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ゴッホが描いた、アルルの女

私は会社員として働く傍ら、対話型アート鑑賞ファシリテーターとして、オンラインイベントを開催しています。

対話型アート鑑賞とは、鑑賞者同士で気づいたことや感じたことを話し、お互いに気づきを得ながらアートを鑑賞する手法です。

簡単に言うと、美術館などで静かに一人でじっくり作品と向き合うのとは反対に、複数名で雑談しながらアート作品を鑑賞することです。

面白いのは、知識が一切不要なこと。「作者はの意図は〇〇で」「〇〇年代の作品で」などの知識は一旦横に置いて、あくまでも自分が見て感じたことや考えたことを話し、他の人の意見にも耳を傾ける場です。正解はありません。

今週、所属しているオンラインサロンの仲間4名が集まってくださり、Zoomを使ってオンライン対話型アート鑑賞イベントを実施しました。

参加いただきました皆さん、楽しいお時間、また、多くの気付きや今後活動していく上での率直なフィードバックをありがとうございました!

知識不要の対話型アート鑑賞ではあるものの、参加者の皆さんから「そうはいっても、知識の部分が面白い」「対話型をやったからこそ、絵の背景を知りたくなった」というご意見をよくいただきます。

そこで、この記事では、今週のイベントで鑑賞したゴッホの『アルルの女ジヌー夫人』について、解説させていただきます。


ゴッホ『アルルの女 ジヌー夫人』

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L'Arlésienne: Portrait of Madame Ginoux  

Vincent van Gogh 1888–89 

ゴッホがアルルに滞在していたときに描いた作品です。

ジノー夫人は、アルルでカフェCafé de la Gareを経営する女性。ゴッホは彼女の経営するカフェに併設されている宿に泊まっていました。

ゴッホは同じジヌー夫人の絵を他にも描いていて(計8点と言われています)、こちらの作品はメトロポリタン美術館に収蔵されているものです。

また、アルルでゴッホと共同生活を送っていたフランス人画家、ポール・ゴーギャンも、同じジヌー夫人を描いています。

ジヌー夫人のこれらの作品は、下記Wikipediaに掲載されています。各作品の描き方がかなり違うので、興味がある方は各作品の特徴を比べてみてもおもしろいですよ。

それでは、これからこの絵に関する美術史の観点からの豆知識を2つご紹介します。

豆知識①ジャポニスム Japonism 

まずひとつめはジャポニスムについて。まさに、対話型アート鑑賞イベントでも、参加者の皆さんからも「日本の影響を受けた絵なのでは」「髪はかんざし付けてる?」「襟の模様は日本の花、梅みたいに見える」「背景の黄色は屏風っぽい」など、日本らしきエッセンスについてたくさんの視点や気づきがありました。

ジャポニスムとは、19世紀中頃の万国博覧会をきっかけに、ヨーロッパ特にフランスの美術界で起きたいわば「日本ブーム」です。具体的に影響を与えたのは、浮世絵や琳派、工芸品など。

フランスの印象派の画家たちの多くは、このジャポニスムに影響を受けていました。フランスに滞在していたゴッホ(彼はオランダ出身)もその一人で、浮世絵を模写したり、自分の作品の端々にエッセンスを取り入れるほど熱心でした。


豆知識②眩しいくらいの黄色の秘密「色彩理論」

対話型アート鑑賞イベントでは「背景の黄色が目立つ」「フラットな感じ」「屏風みたい」「(キャッチーな見た目なので)ポストカードにしたら売れそう」など、色、特に、女性の背景の眩しいくらい鮮やかな黄色に、様々な視点や意見が交わされました。

このビビットな見た目の秘密のひとつが、「色相環」です。

色彩理論の中でも「色相環」を取り入れたのが、印象派の特徴のひとつと言われています。

簡単に言うと、理論上反対の位置にある色を隣に並べると、すごく明るく見える、という理論を使ったのが印象派。ゴッホもその一人です。

例えば 黄×青赤×緑など。

この絵でいうと、夫人の服「紺色(青)」と背景の「黄」が反対側の色なので、結果的にとても明るく見えるということです。

セザンヌなど他の印象派の絵画でも使われている手法ですので、興味がある方はこれから印象派の作品を見る際に注目してみてくださいね。

色相環について詳しく知りたい方はWikipediaの説明が分かりやすいのでおすすめです。


まとめ

対話型アート鑑賞で用いた作品、ゴッホの『アルルの女 ジヌー夫人』についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。

これからも対話型アート鑑賞や作品についてnoteで発信していきたいと思います。

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■参考にした書籍

主にこちらの洋書の第4版を参照し、イベント及び記事を書いています。


■美術史のおすすめ書籍

こちらは西洋美術史の「入門編」。既に美術史の知識がある方には少し物足りないかもしれませんが、西洋美術史にまつわる社会構造や時代背景の流れの全体像を知りたい方におすすめです。


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