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【随想】映画『ゴジラ-1.0』山崎 貴

『ゴジラ-1.0』は、山崎貴監督のフィルモグラフィーの集大成であった。
『シン・ゴジラ』、『キング・オブ・モンスターズ』と、最近のゴジラには裏切られてきたのに、なぜか見てしまうゴジラの吸引力は、やはり子供の頃に映画館で見た平成ゴジラの原体験によるものか。

感受性のない大人になってしまっただろうか。ドラマパートの演技がしらじらしく、どうも感情移入できない。台詞もずっと上滑りしている。CGのクオリティは申し分ないのだが、人間がたちが、ほんと記号のような演技、作り物の人形に見える。山崎貴監督は、ずっとCGというミニチュア(箱庭)で人形遊びをしてるのではないか。

正直ゴジラだけをずっと見ていたかった。カメラワークもCGクリエイターらしいカットもたくさんありよかった。ジュラシックパークのオマージュもあった。美術セットには、お金をかけてるなと思った。いや、あれもCGなのかな。橘を探しにいった場所の建物とかはリアルだった。船、飛行機、建物などは、リアルだった。なぜか人だけがリアルじゃなかった。浜辺美波は、安いコスプレをしているように見えた。山崎貴監督は、やっぱり人間以外に興味があって、だからこそCGなんだと思った。

ストーリーも、バレバレの伏線を置いていってしまうのはいかがなものか。驚きは半減してしまう。そして、肝心要の作戦については、途中で失敗した後、もう一回引き上げようとするのは、どこに勝算があったのだろうか。逃げた方が良かったんじゃないかと思った。飛行機のシーンは、やはり『トップガン マーヴェリック』や、ノーランの『ダンケルク』と比較してしまった。編集や音効も、いまいちだった。とりあえず鳴っている扇情的な音楽。テンポの良くないぶつ切りのシーン展開。黒フェードの乱用。会話のシーンのカットバックにも違和感があった。構図も緩いところが多々。

ハリウッド映画の20分の1の予算だって…。それは確かにすごい。この映画を子供の時に見たらもっと感銘を受けていただろうか。『ジュブナイル』を見て感銘を受けた子供の頃の自分は、どこにいってしまったのだろう。

勿論、山崎貴監督が、一CGクリエイターでいながら、監督・脚本をしていることは物凄いことだ。それは唯一無二である。だが、天が二物を与えないのであれば、ヒューマンドラマを廃した純粋なスペクタクル、もしくはパニックSFを撮ってほしいなとは勝手ながら思う。


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