も昔、スウェーデンの自然公園にいた、山羊。
こういう、悟りの境地を目指したい。





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