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一年前は そば打ちセットだった。

ここにギターがある。
今日はGW明けの月曜日だ。財布に入っていたお札はない。連休明けの仕事終わり。
机の横にギターがある。
連休何処かに行ったっけ。楽器屋には行った。
 アコースティックのギターがある。
一緒に買った初心者向けの楽譜は見つからない。部屋はそんなに汚いわけではない。
木の色を生かしたギターだ。
パソコンの画面に映る課金装備に包まれた分身。ギルドの前に立ち尽くすアバター。
ピックガードはもちろん黒だ。
連休前通勤最終日、少し前に話題になったバンドアニメを一気見したんだ。いつもは買わないビールを飲みながら。
 エレキが欲しかった。
カード限度額通知の原因のネトゲの課金装備。今思うとあんま強くないし、そんなかっこよくない。
 わーピックって色々あるんだなと買いすぎたはずなのになぜか三つしか見つからない。
カードは使えない。でもギターが弾きたくなった。財布に入ってた万札二枚。
 一度しか起動した記憶のないメトロノームのアプリ。
連休初日、楽器屋に行った。
ギターについた値札のゼロの数に圧倒され、クラついた視線の先にあった予算に収まる桁数。最初の数字は一だ。運命的な出会いをした。
 アコギのヘッドについたままのチューナー。
帰宅するやいなやジャランと弾いた。そのまま日が落ちて壁を殴られるまで夢中で練習した。

連休二日目。なんとなく電車に乗った。一駅で降りて歩いて帰った。そのあとは、気が付いたら夜になったいた。

 ギターの弦はまだまだ綺麗だ。
連休中、先月始めたネトゲをやっていた。外は明るかった。明るくなったのか。

手には発泡酒が握られている。しかもロング缶。今日は月曜日、だった。もう火曜になった。
 
ギターは鳴らない。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」



頭を抱える。
「ふぅ」
もう過ぎたことだ。落ち着く。
ギターを手に取る。
D A D 
チャン チャン チャン
 
このクソみたいな計画性のない散財。
 
ゲーム以外の休日を探していたはずだ。一日しかもたないのか。
まだやれる。
 
 そうだ。 ギターを弾こう。思ってなくても思い込め。
 
エレキじゃないとロックじゃないとかいう頭にこべりついたスライムのような声を焼却処分しろ。もうお金はない。酒を買う以外の金はない。
 
よし。まぁでもとりあえずこの偽ビールを飲み終わるまではゲームをしよう。
 
明日からは計画的に。俺はやればできる子。
 
 



 
               返事がない。ただの木と鉄の屍のようだ。
 
 
 
 
 
「ロックを免罪符にしたいなら、ギターをかき鳴らせ。できなきゃてめぇは一生妄想オナニー豚野郎だ」
 
そう頭の中でひげ面のジジイが言った。 そういうことにしておく。

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