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【随想】小説『名も無き世界のエンドロール』行成 薫

『名も無き世界のエンドロール』を読み終わった。
書評にあるように「企み」という言葉が相応しい小説。
登場人物も企むのだが、作者をもまた、読者に向かって企んでいる。
拠り所のない名もなき登場人物たちの、何気ない日常が活写される。
記憶を断片的に思い起こすように、時間軸はまっすぐ進まない。
それはまるで、ビデオカメラで撮影されたホームビデオを、ランダムにテープチェンジしながら眺みるようだ。
主人公の一人マコトは、人を驚かせることで、自分自身の存在を証明をしてきた。
作者もまた、読者を驚かせることで、名も無き登場人物たちの存在を証明しようと企む。
読み終わったとき、目の前にエンドロールが流れたら、見事作者の企みが成功したと言えるだろう。


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