墨子クイズ➀「戦国時代に愛など無力だ!」⇒墨子はどう返した?

墨家とは、今から訳2400年前の戦国時代の中国で生まれた思想集団であり、いわゆる諸子百家の一つである。

この集団、私の中では歴史上のどの集団よりもかっこいい!

墨家の特徴は、他の諸子百家のように自分たちの思想を普及するだけではなく、戦闘(籠城戦)のプロフェッショナル集団であったこと。

とにかく強い!賢くて、技術があって、頭がよくて、めっちゃ強い!

それでいてその唱える思想は、

兼愛(愛しあおう!)

非攻(侵略戦争をするな!)など超平和主義!

彼らは500年にわたる(!)戦国時代の真っ只中で、この理想論とも思えるような思想を説き、防衛戦において無敗であり続けることによってその正しさを証明したのである。

少年漫画のヒーローのような集団で、学べば学ぶほど鼻血が出そうになる。

彼らは常に弱い者の味方で、要請があればどんな城にも赴き、その城を見事に守りきった。

伝承によると墨家は最後、ある城を守れなかった責任を取って400名が集団自決。その後、清の時代に再評価されるまで千年以上の長きにわたって中国思想史の中から姿を消すこととなる。

散り際が潔すぎる。そして壮絶すぎる!

そんな戦国時代の徒花である墨家は、墨子という謎多き人物によって創設されるわけだが、彼の生涯に関してはかっこいい(そしてクスッと笑える)逸話があるので是非暇なときにでも調べていただきたい。

それはそうと今回書くのは森三樹三郎先生の『墨子』(ちくま学芸文庫)。

古典訳本のお手本と言いたくなるくらい、とてつもなくわかりやすく『墨子』を現代語に訳してくださっている。

『墨子』は墨子の思想を後継者たちがまとめた書だが、文章構成が論理的で非常に読みやすい。

大体の章が以下のような構成で書かれている。

①墨子は○○と言ったよ。

②それに対してある人は、○○と反論したよ。

③墨子はそれに対して○○と返したよ(ドヤッ)。

墨子の思想は常に戦争を否定し、博愛を説くものなので(くどいようだが500年間の戦国時代中にです)、作中の問答は常に【理想論(墨子) VS 現実論(論客)】のような構図になるのだが、最後には痛快に墨子が論破してくれる。

そして墨子の主張はどれも「確かに~!」と納得させられてしまうほど論理的で説得力があるのだ。何より実際に、防衛戦に関しては無敗であったあの墨子が言うのだからとてつもなく言葉に重みがあるのだ。

さて、そのいくつかをクイズ形式でご紹介。

墨子クイズ第一問目!

(ジャジャン!)

戦国時代の真っただ中、墨子はいつも通り、「戦って領土を拡張することよりも愛し合うことの方がよっぽど利益を生む。だから愛し合おうよ!(兼愛)」とみんなに言って回っていました。

すると天下の有識者たちは言いました。「はいはいw愛は大切だと思うけど、現実的に考えてこの戦国時代そんなものはくその役にも立たないよ。そんなものは実現不可能なことだね。」と言いました。

これに対する墨子の「ほ~」とうなってしまうくらい説得力たっぷりな返答は何でしょう。

Thinking time!



【正解】

「天下の士がそのように言うのは、彼らが兼愛のもたらす利益と兼愛の内容とを知らないからだ。城を攻め、野に戦い、身を殺して名を立てるといったことは、それこそみんなが等しく難事(実現困難)としていることであろう。でも君主がこれを望めば、その下にある人々はこの難事を成し遂げようとするではないか。

これに比べれば、お互い愛し合ってお互いに利益を生み合おうとすることは、全然簡単なことではないか。他人を害するから、他人もお前を害するのだ。逆に他人を利するものは、他人も当然お返しとして利益を返してくれるものなのだ。なぁーーーにが実現不可能なことがあろう。それが困難に見えるのは、上にあるものがこのことを政治の方針とせず、お前ら有識者がそれを実行しようとしないからだろう!」


おぉぉぉーーーーーーー!

墨子先生ぇぇぇ!熱いっす!!

ということで文章が長くなってきたので、墨子クイズ第二問目はまた次回。

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