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【随想】映画『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介

ドライブ・マイ・カーを見た
映画はまだ終わっていなかった
映画の力がここに証明された
3時間でしか表せない表現
TikTokでは辿り着けない表現
生配信では辿り着けない表現
凄いの一言に尽きる
とにかく要素が凝縮されてる
メタファーだらけだ
8重構造くらいで深淵に引き込まれ
メビウスみたいに円環してくる
まるでエッシャー
まるでボルヘス
脚本家が語るということ
俳優が演じるということ
ドライバーが運転するということ
北は北海道から
南は広島、瀬戸内海
国籍も言葉も生い立ちもバラバラ
多言語演劇
ラスト
秀逸なサイレンスに至るまで
徐々に解きほぐされていく
丁寧な心理描写
それまで積み上げた言葉、
長い長い車の走行音はその瞬間のためにあるような
「沈黙は金」
張り巡らされたテキストは
互いに伏線となり呼応する
「車の中で待ってていいよ」
「タバコを吸う時は外で」
後部座席で顔を真横に向けて真正面からの画角
まるで視聴者に訴えかけてくるような
長回しと独白の緊張感
ヤマガの物語
ヤツメウナギ
監視カメラ
あれは誰の物語か
空き巣はいったい誰なのか
俳優同士で「起きた何か」を観客へと開いていく
村上春樹とデビッドリンチがリンクする
映画『悪人』の岡田将生を想起させる
「俺は空っぽなんだ」
四宮秀俊のカメラは完璧である
カメラの位置で登場人物の感情、関係性、状況をすべて表す
限られた狭い車内を縦横無尽に動き回り
まったく使いまわしの画角がない
『複製された男』のような車窓からの眺め
車の視点の岡田将生
ここぞという時にしか使われないドリーインドリーアウト
北海道でのシーンのみ
なぜかフレームに2人がおさまらない
不安定な構図
もちろん照明も音効も小道具美術も非常にコントロールされている
石橋英子の劇伴もまたとない
ピアノによる12音律の綺麗な調性の中に
無調の不協和音を滲ませる
家福の潔癖な運転と執拗な車への愛情
レコード盤で聞いていたクラシック音楽は針飛びしてしまう
カセットテープによる
生きている者と死んでいる者の交信
家福音という名前
音への愛情
神との対話
ゴド―を待ちながら
舞台と現実
演技と真実
カタコトの日本語と母国語のセリフ
テキストを感情を込めずただ読むこと
「機械じゃないんだ私たちは」
「チェーホフのテキストは自分を引き出しすぎる」
みさきのお母さんのもう一つの精神
演技してでも今を生きなければならない
それは嘘ではなかった
「すべて受け入れてあげられないのか」
失われた者の話
生きていく者の話
ワーニャ伯父さんのセリフが繰り返される
「でも、仕方がないわ、生きていかなければ!」


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