木下康彦/木村靖二/吉田寅編『詳説世界史研究 改訂版』について

今日は木下康彦/木村靖二/吉田寅編『詳説世界史研究 改訂版』山川出版社、2008年を紹介したい。

本書の目的は、人類が過去から未来への方向を案出することである。

そこを目指して、本書は高校レベルの世界史を自学自習するための参考書として編集された。しかし、本書は、漫然と学ぶのではなくて、読者が世界史をみずから再構成することを勧めている。

というのも、われわれは過去を学ぶことで現在の意味を知り、未来への展望をもつことができるからだ。実際、人は自ら生活する世界がどのようなものか知ろうとする。それによって、自分が存在する意味を確かめようとする。

具体的に述べると、21世紀に入った人類には必ずしも明るい展望が開けているわけではない。だからこそ、未来への方向を示唆する英知が過去の資料庫、つまり世界史の焦点である。

 一方, 第三世界の人口問題, 地球環境問題, 旧ソ連諸国の大量破壊兵器の拡散の危機, 新しい民族紛争, 解決の糸口のみえないパレスチナ問題, イラク戦争など, 21世紀に入った人類には必ずしも明るい展望が開けているわけではない。危機を回避しようとする人類の努力を裏切って, 歴史のさらに大きな激震はあるのか, 人類は英知を歴史から引き出すことができるのか, わたしたちは世界史から学ばねばならない。〔…〕わたしたちは世界史を学ぶことによって, 過去から未来への方向を考えなければならない。
 人はだれでも, 自分たちの生きる世界がどのようなものかを知ろうとする。それによって, 自分が存在する意味を確かめようとする。〔…〕歴史は人間にかかわるさまざまな事象について, なぜそれがそこにあるのか, なぜそれがおこったのか, なぜそれがそのようになったのかということを説明してきた。〔…〕
 本書は, 高校レベルの世界史をみずから学ぶための参考書として編集されたものである。〔…〕これを参考に, 世界史をみずから構成してみようとすることがもっとも望まれる世界史の学習である。

木下康彦/木村靖二/吉田寅編『詳説世界史研究 改訂版』山川出版社、2008年、1-3頁。

本書の目標は、温故知新という四字熟語に集約される。 

しかし、本書はただその点を強調するのではなく、数多の人文書と同様に、人類史的展望のもとで世界史学習の意義を説いている。以後、編者の目論見のもとで、本書を分析したい。

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