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カルチャーコラム100連発

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目につくものすべてがネタです! 毎週木曜更新でカルチャーについて語っていきます。
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#ポスト構造主義

ドゥルーズ『フーコー』宇野邦一訳、「新しい古文書学者(『知の考古学』)」について⑥--主体

ドゥルーズは言表における主体を論じる。

文の観点から見ると、〈主体〉は言説を開始する力をもっている。しかし、言表は〈主体〉という唯一の形態とは関係なく、むしろ可変的な内在的位置に関係する(「長いあいだ、私は早くから床についた……」という言説が言語学的人称としての〈私〉にも、作者プルーストにも結びつくように)。内在的位置は〈主体〉の形象という形式に還元されない。むしろ逆に、内在的位置が言表に由来し

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ドゥルーズ『フーコー』の賭金

『フーコー』の賭金は何だろうか。一度、論文の冒頭に立ち返って確かめたい。

ドゥルーズはある事柄に着目する。つまり、古文書学者は方針にしたがって振る舞っているということである。

さらに、ドゥルーズはある事に言及する。人は、古文書学者の著作に、哲学における新しいもの、美しさがあると言うのだ。

今後、古文書学者の方針、その著作の新しさ、美しさという問題が賭金であると仮定して、論を進めていく。

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ドゥルーズ『フーコー』宇野邦一訳、「新しい古文書学者(『知の考古学』)」について⑤--並行的空間、規則、ベクトル

前書き↓

①↓

②↓

③↓

④↓

※今回の記事は数学用語をかなりラフに使っています。もし数学プロパーの方がいらっしゃったら、ご教示いただけると幸いです。

引き続き、ドゥルーズは言表の規定を試みる。かれは言表とその他の要素との関係を素描する。

並行的空間は、同じ集合に属している他の言表によって形成される。しかし、言表と空間は形成の規則の水準では同一である。というのも、言表の集合や族を形

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ドゥルーズ『フーコー』宇野邦一訳、「新しい古文書学者(『知の考古学』)」について④--トポロジー、あるいは形而上学の密輸?

前書き↓

①↓

②↓

③↓

※今回の記事は数学用語をかなりラフに使っています。もし数学プロパーの方がいらっしゃったら、ご教示いただけると幸いです。

前回、筆者は「実定性」なる用語について、どこまでも現実でありながら、事後的に理論が発見されることを含んでいると理解した。ドゥルーズは言表の規定を推し進める。

大切なのは、言表の規則性である。さらに、代数学のようなものより、幾何学のようなもの

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ドゥルーズ『フーコー』宇野邦一訳、「新しい古文書学者(『知の考古学』)」について③--言表の規定

前書き↓

①↓

②↓

前回確認したのは、言表がとある体系を指示しているという理解だ。さらに、ドゥルーズは言表の規定を試みる。

言表は事実上、稀少であるし、理論上も稀少である。

ドゥルーズはまず、理論の問題を論じる。稀少性の法則は言表を命題と文に対立させる。

タイプにしたがって、論理学は第一に、命題を他の命題の上に置く。理論的な上位に位置づけるわけである。

第二に、論理学は可能性と現実

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ドゥルーズ『フーコー』宇野邦一訳、「新しい古文書学者(『知の考古学』)」について②--数学から言表へ

新しい古文書学者の物語はどう展開するのか。

彼はとある概念を問題にする。つまり、言表である。ここで注釈するように、論理学を無視する。論理学ではなくて、むしろ数学によって、われわれは言表を読み解くことができる。

その際に彼が分析する唯一の例は、文字である。それも、偶然に記された、あるいは機械から書き写された一連の文字である。機械自体は言表ではない。しかし、機械に印字された文字列はとある体系の言表

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ドゥルーズ『フーコー』宇野邦一訳、「新しい古文書学者(『知の考古学』)」について①--古文書学者

『フーコー』はとある古文書学者の物語から始まる。

この古文書学者には、方針がある。

しかし、かれはさまざまにレッテル貼りされてきた。それに反し、新しいものが哲学のなかに生まれていると判断する者もいる。

古文書学者は賛否両論の渦中にいる。

筆者は、偉大な思想家なら誰もが直面する毀誉褒貶に立ち会っていると感じる。今後はどうなるのだろうか。

ドゥルーズ『フーコー』宇野邦一訳「前書き」について

今回からしばらく、ジル・ドゥルーズ『フーコー』を紹介したい。

まず、本書を紹介する前提条件を確認しよう。原著は1986年に Minuit 社より刊行された。構成についてだが、本書は複数の論文からなっている。いわば、アンソロジーと呼ぶべき書物である。

本書がアンソロジーである効果については、いつか論考が完結したときに検討しよう。

※本記事は必要な参照を欠いているため、よろしくないが、その点につ

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