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2021年9月の記事一覧

盲目と剣

盲目と剣

すべての少年の片手には
剣があった
少年たちは剣の意志をくみとり
あるときにはとんでもない喧嘩を
許されざる盗みを
または義侠を
あるがまま行った
剣もまた少年に
無謀さに似た
ものをあたえた
考えなくとも
すむようにと

愛をやがて
少年が欲するとき
剣は地表へ深く刺さり
その柄と鍔には
永遠ともつかぬ亀裂が走るだろう
少年は少年の肉体を捨て
ガードレールの下を抜け
住宅街の宙天をはしり
木々を

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あの一点へ

捜すという行為は 見えなくなった
ものを、ある というように
解釈する行為である
遠く踏みしめた海のうへの
不確かな感触で追憶のなかにあるその
一点を
私は捜しながら

みずからのかたくなさが
投げさせたもの
棄てさせたものの
ひとすじ澄んだ重さ
過去からせまって来る
あきらめに似た悔悟

吐き出したいものを
飲みこんで
仕方なく積みあがる日々の谺
抱きしめたいものを
突きはなして
やるかたなく滲

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皎

睡眠薬をがりりと齧った それは

絞め殺されたわたしの

骨だった

そんなことがあってもいい 午前の三時

夜盗にまぎれてわたしはひとつの流れになり

なにものか盗もうと夜の大気をまさぐる

けれども月の監視のなかで

往来は焼けただれ

人人は夢にわらう

がりりと音をたてて

臼歯に弾ける飴玉に ひかる暗闇の雫

がりりと音をたてて

沈みゆく背中に 予感するひとつの雨

睡眠薬をがりりと齧

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