Lousism review

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Lousism review

個人文芸サークルLousism のレビュー投下用ページです。音楽、小説、漫画、その他読み物など更新は遅いですが1000字程度で挙げてます。サークルの活動状況はTwitterのほうをご覧ください。

マガジン

  • 1000字レビュー《その他読み物》

    新書や評論など、小説と漫画以外の読み物の1000字レビューです。あくまで勉強のために読むものなので、このカテゴリについては点数は付けません。

  • 1000字レビュー《小説》

    小説作品の1000字レビューです。活字を読む体力が減ってきてるので投稿遅いです。一応国内外の文学作品がメインのはずなのですが、エンタメ作品に逃げる場合もあります。

  • 1000字レビュー《漫画》

    漫画作品の1000字レビューです。一応点数を付けるので完結済みのみ扱います。巻数の多い作品は(うちの本棚が狭いので)あんまり取り上げないと思います。

  • 1000字レビュー《音楽》

    音楽CDアルバムの1000字感想です。主に御茶ノ水のディスクユニオンで買い漁ってきた古めの洋楽がメインです。でも音楽の知識は全然ないので御容赦下さい。

最近の記事

創作者の体感世界

創作者の体感世界 /横道誠  えーと、すまん。  途中から流し読んでしまった……  筆者は発達障害と診断された文学研究者。発達障害者を「脳の少数派」と捉えることで異議申し立てを行う「脳の多様性(ニューロダイバーシティ)」という考え方や、マイノリティである当事者が批評を通じて自己の体験世界を表明する「当事者批評」というアプローチに基づいて、発達障害当事者の立場から十六人の創作者を批評するという一冊。  さて、本書において筆者は創作者の文章や言動から発達障害的な傾向を見出

    • 飛ぶ男

      飛ぶ男 /安部公房  とある中学教師のもとに掛かってきた、弟を名乗る人物からの謎の電話。月明かりに現れた飛ぶ男。そして飛ぶ男を空気銃で狙撃した女性。奇妙な邂逅を果たした三人の行く末や如何に……?  安部公房は小説の執筆にワープロを利用した最初期の一人で、未完の遺作『飛ぶ男』がフロッピーディスクのなかから発見されたことでも有名である。中古で単行本を入手済みではあったのだけど生誕百年記念で文庫化されたのでこの機会に購入。同じく未完でモチーフに共通点のある『さまざまな父』を同時

      • 商店街のあゆみ

        商店街のあゆみ /panpanya  ところで先に挙げた『ふたりで木々を』も『いっていっぱいいって』も、作品論というよりむしろ作家論になってない? などと思われた方々。うん、然りである。ショートショート作品集なので1000字では大掴みでしか語れないというのもあるけど、平方イコルスンも位置原光Zも余りにも個性が安定し過ぎていて単行本ごとの評価を付けづらいのだ。なので点数についても無難に8点でお茶を濁してたりする。  本作もまた白泉社の楽園(自称恋愛系コミック最先端)からpa

        • いっていっぱいいって

          いっていっぱいいって /位置原光Z  「白泉社の楽園(自称恋愛系コミック最先端)で掲載されてた非常識系対話型ショートショート作品集」と説明すると、平方イコルスンだけでなく位置原光Zまで該当してしまうから不思議だ。どちらも全編手書き文字だし、トーンを極力使わない徹底した線描派であるところまで似通っている。まるで同人文化の延長にあるようなフリーダムで個性迸る作風だけど、しかし両者はやはり決定的に異なる才能であるのも間違いない。  位置原光Zの真骨頂はエロネタである。下品さとい

        創作者の体感世界

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        • 1000字レビュー《その他読み物》
          8本
        • 1000字レビュー《小説》
          4本
        • 1000字レビュー《漫画》
          5本
        • 1000字レビュー《音楽》
          17本

        記事

          ふたりで木々を

          ふたりで木々を /平方イコルスン  デザイン性の高い手書き文字、線描と黒ベタによる平坦でいて濃ゆい空間表現、止め処無く溢れ出してくる天才的な会話劇のセンス……『成程』や『スペシャル』などの孤高の怪作を送り出し続けている異才、平方イコルスンの最新作。  非常識系対話型ショートショート作品集、とでも呼べばいいのだろうか。基本的には制服を着た女子高生達(とも限らないけれど)が、特定の話題についてだらだらと「下らない」お喋りをしてるだけである。ただしそのお喋りの内容がどれもこれも

          ふたりで木々を

          ガベージコレクション

          ガベージコレクション /粟岳高弘  舞台は1995年。とある中学校のマイコン部に所属する春菜と和美は、後輩の少女から謎のハードディスクを託された。不可解な挙動をする旧型のパソコン。勝手に動き出した犬のようなぬいぐるみ。そして町のなかに実体化する奇妙なブロック。何者かから攻撃を受けた二人は、正体不明の指示に従って町外れのトンネルを目指すが……  ノスタルジックな(或いはもっさりとした)景色が広がる田舎町、やたらスクール水着を着せられる少女達、平然と周囲を跋扈する妖怪じみた異

          ガベージコレクション

          ころぶところがる

          ころぶところがる /黒田硫黄  ロードレースを題材にした『アンダルシアの夏』という短編漫画がある。茄子というワンテーマから無茶苦茶に想像力が飛躍していく黒田硫黄の怪作『茄子』のなかでも屈指の名作で、アニメ映画化されたことでも知られる。  本作はその黒田硫黄が、己の自転車趣味を全開にして自転車雑誌に連載していた「自転車漫画」を収録した作品集だ。主にディープでマニアック過ぎる自転車エッセイ、三蔵法師がトラブルに見舞われながら自転車に乗って天竺を目指す『西遊記』シリーズ、火星の

          ころぶところがる

          T-BONE WALKER

          T-BONE WALKER /T-BONE WALKER(1990)  あらゆるものは模倣を繰り返してうちに原点から遠ざかっていくだろう。洗練され、複雑化し、そして変容して別のジャンルへ進化していくだろう。だからこそ、改めて原点に立ち返ってみると、一切の過不足なく全てが揃っていることに驚いたりする。  ブルースにエレキ・ギターを導入した最初期のギタリストであり、B.B.キングら後世のミュージシャンに多大な影響を与えたT-Bone Walkerの1940年代の録音を収録した

          死と乙女

          死と乙女 /アリエル・ドルフマン  (飯島みどり訳)  舞台は独裁体制から民主主義への移行途上にある国。前政権の犯罪を追及する調査委員会の一員である弁護士と、その妻が海辺の家に住んでいる。ある日、道で立ち往生した夫はとある医師に助けられ、彼を一晩自宅へと泊めることになった。しかし突如として妻がこの医師を監禁してしまって……  チリの作家による戯曲作品。たった三人の登場人物が織り成す緊迫した密室劇である。作品の背景には1990年のチリの民政移管、そしてピノチェト独裁政権の犯

          恐怖の正体

          恐怖の正体 /春日武彦  同じ著者の『奇想版精神医学事典』(河出文庫)という分厚い一冊があって、一時期は就寝前のお供として、パラッと適当に頁を捲って出てきた項目を拾い読みするということをしていた。この「事典」における著者の博覧強記っぷりには感嘆するものがあって、商品説明に「奇書」とまで書かれているのも納得の読書体験だった。  さて、本書は『恐怖の正体』という直球な題名だけれど、別に本格的な心理学や生理学を取り扱うような専門性の高い内容ではなかった。またその豊富な引き出しか

          恐怖の正体

          美術の愉しみ方

          美術の愉しみ方 /山梨俊夫  最近色々と私生活がゴタゴタしていて、活字の読書は随分久し振りになってしまった。取り敢えず手元にあった新書を読了。著者は神奈川県立近代美術館、国立国際美術館の館長を務め、多くの展覧会を企画した人物。本書は作品や美術史の解説ではなく「最初の道標」を目指した入門書として意図されていて、豊富なカラー図版を用いて美術に触れるための七つのアプローチを提示している。  正直言えば、ちょっと読みにくい一冊だったと思う。入門書にしては抽象的・観念的な表現が多過

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          Naked Songs

          Naked Songs /Al Kooper(1973)  Like a Rolling Stoneのオルガンを弾き、Blood, Sweat & Tearsを結成し、Mike Bloomfieldと共演し、Lynyrd Skynyrdをプロデュースし……経歴からして重要なアーティストであるのは間違いないのだけどどういう人物なのかいまいち良く分からず、しかもAlice Cooper(グラム・ロックの代表格の一人)と名前が似ていてなんか紛らわしい。  そんなAl Koope

          CHICAGO TRANSIT AUTHORITY

          CHICAGO TRANSIT AUTHORITY /CHICAGO TRANSIT AUTHORITY(1969)  CHICAGOといえばBlood, Sweat & Tearsと並ぶブラス・ロックの代表格。CHICAGO TRANSIT AUTHORITYなんて名前でデビューしたら、本物のシカゴ交通局から苦情喰らって改名することになったという逸話が有名である。  デビュー作ながらレコード二枚組相当という当時では破格のボリュームと完成度を両立しており、期待通り豪華なブ

          CHICAGO TRANSIT AUTHORITY

          はじめてのスピノザ

          はじめてのスピノザ /國分功一郎  『中動態の世界』の著者、國分功一郎氏によるスピノザの思想を平易な言葉で噛み砕いた入門書……なのだが非常に手強い一冊である。個々のテーマの解説は分かりやすいのだけど、個々のテーマの接続が余り滑らかでないような印象を受けたのだ。  先ずスピノザの「汎神論」について。神は無限である。無限で外部を持たないなら、万物は神のなかになければならない。つまり神は宇宙や自然のような存在である。ならば我々人間を含む万物は、神の実体の一部が、一定の形態と性質

          はじめてのスピノザ

          Tuesday Night Music Club

          Tuesday Night Music Club /SHERYL CROW (1993)  YouTubeを漁ってたらMy Favorite Mistakeのライブ映像を発見して、おおこれいい曲やな、と琴線に触れるものがあったのだ。今回入手した1stアルバムにはこの楽曲は収録されていなかったけども、一先ずは期待通りのものは得られたんじゃないかなと思う。因みに僕は英語の聴き取りが壊滅的で、歌詞カードを終始追い掛けてやっと半解というザマなので洋楽のシンガー・ソングライターとは相

          Tuesday Night Music Club

          VAMPIRE WEEKEND

          VAMPIRE WEEKEND /VAMPIRE WEEKEND(2008)  ヴァンパイアで、インディー・ロックで、アフロ・ポップなのだそうだ。この時点で錯綜している。本国で商業的にも批評的にも成功を納めたUSインディー・ロックバンドの1stアルバムで、デビューアルバムとは思えない自信に満ちた完成度の高い一枚なのだけど、しかしどうにも得体が知れない感じがする。  先ず#1からして、古風な映画のBGMみたいな華やかで煌びやかな音楽に乗せて、鼻に掛かったキザったいボー

          VAMPIRE WEEKEND