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汚部屋は人の尊厳を奪う~抜け出して~!~


今日は、子どもの頃苦しかった汚部屋の話を綴ろうと思います。
汚部屋の話は、(色んな意味で)興味がすごくある人と、逆に眉を顰める人、何でそうなるのか(汚部屋状態になってしまうのか)想像もつかない人、自分には関係のない異空間の話だと思う人。人によって、本当に違った立ち位置にいるのではないかと思います。汚部屋の話を聞きたくない、という方はこの先読まないで下さい。ちょっと重い話になってしまいますが、現在汚部屋に苦しんでいる方、汚部屋後遺症(なんて名称ないですが(笑))を引きずっている方が、ちょっとでも共感してくれたらいいなと思います。

高度経済成長期、日本全体が豊かになっていった時代に、私は小学生でした。そして、母が子どもの頃から夢見ていたという山の手の一軒家に、私たち家族は住んでいました。傍から見たら絵に描いたような、そこそこ幸せな中流家庭だったんだろうなと思います(一億総中流時代)。そして、お金持ちではないけれど欲しいものを我慢するということもなく、衣食住に足る生活をさせてもらっていました。

でも、私の小学生時代は、両足に何十キロもの錘をつながれてずるずる引き釣りながら歩くような重苦しさを感じる毎日でした(比喩です)。重苦しさの原因が自分で分かってきたのは大学生の頃だったんですが、当時の私は何がそんなに苦しいのかも分からないでいました。
今は分かりますが、その重苦しさの一つの要因が、汚部屋です。

綺麗に片付いている家で成長した人にはきっと、想像もつかない生活です。想像もつかない汚空間です。食卓の上には書類、調味料、食器、日用雑貨、化粧品、などなどが積みあがり、ノート一冊広げるスペースもない。食事時には、うず高く積みあがっているモノたちを食卓の向こう半分に何とか積み上げてスペースを作り出して食事を並べます。

床には脱ぎ捨てた服、洗濯して取り込んだ服、たんすから引っ張り出した服、カバンなどなど巻き散らかっていて、足の踏み場もない。収納場所を作ろうとして、収納棚を設置したり、天井近くのスペースにも収納を作ってみたり。でも結局、そこにも色んなジャンルのものがその時々に押し込まれていって、何が入っているのかすら分からない状態。探し物は見つからず、見つからないからまた新しいものを買ってきてモノが増える、の無限ループでした。数十年たった今思い出しても、気が滅入ります。

そんな荒れた生活の中でも、年に何度か一部屋だけ綺麗になる日がありました。玄関から入ってすぐにある「応接間」が、ピッカピカの優雅な空間になるんです。何でか分かりますか?それは、家庭訪問で先生をお招きする日だったり、母のお客さんがやってくる日だったからです。その日が決まると、応接間にうず高く積まれている荷物は他の部屋に移動されます。トイレには、お客様用の豪華なタオルがかけられて、玄関には綺麗なスリッパが出現。「応接間」のサイドボードには豪華なティーセットが飾られ、オーダーメイドの重厚なカーテン、外国製のクーラーが入っていたので、それは豪華な空間に様変わりです。一方で、他の空間は普段よりもさらにモノで溢れかえって生活がしにくい状態。

当時の私は、これがおかしなことだとも思わず、お客さんのために家を綺麗にするもんなんだなあ、という認識でした。そして、先生やお客さんから「いいおうちですね」と言われると、素直に信じたものです。ところが、ひと時の「いいおうち」はお客さんが帰られるやいなや、元の汚部屋に逆戻り。

この汚部屋状態で育ったという事実は、ひそかに私を蝕みました。その弊害は色んなところに出ていたと思います。まず、友達を家に呼べません。人に知られたらいけない秘密を抱えているような感覚でした。それに、汚部屋では整理整頓の基本も学べません。「モノを分類する」「ジャンルごとにまとめて収納する」「適切な数のモノを持つ」「モノを元の場所に返す」そして「丁寧にモノを扱う」というような、日常の中でおそらく身に着けていくようなことも、身に着ける機会がありません。恥ずかしい話ですが、シンクを定期的に綺麗にするとか、食卓用布巾と食器用布巾と雑巾を区別するとか、そういったおそらく通常の家庭だと自然に覚えることも知らなかったんですよね(知らないことすら分かってない状態。怖い・・・)。

そして、何といっても一番つらいのは、汚部屋に身を置くということ=「人として大事にされない」空間で過ごすこと、だったんです。私にとっては。(そんなこと平気、別に私は私だから尊厳はけがされない、という人もいると思いますが)

こうして、「何だか常識を身につけられていない私」(でも、何が身についていないのかすらよく分かってない)、「人に自己開示して天真爛漫につきあえない私」、「自分を確固たる尊厳ある存在だと感じられない私」が形作られました。

今日は、暗い話になってしまいました(^^:)すみません。
その後私は大学進学時に1人暮らしを始め、随分長い間試行錯誤しながら常識を身に着け、人と少しずつ付き合えるようになり、自分の尊厳を自分で守れるようになってきました。とはいえ、汚部屋後遺症はたまにひょっこり顔を出して私を困らせるんですけどね。どうやって立ち直っていったかは、またの機会に綴れたらと思います。

今、汚部屋で苦しんでいる方、抜け出したいと思っている方、最近では汚部屋の片付けをしてくれる業者さんもたくさんあります。そういった方たちの力を借りたらいいと思うんです。できるものなら、そこから抜け出して下さい!自分の尊厳を守る権利が、あなたにはあるんです!

おわり





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