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【随想】小説『老人と海』ヘミングウェイ
老人と海/ヘミングウェイ
ずいぶん昔から持っていたが、読み進められなかった小説。
表題からはまったく内容が想像つかない。
ハートフル系なのか、日常まったり系なのか。
名作ということだからいづれは、と思いつつ10年以上放置されていた。
読んでみて、結果、
ただひたすら老人が魚(巨大なカジキマグロ)と格闘する小説であった。
まさか
150ページそこらを使って、
たった1匹の魚を釣り上げるために、
延々と描写が続くとは思ってもみなかった。
あまりに詳細に老人の悪戦苦闘が描かれるので、
だんだん読んでる自分も、老人と同じように苦しくなってくる。
150ページそこらで言えば、『火花』も『コンビニ人間』も似たような長さであるが、
小説といえば、登場人物たちの感情やエピソードが積み重ねられ、様々な人間模様が描かれるとばかり思い込んでいた。
この小説はそうではない。
老人ただ1人の4日間に密着するドキュメンタリー。
そこにあるのは、徹底したリアリズムだ。
いったいこの描写にどんな意味があるのか。
作者が込めたメッセージはいったい何なのか。
この鬼気迫る文章はなかなか書けないことは確かだ。
だが、これが名作と言われる所以は何なのだろう。
福田恆存さんの解説(『老人と海』の背景)を読んで、色々と腑に落ちた。
この小説はそう読むのか、と(少々乱暴な論にも思えるが)。
いわれてみればラスト、巨大な白い背骨が港でゆらゆらと揺れている描写には、
映画『グラン・トリノ』を見た時のような、カタルシスを感じた。
この小説の読み方は、読者にすべて委ねられているのだろう。
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