内野すみれとルークスの関わり
ルークスに関わるまで
わたしは、最寄りのコンビニまで車で10分かかるような鹿児島の片田舎に、3人兄姉の末っ子として生まれました。今思うと、わりと「厳しい」側の家だったと思います。門限は18時(1分でも過ぎれば家の鍵をかけられしばらく閉め出される)、ゲームの所持は禁止、お小遣いはなし、携帯の所持は大学生になってから。現代の東京の高校生からするとちょっと理解し難いかもしれませんね。
そういうわけで娯楽に制限のあった幼少期は、かなりクリエイティブな遊びをよくしていました。紙芝居を作ったり、お店やさんごっこをしたり、それから計算機で遊んだりもしていました。2の累乗をひたすら眺める狂気の遊びです。おかげさまで、2の累乗は今でも50000くらいまで猛スピードで言えます。
厳しい家だったからかはわかりませんが、年の離れた兄と姉は見事にグレました。小学生のころから「兄姉に口裏を合わせる」という技を習得したので、かなり小賢しい子どもとして育ちました。一方で、兄や姉のことが本当に好きでした。彼らに対しては今でも、逆立ちしても敵わない人間的な魅力があると思っています。ですが、グレていた兄と姉は日常的に周囲の大人から叱られ、お勉強の成績は良かったわたしは褒められていました。「勉強なんてやったからできるだけ、兄姉の魅力はそんなものではないのに」という思いが、幼ながらにありました。「学力ではない部分の学生の有り余る魅力を愛せる」という今の態度は、ここからつながっているのではないかと思っています。
話は飛んで大学時代、わたしは教育の世界にどっぷり浸かることになります。塾講のアルバイトで中高生に関わる楽しさを知り、そこから学生団体や社団法人で、高校生向けの合宿やワークショップを運営していました。たとえば高校に出向いてキャリアを考える授業を行ったとき、わたしが(我ながら)最も輝いていたのは、登壇して話したりするような場面より、むしろ後ろの方でぐだぐだおしゃべりをしている高校生に「ちょっかいを出す」場面でした。「何話してんの、混ぜてよ」なんて言って雑談を交わし、それがひと段落したところで「進路とか考えてる?」と話を振ると、案外しっかり考えていたりして。そんな時間が本当に楽しかった。ルークスの教員としての仕事の大部分は「学生にちょっかいを出すこと」と言っても過言ではないので、そういう意味では天職なのだろうと思います。
ルークスに関わったきっかけ
ルークスに関わることになったきっかけは、取締役であり高等学院講師でもある谷口とのつながりです。社内の人や新入生にはしばしば驚かれますが、谷口とは高校の同級生でした。「仲良かったの?」などとよく聞かれますが、正直に申し上げると、友達ではありましたがどちらかと言うとわたしが一方的にファンでした。谷口の記事を読まれた方は、谷口が高校について「最悪だった」と一蹴していることをご存知かと思いますが、彼は高校時代から、なんと言いますか、革新的なタイプで、高校の教育のあり方を疑問視する態度でした。当時はいわゆる「いい子」だったわたしは、そういう彼のアウトロー感が勝手に好きでした。
谷口とは大学に入ってから、わたしが活動していた学生団体絡みのイベントでばったり再会を果たします。漫画であれば恋が生まれそうな展開ですが、そういう気配は10数年の付き合いになった今まで一瞬もありませんでした。「並行した世界線の戦友」くらいの立ち位置だと、これも勝手に思っていました。
しかし、世界線はまた交わることになります。大学を卒業してからはしばらく教育から離れていたのですが、「いつかは教育に戻りたい」とは思っていて、27歳を前にした年、そろそろその時期がきたのかもしれないと思い転職活動をしていました。そんな折に、谷口から「高校の教員をやらないか?」と声をかけられ、Loohcs社に入社する運びとなりました。「そんなに大変な仕事じゃないよ」などと言われたのに、入ってみると慣れるまでかなり大変だったので、「詐欺じゃん」という気持ちもなくはないのですが、本当に毎日(いろいろな意味で)充実しながら働けているので、誘ってもらったことには感謝しています。
ルークスで何をしているか
ルークスでは、高等学院の教員として働いています。「高校教師」と言うと、黒板に向かって話しているような教師を想像する方もいらっしゃるかもしれませんが、黒板(ルークスではホワイトボードですが)に向き合う時間はほとんどないとさえ言えます。先にも述べましたが、一番の仕事は「学生にちょっかいを出すこと」です。調子はどう?なんてざっくりしたやりとりから、最近ハマっていることや気になっていることについて話したり、時には学生の個人的な悩みをこっそり聞いたりしながら、その合間に勉強を教えているような、そんなイメージです。
はっきり申し上げてしまうと、こういう時間はわたしの中であまり「働いている」という感覚はありません。学生と一緒に学んだり、場合によっては逆に学生に教わったりすることさえあるので、「ちょっと年上のお姉さん」くらいの距離感で、時には共に学ぶ仲間として、時には少し教員らしく道を示したりする、そういう時間を楽しく過ごさせてもらっています。
そんなわけで、良くも悪くも休日は「仕事」と「プライベート」の合間のような時間を過ごしがちです。教科についてよりよく教えられるように勉強したり、次の授業をよりおもしろくするために資料を漁ったり。授業を作るのはけっこう大変ではあるのですが、自分でも新しい発見があったりして、たいてい一人で楽しくなってしまいます。
もちろん、曲がりなりにも(?)ちゃんと働いてもいます。教務部長という肩書きをいただいているので、学校全体に関わる業務も担っています。教員の研修資料の作成や、学生の評価基準の策定、webの記事のライティングや特別講師との打ち合わせ、イベントの企画と運営……などと具体的な内容を並べてみると、「なんでも屋さん」な感じになってしまいますね。会社としては中間管理職的な立場にいるということもありますが、わたしの仕事上のモットーとして「優秀な上司を暇にしたい」という強い思いがあるので、自分にできる仕事は可能な限り取り組んでいる、つもりです。
ルークスを通じて何をしていきたいか
大前提として、「コモンズを豊かにする」というルークスの目指す先については心の底から共感しています。高校では「いい子」であったと先に述べましたが、高校生までずっと田舎の閉鎖的な学校で「いい子」をやっていたわたしにとっては、学校がコミュニティのすべてでした。「成績がすべて」「部活の顧問の言うことは絶対」「難関大学合格こそが成功」、そんな価値観に従順に従ってきました。それはあまりに狭い世界でしたし、何より楽しくない。学びはもっと楽しいものであるし、その中で多様な人やもの・ことに出会えるのは、もっともっと楽しい。だから、高校生にはもっと広く自由で、豊かな世界で学ばせてあげたいと強く思います。
また、有機的につながる学びのコミュニティをつくるという観点では、教員教育や家庭教育についても強く関心があります。
というのも、わたしが個人的に教育で目指したいこととして、「『ラッキー』を減らしたい」という思いがあるからです。今の教育の世界、もっと言ってしまえば人生の方向性を決めるような要素には、あまりにも『ラッキー』が多すぎます。いい先生に出会えたからラッキー、理解ある親の下に生まれたからラッキー、学び合えるよき友人に出会えたからラッキー、いい職場に出会えたからラッキー。わたしは、大学時代に学びをこよなく愛する素晴らしい友人たちに出会えたことで人生が変わりましたが、それは本当にただの『ラッキー』でした。いい先生にもたくさん出会えましたし、親もわたしの進路を応援してくれました。けれどわたしは、「わたしはラッキーだった」などと思いたくないのです。わたしがたまたま得られたものを、あまねく多くの人々が得られるものにしていきたい。
だから、今は「あまねく」よき教育の場を提供できるよう、コミュニティを含めたシステム作りや、教材作りなどに興味を持っています。「誰々先生が素晴らしかったから」「親がいい教育をしてくれたから」「素敵な友人に出会えたから」、それを人為的に引き起こしたい。ルークスが大きくなって、いろいろな場でルークスの教育が提供されるようになったとき、どんな場所でも同じように高いクオリティの教育を提供したい。
そのためには、現場で「感覚的に行われているよい実践」を言語化し、それを起こせるように仕組み化していく必要があります。さらに、そもそもまずわたしが「よい実践」を重ねていかなければなりませんし、それについて考え、反省し、学び続けていく必要があります。教員教育や親の教育にまで手を広げていくには、まだまだ時間がかかりそうではありますが、教育に関しては人生を賭けていいと思っているので、しばらくはルークスに骨を埋める気で尽力していくつもりです。
教育の話はもちろんですが、人の人生の話を聞くのが大好きな人間です。わたしもそこらへんの人間には負けないくらいの人生話はいくつか持ち合わせているので、おしゃべりしたいという稀有な方はsumire.uchino@loohcs.co.jpまでお気軽にご連絡ください。社内の人は、ガラの悪い柄シャツか、結婚式の二次会のようなワンピースを着た女性を目印に話しかけてください。
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