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<文章の書き方>Vol.3 お手紙de“書く”練習編②「つっこんで、内容を深める」

このnoteでは、私自身がライターとして仕事をする中で教わってきたことや気づき、「私はこんなことを大切にしています」ということを書き綴っていきます。
 
「文章を書くことに苦手意識があるけれど、気持ちや思いをじっくりと伝えるために、好きになれたらいいなぁ」「自分が出会った素敵な人や場所、出来事について、文章で誰かと共有できるようになれたらいいなぁ」と思っている方にとって、少しでも何かご参考になれば嬉しいです。
 
1回目の記事で「“書く”コミュニケーションの練習として、1人、誰かのことを思って、そのたった1人に伝えるために書く、お手紙を書いてみませんか?」と提案しました。

日常的にお手紙を書いてみることを通して、伝える力や表現力を磨いていけたらいいのではないかなぁと考え、「お手紙de“書く”練習」と題して、お手紙というツールを使っての文章を書く練習方法についてお話ししています。

練習編①「伝えたいことを書き出し、整理し、型に入れる」に続き、練習編②の今回は「つっこんで、内容を深める」です。

練習編①で書いたお手紙につっこみを入れていく形で進めます。

もし、①で書いたお手紙がありましたら、お手元にご用意していただきながら、取り組んでいただけたら嬉しいです。そのお手紙がなくても、読んでいただける内容になっていますので、安心して読み進めてくださいね。

「まるっとした言葉」をピックアップ

頭や心の中では、あんなことやこんなことといった気持ちや感情、出来事が思い浮かんでいるのに、言葉や文章にした時、それらをぎゅっとまとめて角をそぎ落としたような、「まるっとした言葉=端的な言葉」になっていることはありませんか? 私はよくあります。
 
たとえば、「嬉しかった」「楽しい」「悲しい気持ちになった」「辛い」「大変!」といった言葉です。
 
私が前回書いたお手紙からピックアップすると、

チエさんへ  こんにちは! いかがお過ごしでしょうか? 緑が美しい季節になってきたね。木々や草花の緑を見ていると、本当にいろんな緑色があるんだなぁとびっくり!  チエさん、先日は会えて嬉しかった。おしゃべりする中で、チエさんの「“手仕事、歩く”くらいのペースだからこそ、発見できること、体感できることがある」という話が心に残っているよ。ただ、チエさんは最後に「手仕事の時間は、ただの自己満足の追求でしかないんだけどね」とも言っていたけど、そうではないと思ったから。その、私の気持ちを伝えたくなったから、お手紙を書いたよ。  チエさんに聞いた話を思い出しながら、そういえば「“さんぽ=歩く”ようになってから心が穏やかになれた」という変化に気づいた。手仕事、歩く時間は、ただただ目の前のことに集中する時間なのかもしれないね。瞑想に近いものがあるんじゃないかな。だから、心が穏やかになれたんじゃないかなとも思ったよ。私にとっては発見だった。だから、チエさんは「手仕事をしている時間は、ただの自己満足にしか過ぎないんだけどね」と言っていたけど。確かに、その手仕事は「時間をかけて、自分のための洋服をつくっている」というもので、人によっては「自己満足」と捉えられるかもしれない。でも、その時間がチエさんの世界観を豊かにしているのを感じた。何より、こうして気づきや体感を共有してくれた結果、私自身も共感しイメージできることが増えたから。そのことによって、日常がますます楽しくなったから。  こんなふうに1人に変化をもたらしているんだもの。決して自己満足なんかじゃないと思ったよ。また、チエさんの日々での発見、体感など、共有してもらえたら嬉しいなぁ。  では、今回はこのへんで! またね。  小森利絵より

 ●先日は会えて嬉しかった。
 ●世界観を豊かにしているのを感じた。
 ●日常がますます楽しくなった。
・・・など。

何が嬉しかったのか、どんな豊かさなのか、どう楽しくなったのか。

たとえば、私もよく使いがちな「おもしろい」という言葉。その一言をとっても、「興味深いこと」「好奇心をくすぐられること」「刺激を受けること」など、さまざまな意味に捉えることができますね。

その言葉を読んだ時にどう捉えるかは、人それぞれ。

こちらが伝えたい、共有したい「おもしろい」を伝えるためには、捉え方のズレを減らすことが必要です。そうするためにはどれだけ、“具体的であるかどうか”が大きなポイントになってきます。

「この本はおもしろい!」より、「この本は興味深い」のほうが。「この本は興味深い」より、「この本はお手紙について書かれているから興味深い」のほうが。「この本はお手紙について書かれているから興味深い」より、「この本はお手紙を文章を書くトレーニングとして書かれているから興味深い」のほうが。捉えられることが増えたと思いませんか?

事実や情報など、具体的な内容をプラスしていくほどに、伝わるものが増えていきます。
 
余談ですが・・・私がライターとして仕事をするようになった時、先輩からレジャーやグルメ情報誌の原稿作成について「楽しい、おもしろい、おいしいといった言葉は使わず、ほかの表現でそのことを伝えようね」と教わりました。
 
そもそも、雑誌でセレクトしている時点で、「楽しい、おもしろい、おいしい」は当たり前。150文字以内など限られた文字数の中で、その当たり前のことに文字数を使うのは、たった3~5文字でももったいない。その分、読者のイメージが膨らむ・興味を持てる情報を盛り込むべしということです。

もちろん、「楽しい」という言葉も使います。その前に「“○○○だから”楽しい」と、“どう”楽しいのかという部分を付けるんです。

自分でつっこみ、自分で答えて具体化

一通り書いた後に読み直し、「嬉しかった」「楽しい」「悲しい気持ちになった」「辛い」「大変!」といった「まるっとした言葉」になっている部分をピックアップします。
 
その言葉に対して、
 ●“何が”嬉しかったのか? “どう”嬉しかったのか?
 ●“どう”豊かにしているのか? “どんな”豊かさを感じたのか?
 ●“どう”楽しくなったのか?
・・・など、自分でつっこみを入れて、自分で答えます。その答えを文章に追記していくんです。
 
私のお手紙例で、具体的にお話ししていきますね。
 

(1)先日は会えて嬉しかった。
 ―

つっこみ:
 “何が”嬉しかったのか? “どう”嬉しかったのか?
 
答え:
 ●この数年、1年に1回ペースで会っている。
 ●1年ぶりの再会。
 ●今年も無事に会えた。
 ●“嬉しかった”よりは“ほっとした”のほうが近いかも。
 ●近況を聞けて知れてよかった。
 ・・・など。
 
文章に追記:
 1年ぶりの再会。
 今年も無事に会えて、ほっとした!
 

(2)世界観を豊かにしているのを感じた。
 ―

つっこみ:
 “どう”豊かにしているのか? “どんな”豊かさを感じたのか?
 
答え:
 ●「これが好き」「これを大切にしたい」というものがある。
 ●日常の中で、没頭できる時間を持っている。
 ●手仕事をきっかけに、初めての場所へ出かけ、人と出会っている。
 ●手仕事をする中での、気づきや学びがある。
 ●自分の気づきや学びを他者にも共有できている。
 ・・・など。
 
文章に追記:
 「これが好き、大切にしたい」という軸を強固なものとし、
 さらには初めての場所に出かけたり、
 初めましての人と出会ったりと、
 チエさんの世界観を深めているんだと感じたよ。
 

(3)日常がますます楽しくなったから。
 ―

つっこみ:
 “どう”楽しくなったのか?
 
答え:
 ●目の前のことに集中することで見えてくる、世界観。
 ●集中=無に近づくことで、気づけることがある。
 ●自分の「これが好き、大切にしたい」を謙遜せず、突き詰めたい。
 ●自分の気づきや学びを他者に共有できるようになりたい。
 ●1人の気づきや学びが、誰かを元気にすることもある。
 ・・・など。
 
文章に追記:
 自分の日常の“コツコツ”とした積み重ねが、
 誰かと、どこかと、いずれは交わる希望も感じて、
 わくわくしてきたよ。
 
以上を文章に追記すると、こうなります。

チエさんへ  こんにちは! いかがお過ごしでしょうか? 緑が美しい季節になってきたね。木々や草花の緑を見ていると、本当にいろんな緑色があるんだなぁとびっくり!  先日は1年ぶりの再会。今年も無事に会えて、ほっとした! おしゃべりする中で、チエさんの「“手仕事、歩く”くらいのペースだからこそ、発見できること、体感できることがある」という話が心に残っているよ。ただ、チエさんは最後に「手仕事の時間は、ただの自己満足の追求でしかないんだけどね」とも言っていたけど、そうではないと思ったから。その、私の気持ちを伝えたくなったから、お手紙を書いたよ。  チエさんに聞いた話を思い出しながら、そういえば「“さんぽ=歩く”ようになってから心が穏やかになれた」という変化に気づいた。手仕事、歩く時間は、ただただ目の前のことに集中する時間なのかもしれないね。瞑想に近いものがあるんじゃないかな。だから、心が穏やかになれたんじゃないかなとも思ったよ。私にとっては発見だった。だから、チエさんは「手仕事をしている時間は、ただの自己満足にしか過ぎないんだけどね」と言っていたけど。確かに、その手仕事は「時間をかけて、自分のための洋服をつくっている」というもので、人によっては「自己満足」と捉えられるかもしれない。でも、そのことによって「これが好き、大切にしたい」という軸を強固なものとし、さらには初めての場所に出かけたり、初めましての人と出会ったりと、チエさんの世界観を深めているんだと感じたよ。何より、こうして気づきや体感を共有してくれた結果、私自身も共感しイメージできることが増えたから。そのことによって、自分の日常の“コツコツ”とした積み重ねが、誰かと、どこかと、いずれは交わる希望も感じて、わくわくしてきたよ。  こんなふうに1人に変化をもたらしているんだもの。決して自己満足なんかじゃないと思ったよ。また、チエさんの日々での発見、体感など、共有してもらえたら嬉しいなぁ。  では、今回はこのへんで! またね。  小森利絵より

文章を書くために言葉にしようとすると、また「まるっとした言葉」になってしまうかもしれません。そこで、いきなり文章としてまとめようとはせず、私が「答え:」の部分で書いたように、短い文章や単語レベルの言葉で書き出してみることをおすすめします。

具体化により、共有できることが増える

「つっこんで、内容を深める」とは、こちらが伝えたいこと・共有したいことを、読んだ相手が捉えやすいように、具体的にしていくということです。

そのために・・・
 (1)文章を書き上げた後に、
   「まるっとした言葉」になっているところをピックアップ。
 (2)「(1)」の部分につっこみを入れて深く掘り下げ、
   ほかの表現を探る。

 ということをしてみてください。

そうするうち、文章を書きながら「そこ、もっと、具体的に書けるんじゃないの?」というつっこみが自然と入るようになり、「まるっとした言葉」を使う割合も減っていくと、私自身の経験から感じています。

また、つっこむことにより、何気なく使っている言葉に対して、どんな思いや意味から選んだのかを深く考える機会になります。辞書で意味を調べるようにもなり、「自分が思っていた言葉と違う」と発見することも多々出てくるんです。だから、語彙力もつくんじゃないかなぁと思っています。

とはいえ、あれもこれもと深掘りして追記してしまうと、「ここで伝えたいこと」から脱線してわかりにくくなる恐れがあるので、伝えたい軸から外れないように気をつけてくださいね。

と、自分自身にも言い聞かせるように書いておきます(結局、「あれもこれも」と欲張った原稿になって、「結局、何が言いたかったん?」という原稿に今でもなっちゃうんですよね)。

最後におまけです!

お手紙では、「この1つのことを伝えるんだ!」と肩肘を張らなくても、自由に書いていいと思っています。その場合、「とにかく具体化する!」という意識で、具体化の練習として取り組むのもおすすめです。

過去に、「とことん、内容を具体化!」をテーマに、「余白に付け足す はみだしお手紙」という方法について、記事で書きました。

ご興味がありましたら、こちらもぜひ!


 
次回は、お手紙de“書く”練習編③「季節の挨拶文を書く~ことばdeスケッチ~」についてお話しする予定です。



「これでいいのかな」「大丈夫かな?」と不安いっぱいで、ドキドキしながら、書き綴っています。だから、リアクションやサポートをしていただけると、とても嬉しく! 舞い上がります。励みになります。