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アイドルと猫

私は猫に似ているらしい。恐らく野良猫だと思う。
大概眠いし、食べるのは早いし、よく伸びるし、警戒心が強い。

多分、私はアイドルに向いてない。
アイドルは超人だ。朝から晩まで元気で、いつも可愛くて、誰にでも優しい。
男の家から出てきたら不祥事になるし、トイレではケツから薔薇の匂いのお星様を出すって聞いた。
男女の境なく友達の家で「眠いので寝るねぇ」と言い、アイスを3個食べ、体内で星を生み出せない私はおそらくアイドルに向かない。

なぜ今アイドルをやってるんだろう。
初めは人前で歌ってみたかったし、踊ってみたかったからだ。それだけだった。
歌手や舞台女優のオーディションに受かっても、お金が無いから諦めなきゃならなかったのだ。
じゃあ音楽やるのは諦めましょうね~というタイミングで声がかかった。

我ながら、よく乗っかったと思う。
プロデューサーは真面目で一生懸命な人だし、スタッフさんは優しい。メンバーも頼りになる。
この世界にどうしようもない大人が沢山いるのは知っていた。何人か見た事がある。そういう人は嫌いだ。近寄りたくない。
今の環境は恵まれている。乗っかっていい気がすると思った。野生の勘は信じるものだ。

相変わらずお金も時間もない。
でも最近は愉快だ。チャレンジさせてくれる環境がある。音楽も楽しい。人がいい。

正直自分が全く興味のないことに日々を受け渡して生きていくなんて、考えられない。
10年後、好きじゃない仕事をして「まぁこんなのも悪くないかな」とかいう自分を想像したら反吐が出た。んなわけあるか。
表現しないで生きていく人生ってなんだ。

いつまでこの世界にいるか分からない。やりたいことが多すぎる。
でも、表現はやめないと思う。きっとどこかで表現に関わっている。
そんな時、ねおちでライブをしていた経験が自分の糧になるんだろうなと思う。

自分が良いアイドルかどうかは全くもって分からぬ。
嘘ついて売れるくらいなら、正直にやって売れない方が良いなーとか思っちゃうし。完璧じゃないし、星は出ないし。
でも、良い生き物はやっていると思う。
ちゃんと内臓はグロテスクに動いていて、食べて寝て、好き嫌いがあって、そういう生活の実感から表現をする。

ふわふわ浮いて生きていけるほど世の中優しくない。2本の足に軽くない体重をかけて、立たなきゃいけない。
アイドルって多分偶像だから、そんな姿見せないんだろうけど。
でも私はステージから透けて見える内臓の部分、実感、2本の足で生活を背負っている重みが好きだよ。

友達に「あなたはこれまでボロボロだったけど、絶対に折れなかったよね。そういうタフさが好きだ。」と言われた。
野良猫はボロボロでもなんでも、生きるのを諦めたらそこで死ぬ。だから考えるのも挑戦するのも辞めないだけだったので、なんだか面白くて嬉しかった。

アイドルもファンも人間も、本当は生きるのを諦めたら死ぬ。現代って覚悟決めなくても何となく命を繋げてしまう、そんな時代だから死んだフリできるだけで。覚悟して生きないと死ぬ。

皆がちゃんと良く「生き物」をやって、しんどいけど2本の足に重たい身体を乗っけて生きていけますように。
その人生の中で、ねおちのライブにきて目を閉じてゆらゆらする時間もあったらいいと思う。
ライブハウスは飲まれに来る場所、本質的には森林や海と同じ。全ての生き物は結局自然に帰る。

車なくてもライブハウスは行けるからさ、良いよね。
私も音楽をやる。見知った家から抜け出して、山や海や空に帰るのと同じように音楽をやる。




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