子供のためのルーブル美術館(44)この目にうつるものはなに?/ひとりぼっちの少女•ドラクロワ
いったい何が?
こんなさびしい場所にたったひとり。後ろにはお墓が見えます。
この少女にいったい何があったのでしょう。
冷たく薄い色のドレス、首の暗い影。少女の左わきに見える黒い土まで悲しい色をしています。
動こうとしているのに、だらんと置かれた手は全然元気がないし、
いっぱいに見開いた目には涙があふれて、どこを見ているのかもわかりません。
少女の住む島は、ギリシアとオスマンの戦いでめちゃめちゃになってしまったのです。
少女はひとり逃げ出したのでしょうか。もう誰もいない。悲しい、恐い。
助けて、という声も届かない絶望の目。
今から200年前、この墓場の少女を描いたのはドラクロワでした。
新聞の記事でキオス島の戦いを知ったドラクロワは、人々の悲痛な様子を想像して描いた少女や老女の絵をもとに、歴史に残る絵を描きました。
ドラクロワの絵にとって何より大事にしていたのは色でした。
この絵でドラクロワは、今にも動き出しそうな苦しみの中の人々を、カラフルでつやのある色を使ってドラクロワならではの色彩で表現したのでした。
Eugène DELACROIX
Jeune orpheline au cimetière.
Salon de 1824 sous le titre « Étude »
ウジェーヌ・ドラクロワ
墓地の若い孤児 1824 サロン「習作」
Eugène DELACROIX
Scène des massacres de Scio:familles grecques attendant la mort ou l'esclavage 1824
キオス島の虐殺
お読みいただきありがとうございました。
ドラクロワの絵の中でも強烈な印象のある作品はいかがでしたでしょう。テーマはあまりに暗く悲惨ですが、ドラクロワの美しい色使いや動きのある表現に評価の高い傑作です。絵は心地の良い物ばかりではありませんが、当地ではグループ見学の子供たちにも鑑賞される作品です。
この少女の目は、習作として描かれた作品とはいえルーブル美術館のドラクロワの展示室でも何事かと思うインパクトの強い絵です。
敬愛する友人ジェリコー作品、遭難したメデュース号の筏の絵を見て感銘を受け、その友人の早すぎた死後ついにキオス島の虐殺は完成しました。